なおんちの食卓・料理編 -2-

目次  4 クーイユシンジ   5 ムーチー



4 クーイユシンジ
 冬・・・今頃の時期から、私にとっては逃げ出したくなる時があります(^^;)  寒くなるので風邪がはやったりするのですが、その滋養強壮というか、風邪の時の熱冷ましとして、これを飲まされるのです。
 クーイユ=鯉、シンジ=煎じたもの、と訳せるでしょうか。私が本で見たものには、鯉の他にも鮒やイラブー(エラブウミヘビ)を煎じるのもあります。おばーによるとアヒル、猫・・・などもっとあるそうです。

 なおんちでは、親戚のおじーが鯉を釣ってきた時に作られます。今はそのおじーも歳をとって、前ほどは釣りにはいかないようですけど・・・。だいたい30cm前後の大きさの黒い鯉が生きたままやってきて、半日ほど井戸水の入ったたらいの中で泳がされます。これは泥を吐かせるということだと思います。鯉が元気のない時は、シママース(天日塩)をなめさせます。

 まず、鍋に鯉を取り、じゃばじゃばと水洗いします。うろこははぎません。そして鯉に飲ませるように、鍋を傾けたら鯉の口が浸かるくらいの泡盛を入れます。鯉は暴れたりしますから、しっかり蓋をします。しばらくすると酔っぱらったのか、鯉は静かになります。すると、鯉がすっかり浸かるくらい水を入れ、鯉をおおう程のンジャナ(にが菜)を入れ、途中火を弱めながら30分あまり煮ます。そして、煮汁が半分ほどに減ったらできあがりです。また、2・3日はこれに水を足しては煮て飲むことができます(煮汁はこす)。

 子供の頃から、生きたままの鯉から作られるこのシンジを見ていますが、なかなか気持ち的に慣れません。また、味にも匂いにもなれません(笑) これを作っている時は家中に匂いが漂うので、部屋のドアを閉めたりします(^^;) 味、匂いとも私が知っている食べ物の中で最悪だと思っています! が、鯉さんのためにも飲むのよ〜!と覚悟を決め、鼻をつまんで一気に飲みほし、その後すぐ水を飲みに台所へダッシュします。背後で「それじゃあ、意味ないよ〜」という声を聞きながら。

 今年はまだ飲んでいませんが、人間って業が深いなあということと、鯉さんに感謝しつつ、これを飲んだ後に水を飲むことはしばらく続きそうです(^^;)


だって、黒かったん
だもん(^^;)   
[なおんちのコツ]
 うちの材料は泡盛、水、ンジャナ(にが菜)だけですが
 本などのレシピには、それプラス、かつおぶし、塩を加える
 ようです。そうすると飲みやすいのかも!?
 あとは、鯉に酒を飲ます時、暴れさせないことがこつかな。
 生きていなくてもいいと思いますが、水につけて泥臭さを
 ぬくようです。



5 ムーチー
 旧の12月8日(所によっては旧の7日。大謝名(おおじゃな)あたりにいた何とかというヤナムンが手を入れて腐らせるため1日早くするというらしい)に、沖縄ではムーチー(鬼餅)を作るという習慣があります。ムーチーとは、サンニン(月桃)にお餅を包んで蒸した物です。カーサムーチーとも言います。それを食べて厄除けをするとされ、昔は家族の人数分作ってチカラムーチーとも言っていたとか。特に、初めてムーチーを迎える赤ちゃんがいる所では、初ムーチーといって、親戚・近所などに配って歩きます。

 用意するのは、もち粉と水と、サンニンの葉です。どれもムーチーの頃にはお店で手に入ります。うちでは、上等なサンニンを庭から切り出して洗っておきます。自給自足で良いけど、この頃は「ムーチービーサ」と言って、寒くなることが多いので、水仕事はいや〜んです(^^;)

 作り方は至って簡単。まず、餅の部分ですが、もち粉に水を入れて餅をこねます。水の分量はもち粉に書かれていたりするのでOKだと思います。最近は「ムーチーミックス」(黒糖入り)なんていう便利な物も出ているので、それを使用するのもいいです。あと、最近の流行は、紅いも餅のようで、こちらも「紅いも粉入りもち粉」なんてのがあります。トーチナン粉というのをもち粉に混ぜて作るのもあるようです。おばーによると、その場合は、トーチナン粉を前の晩からふやかして置いたほうがいいようです。どういう風に作ったか詳しいことは不明ですが、前におばーがそのまま混ぜて作ったら、お餅がかたかったそうな。ちなみに、なおんちで作ってるのは、砂糖なし白餅、砂糖入り白餅、砂糖入り赤餅(食紅で色付け)の3タイプです。
 こねた餅を饅頭くらいの大きさをちょっと細長めの棒状にして、先と尻を切ったサンニンの葉の真ん中程にそれを置き、まずサイドの葉を内側に曲げ、その後餅を潰しながら上下の葉を折り曲げます。そして、ヒモでくくって、それを30分程蒸して、できあがりです。

 うちでは毎年、ムーチーを家で作っているのですが、今年はおじーが去年亡くなったのと、おばーも風邪をひいてへろへろーしてたので、お店から買ってすまそうとしていました。でも、おばーは、ムーチーを煮た(蒸した)汁を、「ユニノヒサ ユーゲーシヨー(鬼の足をやけどさせるようにの意)」と言いながら毎年屋敷中にまいているのでちょっとだけど作りたいと言いだし、結局今年も作ってその汁をまきました。私はいつも作って食べる係だったので(笑)、おじーがこんな事をしているとは思いませんでした。これは、ムーチー由来の民話からきているようです。民話はメルマガOkiMagの民話コーナーで読めます。しかし、この民話は最後が強烈なんだよな〜(^^;)

 また、昔は作ったムーチーを軒先に吊し、日に一つずつ食べていったそうです。だから、つまみ食いをするとすぐばれてしまったそうですけど(笑)


ムーチー
[なおんちのコツ]
 と言うほどのものでもないけど(^^;)
 サンニンの色が変わるくらいだと中の餅も煮えているとかで
 煮具合の目安にしている様です。