2006年 元旦特集

【 稲嶺知事 新春インタビュー 】
 昨年の宮古地区は、五市町村の合併によって宮古島市が誕生する歴史的な節目の年となった。今年以降、行財政改革や地域経済の自立に向けた取り組みなど、合併の真価が問われることになる。県関係では、宮古支庁長ポストの将来的廃止が懸念されており、議論の展開が注目される。基地問題では、在日米軍再編協議で示された普天間基地のキャンプ・シュワブへの移設案に住民らが反発を強め、波紋を広げている。新年にあたり、稲嶺恵一知事に▽普天間基地の移設問題▽宮古島の支援策▽宮古支庁再編方針▽宮古病院の整備計画―などについて聞いた。

◆「一島一物語事業」を推進/進退は名護市長選後
                               沖縄県知事 稲嶺 恵一

 ―宮古、八重山支庁の組織改編(支庁の将来的廃止)と今後の離島振興への取り組みと決意は。また、新生宮古島市への支援策についてどう考えるか
 二〇〇六年度組織改正において、宮古、八重山支庁については、農林水産業関係四組織を三組織に再編するとともに、沖縄振興計画による宮古、八重山圏域の産業の振興方向を踏まえ、同圏域の持続的発展を支える基盤となる農林水産業施策の推進体制の強化を図るため、農林水産調整監を配置した。
 また、組織の意思決定の迅速化を図るため、中間職である次長職を廃止することとしている〇七年度以降のあり方については、沖縄県行財政改革プランを策定する過程で、県民や地域における意見交換会、また行政改革懇話会などの意見等を踏まえ、今年三月を。めどに結論を出すこととしている。
 支庁の見直しにあたっては、住民に最も近い基礎的自治体である市町村が、地域の実情に応じたきめ細かな住民サービスの提供を実現するという地方分権型社会システムの中で、県と市町村の役割のあり方、複雑化・多様化する行政ニーズに対して迅速かつ柔軟に対応できる組織体制のあり方、行政改革の視点など、さまざまな視点から検討を行っていく。
 ―離島振興について
 県は、離島地域の活性化を県政の重要課題に位置付け、諸施策を積極的に推進している。
 具体的には、昨年新設した事業として、@島の歴史や特色を活かした活性化の方向性等に関する市町村の調査検討に対して支援する、いわゆる「一島一物語事業」A離島における地域活性化を担う人材の育成B活性化に資するノウハウを有する専門家の派遣C通信の高速化・大容量化を実現する、ブロードバンド環境の整備―などを実施している。
 県としては、引き続き、美ら島会議を設置した内閣府や離島市町村との連携を図りながら、離島活性化に向け、全力で取り組んでいく。
 ―宮古島市支援について
 合併市町村に対する県の支援策としては、新市建設計画に位置付けられた、県関係事業を重点的に実施するとともに、財政的な支援がある。
 新生宮古島市への県の財政支援としては、市町村合併支援交付金として五年間で七億円、また、市町村振興資金貸付基金から単年度二億円を限度とする無利子貸付制度がある。
 県としては、新生宮古島市の均衡ある発展が図られるよう、引き続き支援していきたい。
 ―県立宮古病院の新築移転整備をどう進めていくか(整備着手の見通しも含めて)
 宮古病院は、那覇病院に次いで施設が古く、老朽化が進み地元からの強い要望もあることから、改築の必要性があると考えている。
 宮古病院の改築については、〇一年度に行った「宮古圏域医療需要動向」の結果や〇四年三月の「県立病院のあり方検討委員会」の提言との整合を図りながら、同病院の担うべき役割や機能等について検討を進める必要がある。
 そのため県は、〇四年九月に宮古病院と本庁の職員で構成するワーキングチームを設置し、地域における医療環境の現状を踏まえながら、同病院が持つべき役割、機能といった基本的な事項について検討を行っているところである。
 今後は、これらの事項に加え、診療体制や診療科目といった具体的な内容も含めて検討を進め、地元の意見や要望も参考にしながら「基本構想」を策定し、これを基に改築に向けての作業を早期に進めていきたいと考えている。
 ―県立南部医療センター・こども医療センターにおける離島医療支援について
 現在、代診医派遣調整等離島医療支援の企画・立案担当の医師一名を本庁に、代診担当の医師二名を中部病院にそれぞれ配置している。
 〇六年度からは、県立南部医療センター・こども医療センターの中に「離島医療支援センター」(仮称)を設置し、同 センターに当該三名の医師を配置することとしている。
 これにより、代診医派遣調整業務や離島診療所医師からの医療相談業務、離島診療所赴任前の研修医の指導等のこれまでの業務の円滑化・強化を図ることとしている。
 また、県内離島診療所等への勤務希望医に関する情報の集積・提供を行うドクターバンク事業を同センターにおいて新たに行う。
 ―米軍再編の最終報告が三月に取りまとめられる。最大の焦点である普天間飛行場の移設問題にどう取り組むか
 従来案(辺野古沖)にこだわっているのは、そこに至る過程の中で、いろいろな問題を整理し積み重ねた結果、できた案だからだ。従って、今の沿岸案を容認することはできない。私どもとしては、一つの形と姿勢を貫き要求し続けることに意義があると思っている。辺野古沖を見直すことはしない。苦渋の選択を撤回することはあり得ない。
 ―十一月の知事選への三選出馬の意思はあるか。その進退についての決断はいつまでに行うか。知事自身の進退とは別に、次の知事選は何が問われる選挙になると思うか
 少なくとも名護市長選前に進退は申し上げられない。しかし、できるだけ早い時期にはと思っている。私は公約のほとんどに手をつけた。根が着き、これから茎が伸び花が咲くものと思っている。雇用も増え、多くの企業も誘致した。未来の沖縄の発展につながる路線を敷いた。それを引き継ぐ仕組みにしたい。
 ―憲法改正について。特に、九条の改正についてどう考えるか
 社会の変化に伴い、憲法の対処も難しい問題が出ている。改正については、国民の皆さんで大いに論議してもらいたい。九条の平和の精神は大事にすべきと思っている。
 ―沖縄振興計画が五年目に入る。今後沖縄の振興をどう図り、自立に向けどんな青写真を描いているか
 経済の自立というのは大変重要だと思っている。特に財政的な状況はこれから非常に厳しくなると思っている。そうすると中央に依存する度合いをどうしても減らしていかなければならない。そのためには経済の自立が大変重要。これからの時代になると健康食品産業、バイオ産業をはじめとする新たなる産業を興すことによってどう特別自由貿易地域と結び付けながら進んでいくかが課題。
 一番大事なのは大学院大学。沖縄全体が新大学院大学の影響で研究機関と同時に企業グループが集積するというふうに確実に進んでいると思っている。
 観光は順調に伸びているが、外国からの誘客が少ない。コンベンションアイランド、国際的なリゾート地の形成をきっちりとしていきたい。 
 ―「県財政の中期見通し」で県の一般会計は二〇〇六年度から〇九年度までの四年間で、七百四十九億円収支不足に陥ることが明らかになっている。三位一体改革で財政状況が厳しくなる中で、行財政改革にどう取り組むか
 行財政改革というのは避けては通れない問題だと思っている。前倒しでできるものは積極的に取り組みたい。これをどうスピードアップしていくかということが大変重要。これに対して非常に重要な問題というのは意識の改革。多くの皆さんに早く納得していただいて着実に進めていきたい。もう一つは税収を増やすということが大変重要。そのパイを増やすということが大変重要なのでこれについては、いろいろ経済振興策を積極的に生かしながら進めていきたい。

 稲嶺 恵一(いなみね・けいいち)1933(昭和8)年10月14日、旧満州大連市生まれ。本部町出身。父は元参院議員の一郎氏。慶応大学経済学部卒業後、いすゞ自動車に入社。全国いすゞ販売労組委員長の経験も。73年に退社。世界各地を訪問後、父の琉球石油(現りゅうせき)に入社。りゅうせき社長、県経営者協会長などを経て、98年11月県知事初当選。02年11月知事再選。

 

 

 
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