第4集 「創る」 農林水産業・経済・環境特集

 宮古の農業は基幹作物のサトウキビから、熱帯果実のエース、マンゴーが有望視されつつある。宮古のマンゴーは、例年百五十―二百五十dの収量があり、金額にして二億―三億円を達成している。
 都市と農村が、あるいは消費者と生産者が、豊かな自然の下で、農林水産業を通じて、お互いに交流を深める新しいスタイルがファーマーズ・マーケット。宮古の優しい環境の中で、サトウキビ刈りやマンゴー狩り、野菜類やハーブ収穫なども人気のある交流コース。一方、水産業では、近海のマグロ釣りや一本釣りカツオなどを取り入れた水産観光が、今後期待されている。 
 宮古の観光入域客数は四十万人台へ急増の傾向にあり、観光経済に明るい展望。青い海・空、親切なもてなし、澄み切った空気、食文化などが観光客を引き付け、いずれも健康へとつながる。自然環境の保全も一層重視されるようになった。
 今年からサトウキビ製バイオ燃料の生産が本格化する。製糖工場の廃糖蜜でバイオエタノールを生産。そしてバイオエタノール三%混合ガソリン(E3)を製造。公用車を使った実車走行試験は昨年に引き続き実施する。地球温暖化防止にも貢献する。
《ファーマーズ開店》
「新鮮」「安さ」が売り/地産地消に期待
 昨年十二月二十三日にJAおきなわ宮古地区事業本部農民研修センターにオープンしたJA直営の農産物直売所「ファーマーズマーケット」。「新鮮さ」と「安心」を求める消費者の出足は好調でJA関係者も一安心の様子だ。地産地消を推進する県内二店目のファーマーズの今後が注目されるところだ。
 島の生産者が島で収穫した農産物を納品し、価格も自分で決めるファーマーズマーケットは地元生産による「新鮮さ」と生産者の顔が見える「安心感」、「安さ」が売りだ。JA拠点の主な直売所は全国で約二十店舗あるが、県内では糸満市の「ファーマーズいとまん」だけ。同店の売り上げは年間五億円にも上る。
 直売所に出荷を希望する生産者(原則としてJA組合員、準組合員でも可)はJAと契約しなければならない。契約した生産者は農産物を納品し価格も自分で決める(下限は調整)。直売所への手数料は売り上げの一五%で、売れ残った品物は生産者自らが引き取る。納品された農産物は直売所が販売を行い、注文があれば島内だけでなく沖縄本島や県外にも発送するというシステムだ。
 生産者には農薬の使用に関して使用基準を定めており、栽培日誌に使用した日付、種類、量の記入を義務付ける。さらには出荷物の欠陥や消費者からの苦情があった場合は生産者に注意を行い、その回数が多ければ出荷停止や除名などの罰則があるため、品質を含めた農産物の信頼性が確保される。
 また、商品のラベルには生産者の名前が表示されるほか、店内には顔写真も掲示するなどの徹底ぶりで、食の安全を求める消費者にとって農産物を買い求めやすい環境が整っている。
 JAおきなわ宮古地区事業本部の下地隆弘本部長は「地産地消を推進するとともに、農家所得を向上させることがファーマーズの狙い。県外出荷も大切だが、ファーマーズは島にある新鮮な食材の掘り起こしにつながると思う」と話し、多くの消費者の来場を呼び掛けている。
 写真説明・ファーマーズマーケットが開かれている農民研修センター=JAおきなわ宮古地区事業本部
《りゅうせきプロジェクト》

キビの糖蜜で地球温暖化防止/バイオ燃料を生産へ
 宮古の基幹作物の一つであるサトウキビの廃糖蜜を原料に、自動車燃料用バイオエタノールの生産が、今年二月以降、宮古島市下地の沖縄宮古製糖工場隣りで建設中のエタノール生産設備で本格化する。この生産と併せて、バイオエタノールは、りゅうせき宮古支店(同市平良)構内に設置されているE3燃料製造設備に受け入れられ、バイオエタノール三%をガソリンに混ぜ「バイオエタノール混合ガソリン(E3)」を造り公用車に供給される。宮古での地産地消が地球温暖化防止のモデルになるとして期待されている。
 同事業は環境省地球温暖化対策技術開発事業の一環として、同省が石油卸会社りゅうせき(浦添市)に委託。りゅうせきはバイオエタノールプロジェクト推進室(奥島憲二室長)を立ち上げ、二○○五―○七年度の三年間、バイオエタノールを生産する技術開発、E3実車走行試験などに取り組む。
 急ピッチで整備が進められている同生産設備は一月末に完成し、二月から試運転を行う予定。試運転以降に、バイオエタノールの本格的な生産に入る。キビから砂糖を精製した後に残る廃糖蜜を発酵させた後に蒸留し、一日一dの無水バイオエタノールを生産する。製糖期間が九十日の場合は計九十dを生産する計画。
 昨年十月から、公用車を使っての「E3実車走行試験」がスタート。バイオエタノールは島外から受け入れ、同混合ガソリンを造った。
 試験中の公用車は、県宮古支庁と宮古島市平良の計五十台。三年間の計画では千台を目指す。公用車で走行性能や経済性などをチェック。植物を使ったバイオ燃料は化石燃料の消費抑制につながる。世界では地球温暖化対策として、バイオ燃料に注目している。
 バイオエタノールの発酵時には、メタンが出ることから、メタンを自家発電設備や漁船などの燃料の一部として活用していく。りゅうせきでは、資源を無駄にしない地産地消を推進する方針だ。

 写真説明・公用車にバイオエタノール3%ガソリン(E3)を給油する職員ら=りゅうせき宮古支店構内のE3給油設備

国内初の一貫開発実証/製糖産業の活性化
 環境省地球温暖化対策技術開発事業の意義は次の五点が挙げられている。
 ■ 国内産バイオマス(生物資源)原料によるバイオエタノール生産から確立した供給体制によるE3供給まで、一貫として技術開発実証を行うわが国初めての事例。
 ■ 地球温暖化対策に役立てるのみではなく、自然環境と景観が資源である観光立県沖縄のイメージアップを図る。
 ■ 県産糖蜜の有効利用を図り、廃棄処理費用の軽減を図るとともに、有価資源の有効活用を図る。 
 ■ 県の基幹産業であるサトウキビ農業と製糖産業の活性化に資する。
 ■ 国内の優れた技術を集積した技術開発成果を、県の特色を生かした産地生産と普及を目指すプロジェクトである。
 


E3燃料製造設備でバイオエタノール3%をガソリンに混合する=りゅうせき宮古支店の構内
 

2月から試運転が予定されているバイオエタノール製造設備=宮古島市下地の沖縄製糖宮古工場隣
今年で創業100周年/宮古カツオ一本釣り漁業
 宮古で一九○六(明治三十九)年に始まった一本釣りカツオ漁業が、今年で満百年を迎えた。同漁業の導入により、水産経済は急速に発展を遂げた。
 一九○六年、市内字西里で商店を経営していた鹿児島県出身、鮫島幸兵衛氏が、宮崎県から帆船のカツオ釣り漁船二隻を導入したのが始まりだった。
 カツオ釣り漁船には、鹿児島県や宮崎県で活躍していたカツオ一本釣りの熟練者の漁師らが釣り手として乗船。離島の池間島の漁師数人がカツオの餌となる小魚の採捕に従事した。同島を基地に、狩俣近くの海域で操業が展開された。その時の漁船は櫓でこいだ。翌年の○七年、同島の漁師らが組合を組織し、鮫島氏からカツオ一本釣り漁船を買い取り操業を行った。地元の漁師らがカツオ一本釣り漁船を自営したのは、宮古では同島が初めてであった。同島は今年、創業満百年を迎える。
 鮫島氏は一九○八年、新たにカツオ一本釣り漁船四隻を購入した。一九○九年には伊良部島の佐良浜漁師らに二隻を売却した。
 同島と佐良浜でカツオ一本釣り漁業が本格化したことで、宮古の水産業は飛躍的に発展した。
 一九一○年の一本釣りカツオ漁船の年間最高漁獲高は一隻で五万斤(一斤六百c)。一隻の乗組員は二十人程度。一人当たりの配当金は三十五―四十円。粟の一俵(六十`)が五円だった。カツオ一本釣り漁業が今年一世紀の節目を迎えたことで、漁師らはカツオ祭りのイベントを検討している。

 写真説明・カツオの大漁で活気に包まれていた=1996年7月、旧平良市池間島
 

 
>>>新年号トップページへ