第3集 「活力」 地域版・郷友会特集

 昨年十月一日に平良、城辺、伊良部、下地、上野の五市町村が合併して新市「宮古島市」が誕生した。合併をめぐっては、旧平良市を中心とした振興策が図られることを懸念する他の旧町村からの声や、新市の名称で住民アンケートが実施されるなど紆余曲折があり、生みの苦しみも味わった。ともあれ、新市が誕生したことで、住民側の意識も高揚。新しい年へ向けての気分の高まりとともに新市へ懸ける期待は大きい。五市町村が合併し一つになっても、やはりその地域独特の個性は持ち続けたいもの。豊かな地域社会の実現へ向け、多良間村を含めた各地域でさまざまな活動を展開している団体や個人を紹介する。

<平良地区>
地域子ども教室/笑顔と感動を共有/楽しみの創出目指す
 二〇〇五年度の取り組みとしては▽水泳▽読み聞かせ▽物作り▽三線▽将棋▽演劇▽絵画・紙粘土▽パソコン教室―などを実施してきた。
 昨年末には、クリスマスリース作りに親子で挑戦。材料となる木のツルや実などを拾い集め、自然を満喫しながらの物作りを楽しんだ。
 コーディネーターを務める奥間さんは「最近の子供たちは物を作ろうとするときにお店で製作キット(部分品のひとそろい)を売っているとの感覚が強い。自分たちで材料を集めて製作することを学ばせたい」としており、子ども教室の目的である「体験活動」をいろいろな方面で実施している。
 昨年一年間では、読み聞かせ教室を公民館、小学校などで実施し、読み聞かせとお話で地域の先輩(おじい、おばあ)たちと交流を図り、地域の文化を学んでいる。
 また、演劇教室では子供たちが一生懸命練習して昨年八月に試演会を開催。生き生きとした子供たちの演技に父母らが大きな拍手を送るなど、試演会を成功させている。
 そのほか、水泳、将棋、三線教室では基礎から技能向上まで子供たちに体験させ好評を博している。
 地域子ども推進事業は、未来の日本をつくる心豊かでたくましい子供を社会全体ではぐくむため、学校や社会教育施設を活用して、安全・安心な子供たちの居場所(活動拠点)を設けるとともに、地域の大人を指導員として、放課後や週末におけるスポーツや文化活動などのさまざまな体験活動や地域住民との交流活動等を支援するために国などの支援を受けて実施している。今年度が事業の最終年度となり、各種教室は今年三月までにまとめていく予定となっている。
 テレビゲームやアミューズメント施設が増える中で、昔ながらの遊びや物作りの楽しさを子供たちが体験する機会が減っている。この事業を通して、子供たちに「提供された楽しみ」ではなく、自分たちで「楽しいこと」をつくり出すことを学んでいくことも一つの目的になっているようだ。

 写真説明・子供たちがいろいろな体験を通して、親・地域の人たちとともに楽しい時間を過ごしている
<城辺地区>
島唄館 「綾語」 オープン/久貝哲雄・洋子さん夫妻

 自他共に認める無類の音楽好きは、フォークからロック、そして三線にたどり着いた。「四十歳になるまで、三線の良さはまるっきり知ることもなかった。年を重ねた今だから、古くから受け継がれてきた三線の奥深さと『民謡を感じる心』になったと思う」と手元の三線を大切そうに握り締めながら語る。
 昨年四月にライブハウスの島唄館「綾語」をオープンさせた。妻の洋子さんと二人三脚で店を切り盛りする。ライブハウスは二人の夢で「中国や台湾などの外国には、その地域の伝統文化・芸能を披露する場所があるが宮古にはない。そんな場所を求める人は多い。だからライブハウスをやりたかった」というのが経緯だ。
 城辺字福里の自宅の車庫を改装した観客二十五人までの小さなライブハウスだが、音響、防音といった設備もしっかりと整った自慢の館だ。予約制でライブを行い、久貝さんが三線と唄、洋子さんは太鼓やはやしを担当する。ライブ後は三線体験教室を開き、訪れた人たちに三線の弾き方や宮古民謡について詳しく説明し、宮古伝統の継承にも寄与している。
 久貝さんは「自分たちのライブで喜んでくれるお客さんを見て、私たちも喜ぶ。お客さんとの出会いが最高」と笑顔で言うが、それ以上に「明るさと力強さを持った宮古民謡という伝統芸能の継承者になりたい」という思いが強い。その民謡を語り継いでいくという毎日は「本当に充実している」と胸を張った。
 洋子さんも「お客さんが感動している姿を目の前にする素晴らしさは何とも言えない感覚。この喜びは、今までの人生で味わったことがない。出会いと交流がある素晴らしい人生です」と小さな笑みをこぼした。
 久貝さんはライブハウスのほか、各種イベントや市内ホテルで観光客相手の演奏も行う。「これからも唄や演奏を通し宮古民謡の素晴らしさを多くの方々に伝えていきたい」と力強く語った。

 写真説明・昨年4月に念願のライブハウスをオープンさせた久貝哲雄さんと妻の洋子さん=城辺字福里の島唄館「綾語」
<伊良部地区>
「生涯現役が誇り」/老人クラブ連合会の役員ら
 伊良部老人クラブ連合会(仲宗根玄信会長、会員五百六十五人)の仲宗根会長は「全会員の目標は生涯現役で、歳を重ねて輝くこと」と強調した。
 同会は、会員の健康維持・増進や教養の向上、生きがいのある活動などを目的に設立され、今年で九年目を迎える。
 これまでの活動は▽長寿の集い▽グラウンドゴルフ大会▽ゲートボール大会▽ペタンコ大会▽チャリティー芸能大会▽のど自慢大会▽クイチャー踊り―などと多彩。
 仲宗根会長は「常日ごろから、会員には家にこもるなと言っている。老人クラブの活動や社会に積極的に参加することが若返りの秘訣となる」と語る。その上で「今では全会員が明るい人生を送る」と自慢する。 今年四月一日から、宮古島市老人クラブ連合会伊良部支部に改称し、新たな出発を迎える。「改称しても、これまでの活動内容は変わらない。平良、城辺、上野、下地の老人たちとも積極的に交流を深めたい」と抱負を語る。
 役員は次の皆さん。(敬称略)
(前列左から)譜久島ヨシ子、仲間ヨシ子、佐久田初子さん、仲宗根チヨ子(後列左から)仲村渠静子、仲宗根玄信、森田秋、楚南竹男、池間ヨシ子

 写真説明・生涯現役を誇る老人クラブ連合会の役員ら
<下地地区>
5歳から60代のメンバーが奮闘/手話サークル「ひまわり」
 手話サークル「ひまわり」は一九九八年六月に発足した。旧下地町内に障害者関係のボランティアサークルがなかったことから、社会福祉協議会の古波蔵孝子さんが発起人となって活動を開始。下地町内に住む仲地美和子さんに協力を呼び掛けたのをきっかけに、福祉や手話に関心のあるメンバーが次々と集まった。現在は十二人で構成され、下地だけでなく平良や上野からも加わった。全員が手話は初めてとあって、活動はゼロからのスタートだった。
 練習は毎週木曜日。下地老人福祉センターに集まり、午後八時から九時までの一時間かけて手話の修得に励んでいる。耳に障害のある仲地美和子さんと通訳の宮城育子さんが講師を務め、あいさつや会話、自己紹介など手話の基礎から練習を積んでいる。当初は月二回の練習だったが、メンバーの熱心さから毎週一回の練習に増やした。
 この中でも、下地小五年の川田愛梨美さんと上地志歩さんは特に練習熱心。覚えるのも速く、簡単なあいさつや会話などもできるまでに上達した。時には「小さな先生」として頼られるなど、他のメンバーからの信頼も厚い。
 母親に誘われて参加したという川田さんは「楽しい」とサークル活動を満喫している様子。「将来は福祉関係の仕事をしたいので、今のうちに勉強しようと思って手話を始めた。通訳なしでも自分でできるようになるまで頑張りたい」と意欲がみなぎっている。
 川田さんと一緒に手話を始めた上地さんは「だんだんと難しくなっているけど、覚えるのも増えてきた」と回を重ねるごとに収穫に手応え。川田さんと一緒に「小さな先生」ぶりを発揮する。
 サークルの発起人となった古波蔵さんは「とてもいい雰囲気で皆楽しみながらやっている。無理なく練習し、一人でも多くの人が手話を身に付けられれば。また、手話に参加する子供たちがいずれ手話の通訳として活躍してくれればうれしい」と期待を寄せた。

 写真説明・手話サークル「ひまわり」。日々、手話の修得に励む=下地老人福祉センター
<上野地区>
真心込めて奉仕活動/上野中ボランティア委員
 「博愛の心」を活動方針に掲げ、校内外で奉仕活動を展開する宮古島市立上野中学校(普天間裕校長)のボランティア委員(藤原愛委員長)。高齢者や身体障害者らとのコミュニケーションを楽しみながら、社会奉仕について理解を深めている。
 ボランティア委員は、トライアスロンでの給水作業補助や高齢者、身体障害者のイベントの介護や運営補助、ひとり暮らしの老人宅の清掃などを積極的に行う。参加は、生徒たちの自主性に任せているため、各イベントごとに藤原委員長と副委員長の兼島瑞葵さん、我如古博斗君が中心となって参加を呼び掛ける。
 顧問を務める外間聡教諭は「コミュニケーションや手伝いなど、活動を通してさまざまなことを学び、博愛の心を絶やさぬよう、成長しても相手を思いやる心を大事にしてほしい」とエールを送る。
 藤原委員長は「障害を持つ人たちに対しての自分の考えが大きく変わった」と話し、活動を通し「平等」について学んだという。その上で「五体満足で生まれた私たちも、もっともっと頑張らなければ」と表情を引き締める。
 毎朝、学校周辺の清掃を自主的に行っている我如古君は「『ありがとう』と言われ、喜んでもらったときが一番うれしい」と笑顔を見せる。
 兼島さんは「ボランティアは、自分の周囲でできることもたくさんあると思う。これからも続けていきたい」と意欲的だ。

 写真説明・積極的に奉仕活動を展開するボランティア委員の皆さん

<多良間地区>
ノニ栽培で農業活性に情熱/美里さん夫妻
 「多良間島をノニの島にしたい」。農業法人グリーンヘルスの美里泰秀代表(63)。妻の絹代さん(58)とともにノニ栽培を手掛ける。「換金性もあるし、生命力の強い永年木なので島の環境美化にもつながる」と、一緒に夢を追い続けている。
 美里さん夫婦がノニ栽培を本格的に始めたのは二〇〇五年から。現在は二千五百本以上を村内の畑に植え付けている。ノニは約八カ月で実を付けるというが、本格的に収穫ができるのは一、二年後を見込んでいる。
 美里さんがノニ栽培を始めたきっかけは、生命力が強く、多良間島にも自生し、健康補助食品として注目を集めているノニを多良間ブランドとして確立すれば「島全体の農家所得が向上するのでは」と考えた結果。夫婦二人で夢実現のため、試行錯誤をくり返しながら可能性に挑戦している。
 「多良間島は四方八方を海で囲まれており、ノニの栽培には適している」と強調する美里さん。「多良間産ノニを、有名な黒糖並みに付加価値を付けていきたい」と夫婦で口をそろえる。
 ノニの現状については「本土の市場は沖縄県産のノニを求めている。現在は需要に供給が追い付いていない。島全体で取り組み、特産品化すれば一億―二億円産業に発展する」と分析。
 そのため、「島を特別振興地域として指定するなどの支援が必要」と行政への協力も求める。
 「大好きな島に恩返しがしたい」。美里さんの原動力だ。「ノニ栽培が成功すれば私が青年のころから愛した島の経済活性につながる。責任は重大だが、ぜひ成功させたい」と普及に意欲を見せる。

 写真説明・ノニ栽培を本格的に始めた美里さん夫妻。円内はノニの実

 

 
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