2005年 元旦特集

【 稲嶺知事 新春インタビュー 】

■ 下地島空港 軍事利用反対/伊良部架橋を着実に推進
                            沖縄県知事 稲嶺 恵一

 ―普天間飛行場の辺野古移設問題についてどう取り組むか
 稲嶺知事 1つの計画を進めている途中で、ものが決まらないうちに、ひっくり返したり、やめてしまうと、すべてが白紙の状態に戻ってしまう。だから進められているものについてはそのまま着々と進めていくことが前提にある。しかし、私は県議会でも述べたように、1つは、辺野古移設には固執していない、2つに、具体的な代替案がない限りはすでに日米両政府において決められた計画はそのまま進めていく、3つに、両政府間で具体的な代替案が出た場合は、それを支持するのは当然である、と明言している。
 ―下地島空港の軍事利用問題で地元や県が反対しているのに対し、政府が容認する考えを示していることを知事はどう考えるか。軍事利用は認めないとする屋良覚書を知事はどう受け止めているか
 稲嶺知事 下地島空港については、これまで米軍の使用について自粛を強く要請してきたところであり、いわゆる「屋良覚書」や1979年に県と国との間で確認した同空港の管理運営方針(「西銘確認書」)を踏まえた利用が行われるべきとの考え方は一貫している。
 県としては、これまで日米両政府に対し、県民の目に見える形で本県の過重な基地負担の軽減が行われるよう、あらゆる機会を通じて強く求めてきた。米軍再編の中でも、新たな基地負担につながるようなことに対しては反対である、と明言している。
 ―沖縄の経済振興、雇用対策の展望と、具体的施策について
 稲嶺知事 沖縄を自立経済に持っていくためには、沖縄振興特別措置法によるいろいろな形の特別措置をどう生かしていくかが大きなポイントになる。沖縄の経済を上げるためには、1つは、いろいろな形で本土から沖縄にお金を落としてもらう、あるいは買ってもらう。2つは外国からお客が来て落としてもらう。あるいは外国に買ってもらう。さらには、いま沖縄で外国や本土の製品が売られているものを、沖縄製品にしていく。それらを基本的にやらなければ経済の自立に結びつかない。
 これから先、1つの大経済ゾーンになる可能性のあるのは、沖縄科学技術大学院大学。いま世界的に最高水準の先行研究が入り、最先端の研究が行われているが、次には、それに対していろいろな形で研究所ができてくる。その次には人員が張り付いていくので、いろいろな意味で大きな芽出しだと思う。
 情報通信産業はいま着実に伸びている。関東に続き、関西の経済圏とも結び付けたい。いま沖縄ブームなので、沖縄の地場の製造業にどんどん伸びてもらいたい。それと、沖縄の健康食品の伸び率がいいので、徹底的に伸ばしたい。それらのための人材育成事業を今後とも進めていく。
 雇用面では、若い人たちに雇用のミスマッチングがある。若い人たちが雇用に対する意識をしっかり持ってもらえるよう、職業訓練とか、雇用につながる施策を実施し、ミスマッチを縮めていきたい。
 ―三位一体改革により市町村の財政状況が極めて厳しい状況となっているが、今後の県内市町村の財政運営について県はどう対応していくか
 稲嶺知事 本県市町村は、地方税等の自主財源の割合が全国平均より低く、財源の大半を地方交付税や国庫支出金等に依存した脆弱な財政構造となっている。
 こうした状況の下、「三位一体改革」が2006年度まで継続されることから、市町村がその役割を適切に果たしていくには、地方税等の収入の確保や、徹底した歳出の削減を図るなど、思い切った行財政改革に努める必要がある。
 県としては、現在進められている市町村合併を積極的に支援し、新たな合併の取り組みも推進していきたい。
 ―伊良部架橋の本格着工に向けた取り組みについて
 稲嶺知事 伊良部架橋建設事業は大規模事業であることから、着工準備調査として2001年度から国庫補助による環境影響評価調査などを実施してきた。昨年 7月には環境影響評価の手続きを完了し、現在、橋梁基本設計や取付道路、海中道路などの実施設計を行っている。
 05年度は、橋梁本体の実施設計を行うとともに、漁業補償交渉や公有水面埋立免許取得手続きなどに取り組んでいく。
 ―宮古の振興策の重点項目について
 稲嶺知事 島の歴史や特色を生かした「一島一物語」の考えの下、島の活性化の方向性等に関する調査検討、島のアイデンティティー具体化の支援事業を実施する。また、離島の地域活性化を担う人材の育成と、地域が必要とする知識・技能等を有する専門家の派遣事業を実施する。
 伊良部架橋の整備を着実に推進するほか、佐良浜漁港の整備等により農林水産業の生産基盤の強化等を図る。
 ―宮古農林高校環境班が開発した有機肥料「バイオ・リン」の評価および今後の取り組みについて
 稲嶺知事 同校環境班が開発した有機肥料「バイオ・リン」は、高校生の視点で日々の研究活動の中で進めてきたものであり、高く評価される。
 その意義は、@学校における日ごろの学習活動が世界に通用したことA地理的にも教育環境としても不利な条件にある離島のハンディキャップを優位性に変えたことB教師や生徒の粘り強い教育活動の成果であること、などである。
 今後も学校教育における専門教育の果たす役割を踏まえ、普及啓発等を通して高校生の研究活動を支援していきたいと考えている。
 

 

 

 
<<< 元旦特集トップページへ