2005年 元旦特集・産業 【水産業】

 

水産業に明るい兆し

 今年の水産業に明るい兆しが見え始めた。今期産養殖モズクのキロ当たり相場価格の高値が予想され、生産者には久しぶりの朗報だ。伊良部町では、内間正勝さん(84)・初枝さん(52)夫妻と息子の光善さん(23)が養殖海ぶどうの技術確立にめどをつけた。4月から増産態勢に入り「伊良部産海ぶどう」のブランドで売り出す。安定した海水温度が続いており、今年も大物キハダマグロの大漁が期待されている。養殖モズク、内間さん親子、マグロにスポットを当てて紹介する。

□ 地場産業で発展/養殖モズク 高値取引に期待

 宮古の 2004年産養殖モズクが、4年ぶりにキロ当たり100円相場価格を突破し、120円の高値が予想され養殖モズク生産者らを喜ばせている。昨夏、伊良部町で収穫された天然養殖モズクはキロ当たり130円で取り引きされ、今期産の養殖モズクの高値を予測させていた。
 養殖モズクのキロ当たりの相場価格が、買い付け価格変動で崩れたのは1998年だった。通常のキロ当たり100円前後の相場価格が240円前後に高騰した。
 高騰した原因は、前年産の養殖モズクが病原性大腸菌○(オー)157に殺菌効果があるとして全国に宣伝され、モズク消費量が一気に増えたためだった。
 98年には本土の量販店などのモズク販売業者が養殖モズクを大量に買い付け、高値を呼んだ。
 99年にキロ当たり300円台となったことから、養殖モズク生産者が急増し、気象条件などに恵まれて豊作となった。再びモズク販売業者間の乱立買い付けが激化。その結果、販売業者は在庫を抱えるようになり、養殖モズクの仕入れを控えた。2001年-04年までの4年間のキロ当たりの相場価格は100円で推移した。
 上原正行・平良市漁業協同組合長は「今期産の養殖モズクが高値になる可能性は高い」と話した上で「養殖モズク生産者が平良市漁協などを通さず直接モズク販売業者に浜売りした場合は、相場価格が下落することも考えられる」と浜売りを警戒する。同漁協が扱った03年産養殖モズクは実績は、約700トンで1億3000万円の売上高があった。前年の実績に比べて半分以下に落ち込んだ。
 伊良部町漁業協同組合(奥原隆治組合長)と平良市池間漁業協同組合(与那嶺昭夫組合長)では養殖モズクは扱っていない。養殖モズクが売れない場合に大量の在庫を抱えてしまうことが予想されるからだ。
 昨夏、同町佐和田の浜のイノー(礁池)から収穫された天然モズクは30トン余、金額にして400万円の水揚げ高を推移した。大量の天然モズクは、地元で魚介類を専門とする仲買人らが本土の取引業者へ出荷。高品質のため、高値で取引された。
 漁師らは「今期産の天然モズクも高値が期待されている」と強調する。

 写真説明・天然モズクは高値で取り引きされ漁師らを喜ばせた=2004年6月、伊良部町佐和田漁港

躍進するマグロ漁/水揚げ高、1億円

 伊良部町水産振興課(池原豊課長)がまとめた「2004年キハダマグロ水揚げ実績」(速報値)は、総水揚げ量が約250トン、金額にして1億円余を達成した。相次ぐ台風の影響で、例年の操業日数(160日)より約1カ月少ない130日だったが、漁師らの奮闘で大漁に恵まれた。
 1匹で40キロ以上の大物キハダマグロのキロ当たりの価格は800円。昨年秋から冬にかけて大物キハダマグロが次々と水揚げされ、総水揚げ量を押し上げた。
 大物キハダマグロは、例年6月ごろから宮古近海の深海を回遊し、その姿が肉眼で見られる深さまで浮上してくる。しかし、昨年6月は異変が起こった。
 漁師らは「海面水温が高かった。例年の海面水温は27度から28度ぐらいだが、昨年6月から8月は29度から30度あった」と説明する。
 9月に入ってから海面水温は27−28度に下がり、大物キハダマグロが釣れるようになったが、水揚げ量は少なかった。
 10月から大物キハダマグの水揚げ量は増え、伊良部町漁業協同組合の魚卸市場は活気づいた。 
 宮古近海に設置されている浮き魚礁(パヤオ)周辺海域が、マグロやカツオの漁場。
池原課長は「県の協力を得て、新年度にもパヤオを設置したい。今後ともパヤオの数を増やし、水産振興を発展させたい」と意欲を示した。

 写真説明・大物キハダマグロの水揚げに町民らは感激していた=伊良部町

□ 養殖海ぶどう 技術確立にめど

 伊良部町水産物養殖・加工施設で海ぶどう実験養殖に取り組んでいた、内間正勝さん(48)・初枝さん(52)夫妻と息子、光善さん(23)の親子3人はこのほど、養殖技術の確立にめどがついたとして、今年4月から本格的な増産態勢に入る方針を固めた。3人は「伊良部産海ぶどう」のブランド名で売り出す。
 内間さん一家の生活本拠地は沖縄本島の知念村久高島。3年前、正勝さんが試行錯誤の末、養殖海ぶどうの技術を確立した。現在は久高島の海ぶどう養殖場から月平均100キロを出荷する。
 初枝さんは同町佐良浜出身で旧姓が湧川。
 初枝さんは昨年、佐良浜地区に住む母の面倒をみるために里帰りした。その時に、古里でも海ぶどうを養殖しよう、と決意。同施設を管理する同町水産振興課と相談し、既に同施設の賃貸契約を結んでいる町内の男性と話し合い、合同実験養殖に取り込んだ。
 初枝さんは「久高島では養殖技術は確立したが、久高島と伊良部町との環境は違う。今後、伊良部町で種付けした海ぶどうの成長や色つやが変化するのか、じっくり観察を続けたい」と話す。
 光善さんは「母の古里である伊良部町の水産振興のために頑張りたい。早く伊良部産ブランドを確立し、県内外に出荷したい」と意欲を燃やす。

 ■海ぶどう 正式和名はクビレヅタ。緑色の細い茎がいくつにも分かれ、小枝に直径2−3ミリの半透明の緑色球状の葉がつく。その葉が果物のブドウの房に似ていることから、別名「海ぶどう」の名がついた。沖縄県の珍味の1つ。

 写真説明・色つやも良く順調に育っている海ぶどう=2004年12月、伊良部町水産物養殖・加工施設

 

 
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