2005年 元旦特集・6市町村 平良市

【 新春インタビュー 】

■ 合併に向け結束の年   平良市長 伊志嶺 亮

 ―市民に対して新年のあいさつを
 市民の皆さま、新年明けましておめでとうございます。2005年の新春を健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。
 本年も市政運営にあたり市民各位のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。
 ―大詰めを迎えた市町村合併。合併推進協の会長として、また平良市長としての取り組みは
 市町村合併の枠組みについては、これまで紆余曲折はありましたが、各市町村長の「宮古は一つ」という大同団結により、議会や住民のご理解を得て、5市町村の枠組みで合併推進協議会が設置されました。現在、協定項目の45項目についても合併協議会での協議を終え、合併への条件整備が一歩前進したことは、大変喜ばしいかぎりです。
 また新しい島づくりの計画となる「新市建設計画」につきましても、すでに県との事前調整に入っており、目標とする10月の合併に向けて、今後とも全力で取り組んでまいりたいと思います。
 いま地方自治体の財政は、三位一体改革の影響を受け、さらに厳しい財政運営をせまられており、また地方分権への対応や少子・高齢化社会への対応などが求められております。
 これらの課題に早急に対応するためにもぜひ合併を実現させなければならないと考えております。
 合併が実現しますと、宮古は5万人規模の新市が誕生するわけですが、これまでの市町村の壁を取り払うことにより、効率的・効果的な行財政運営が図られ、100年の大計に立って、それぞれの市町村の特徴を生かした新たな宮古のまちづくりが実現できるものと考えています。
 ―地域再生計画が昨年末に政府認定を受けて、今後の予定と具体的な取り組みは
 昨年末に、「健康と癒しのエコツーリズム・海上の道づくり」が国から認定を受けました。
 計画の1つに、中心市街地の活性化があります。いかに街中に賑わいをもたせ、住民や観光客等を集客するか、というのがテーマですが、具体的にはオープンカフェの設置や道路・歩道を利用した歩行者天国、フリーマーケットの開催など、民間事業者等の経済活動に伴う道路占用許可を円滑化することによって、活性化につながる支援を頂くことになっています。
 また、この計画の柱の1つに、健康保養地を掲げてあり、国立療養所宮古南静園の将来について、国や県と話し合い宮古の健康保養基地づくりにつなげていきたいと考えています。
 また池間島の漁民センターについても、目的が限定されていた既存の施設を、規制緩和で自由に地域住民が利活用できるようになりますし、エコツーリズムの推進にあたってもプログラム開発や人材育成で支援を受けることにしています。
 この地域再生構想は、地域が有する様々な資源を智恵と工夫により有効活用しながら、地域コミュニティーの活性化につなげていくもので、まさに地方分権時代のまちづくりの手法だと考えております。今後とも地域の自立、個性豊かな街づくりを進めるためにも地域住民やNPO等とも連携して地域再生計画に取り組んでいきたいと思います。
 ―昨年、「健康都市連盟」の総会に出席し、国内唯一の理事都市としての取り組みは
 昨年は、マレーシアのクチン市でアジア太平洋地域の健康都市連名の総会が開かれ、私も理事都市として出席しました。総会には50余の都市、機関の関係者400人が出席して、健康や環境をテーマにした街づくりや地域づくりなど取り組み、今後の課題などについて議論が交わされました。日本からは、平良市の他に、千葉県市川市、愛知県尾張旭市、静岡県袋井市の首長や職員の参加があり、お互いの健康都市の取り組みについて意見交換を行うなど、国内の自治体でも健康都市づくりが広がりを見せています。今後とも平良市が進める「人・まち・自然」の健康づくりを推進していきたいと思います。
 ―財政非常事態宣言を昨年発令しましたが、市の財政健全化に向けた今年の取り組みは
 平成16年度予算では、5億6000万円という歳入欠陥を抱えての異常事態で、予算を組まざるをえませんでした。この財政問題を解決するため、昨年の3月に財政非常事態克服実践本部を設置し、また10大行動計画を市民の目線でチェックする諮問機関として市民委員会を設置し、財政非常事態の克服に全力で取り組んできました。
 これまで市民委員会の提言等も受けて、累積滞納税等の滞納徴収強化や使用料等の一部減免停止、四役、議員、職員の報酬・給与のカット、補助金等の削減などに取り組んだ結果、当初の 5億6000万円の歳入欠陥額は昨年末現在で2億円弱程度まで圧縮しております。
 合併を控えていますが、少しでも合併町村の負担にならないように、引き続き財政の健全化に取り組んでいきたいと考えています。

健康といやしの「海上の道」づくりへ/地域再生計画 政府が認定

 昨年12月、平良市に大きな朗報が届いた。同市が申請していた地域再生計画「健康と癒しの『エコツーリズム・海上の道』づくり」が、政府の構造改革特別区域として認定された。計画の期間は5年間。▽中心市街地活性化のための多様な歩行空間の創造▽八重干瀬(やびじ)や池間島の海と自然を生かしたエコツーリズムのルート展開▽狩俣地区の「健康ふれあいランド」建設―の3つが柱。政府の認定を受け、道路使用許可の円滑化、弾力化が図られ、既存の施設の利用範囲も拡大するなどさまざまな面で規制緩和がなされるほか、エコツーリズムの振興に向けた支援も受けられる。平良市では5年間で5万7000人の観光増加を見込む。認定された同計画を紹介する。

《 市街地活性化 》

道路使用の円滑・弾力化/多様な歩行空間創造

 地域再生計画の中では、「中心市街地の活性化による観光客の誘引」がうたわれている。中でも西里通りと市場通り、下里通りの3通りを中心とした「中心市街地」の再生が主となっている。
 目玉は、西里大通り、市場通り、下里通りの各商店街振興組合が、さまざまな活動を行う際の道路使用許可が円滑化されることと、道路占有許可の弾力化だ。
 各通りでは、「宮古まつり」の歩行者天国をはじめ、フリーマーケットやコンサートなどさまざまなイベントが催されており、道路使用許可の円滑化は、これらの各種イベント時に有効に作用しそうだ。
 また、道路の占有許可が弾力化されることでオープンカフェなど、地域の道路がより利用しやすいものとなり得る。特に拡幅された市場通りや下里通りでは、カフェテラスなどを設け、観光客や住民が行き交う空間を創出することが可能となる。
 中心市街地には現在、東西にはしご状の幹線道路が行き交う一方、南北への移動が少ないのが現状だ。そこで関連事業として、車中心の街から多様な歩行空間を創造するため、南北を歩ける「フットパス」(抜け道)の整備や、歴史文化ロード事業の拡大などに当たる。
 これらによって現状では海岸など観光リゾート地にとどまりがちな観光客を「まち」に誘引し、観光客が「まちなか散策」を楽しめるような空間づくりを実施。「市民、観光客、歴史、文化が出会い、交錯する場」として再生していきたい考え。

 写真説明・地域再生計画によって活性化が期待される平良市中心市街地(写真は西里大通り)

《 エコツーリズム支援 》

池間島 新たな拠点に/「海の駅」なども整備

 「地域再生計画」2本目の柱は、「エコツーリズム」の支援。新たな振興策として、池間島の池間漁港を生かしながら、「日本500の重要湿地」に指定された池間湿原、「幻の大陸」とも呼ばれる八重干瀬(やびじ)などを含めた「全島エコツーリズム」を掲げている。
 新たな振興策として、現在は利用度の低い池間漁民研修センターを活用し、観光案内所や「八重干瀬資料館」といった体験滞在交流施設、漁協婦人部によるカツオなどの海産物二次加工所と展示・販売施設を設置する。さらに池間島歴史文化ロード事業や八重干瀬周遊観光など、新たな観光ルートの開拓にも力を入れる。
 また関連事業として、池間島に観光と漁業を連携した「海の駅」を、2005年度で整備する。これは、漁港内に駐車場とフリーマーケットを整備し、改修する池間漁民研修センターの機能と連結し、一帯の連携を図る。
 このほか、エコツーリズムに関する情報提供や、各種ガイドとコーディネーターらが連携しながら観光客、住民団体などに対応できる拠点が宮古観光協会内に設置される。市民の有償ボランティアを育成することで、雇用の確保にも生かされる見込み。これは池間島に設置される観光案内所と連携される方針だ。

 写真説明・池間島、八重干瀬を含めた「全島エコツーリズム」の実現に期待がかかる。写真は年に一度の八重干瀬上陸ツアー

《 健康ふれあいランド 》

観光客・住民の交流の場/狩俣地区にコテージなど

 地域再生計画の3本目の柱となるのが、「健康ふれあいランド」計画の実施。同市はすでに狩俣地区の海岸沿いにキャンプ場や野鳥観察台、コテージなど体験滞在施設の整備をしており、2006年度には一部が供用開始される予定。
 平良市では、「健康まちづくり」を合い言葉に、福島県西会津町や千葉県市川市と、食生活改善推進事業などに関する健康交流を進めている。すでに多くの実績を上げている先進地に学びつつ、さらにこの取り組みを推進していく。
 国内の旅行に関する動向は、従来の周遊型観光中心から体験型観光、保養滞在型観光など多様化する傾向だ。宮古は冬でも温暖な気候を生かし、観光客のニーズの変化に併せた観光ルートを設定するなど、新たな努力が必要となっている。
 たとえば、東北地方など寒冷地の高齢者を長期にわたって滞在させ、地元住民と農漁業も体験しながら、文化やスポーツの交流を通して、心身共に健康をつくり上げるなど、新たな拠点として注目される。

人気が定着 ひらら市場/常連に加え観光客も利用

 「地産地消」をキーワードに、地元で取れた新鮮な農作物や加工品を販売しようと、平良市が2003年3月に始めた「ひらら市場」。月に2度平良港で開催されてきた同市場は、顔が見える場所で作物を提供したい生産者と、地元で取れた「安心野菜」を手にしたいという住民らで、人気が定着している。同市農政課の長浜博文課長は「常連の生産者、消費者が増え、人気は根強いものになっている」と自信を深めている。
 毎月第2、第4日曜日に開催される同市場。所管する同課では開始当初、売上額を把握しようと各生産者から記録を取っていた。しかし同市場が定着していくにつれ、生産者と消費者の間で言い値で交渉したりとコミュニケーションが図られるようになり、記録は取らなくなったため、現在までの正確な販売実績などの把握は困難だ。
 しかし、毎回のように訪れる生産者、消費者がいるということは、人気が完全に定着したことの証し。今では平良港を利用する観光客も気軽に足を運ぶようになり、一般には手に入りにくい、地元の取れたての農作物や珍しい加工品を買い求め、笑顔を見せる。
 長浜課長は「生産者にも住民にも浸透している。そして最近では観光客の皆さんにも喜んでもらえているようだ。今後もしっかりと継続させていきたい」と意気込んでいる。

 写真説明・平良市の新名所ともなっている「ひらら市場」=平良港

 

 
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