Sakae Accountability Office


1.ペーパージョイントによる名義料の授受


Q 当社はJVを組んで工事を請け負いましたが、構成員の1社
はいわゆるペーパージョイントであり、名義料の授受がされてい
ます。
このような金員の出入りはいつの事業年度の益金および
損金として計上すべきでしょうか。
A
形式的にはJV工事の形をとるものの、実際には構成員との間での裏契約により、
何ら工事に携わることなく名義料として見込利益の一定額を受け取る、いわゆるペ
ーパージョイントというものがあるようです。これは、主に大手企業と施工能力の弱
い地場企業とのJV工事に見受けられるケースです。
このペーパージョイントによる名義料の授受は、通常、JV工事の決算時になされ、
支払側の大手企業では工事原価として処理され、一方、受取側の施工能力の弱
い地場企業は工事高または雑収入として処理されます。
これについて税務上は、受取側の収益計上時期はいつか、また、支払側について
は損金の額への算入が認められるか否かが問題となります。

まず、受取側の収益計上時期については、本来JV工事は請負工事の完成引渡し
をもって計上されるべきですが、ペーパージョイントによる名義料は完成引渡しを
要件としていないため、名義料授受の基因となる契約締結日の事業年度の収益
の額に計上することになります。

つまり、工事の完成引渡しの時までその計上を引き延ばすことはできないという
ことになります。

次に、支払側の損金算入の適否については、名義料として見込利益の一定額
を支払うことは売上に対するリベートの一種と見る考え方も彩れますが、しかし、
名義料の計算根拠が不要確であること等から、税務上、交際費認定を受けるこ
とになりますので注意が必要です。


ところで、ペーパージョイントはJV趣旨に反するものでもあり、「共同企業体運営
指針」尊重され、このような金員の授受は廃止されることが望まれるものである
ことはいうまでもありません。


2.他のJVや構成員会社の倒産

Q 当社はJVの構成員ですが、当期中に相手方構成員が経営の行詰りから
失踪してしまいその下請先への支払を当社が肩代りしました。相手方構成員
は実質的に倒産状態にあり当社としても、工事を完了する必要があったこと、
およびその下請先に支払をしなければ指名停止処分を受けることが予想された
ためです。
 この場合、当社の肩代りは税務寄付金として扱われないでしょうか。
A
寄付金
 法人税法上、寄付金の額とは、金銭その他の資産または経済的な利益の贈与
または無償の供与といい、親子会社間や関係会社間の取引であると否とにかか
わらず、相手方から無償で債務を引き受けた場合にも、税無上、寄付金として取
り扱われます。
 しかし、法人が子会社等の倒産、解散等にともない、当該子会社等のために債
務の引受けその他の負担をしたり、当該子会社等に対する債権の放棄をした場合
においても、その負担等をしなければ今後より大きな損失を被ることが社会通念上
明らかであり、やむをえず負担する等の相当の理由があると認められるときは、そ
の損失の額は寄付金の額に該当しないものとされております。(法基通9-4-1)
 なお、ここでいう「子会社」とは、親子会社間に限定されるものではなく、取引
関係、資金関係その他特殊関係以外において密接な関係がある場合も含まれ
るものとされております。

その他の損金
ご質問の場合、JVの相手方構成員に対して回収の見込みがないにもかかわら
ずその債務を代位弁済したのは、顧客との請負契約の当事者が御社でもあるこ
とから、期日までに請負工事を完了し引き渡す必要があったこと、及びその下請
け先に支払をしなければ、いずれ監督官庁より立替払の勧告を受け、それに従
わない場合には指名停止処分を受けることが予想されること、さらに相手方構成
員が実質的に支払不能の倒産状態にあったこと等からすれば、税務上の寄付
金には該当せ、その他の損金として取り扱われるものと考えます。
へ戻る





HOMEへ