「国土と交通に関する図画・作文」国土交通事務次官賞
未来を築く、宮古島
北中学校3年 池村 隆弘

 今年の四月、僕は東京から沖縄県の宮古島に引っ越してきました。宮古島は、気候も土地も大都会である東京とは全く違い、沖縄独特の訛や文化があります。島の周りは、日本でも有数の白い砂浜とコバルトブルーの海で囲まれていて、毎年多くの観光客が訪れます。
 この島の交通機関は自動車が主流で、一家の保有台数は約一・八台と多く、そのうちの約四割が軽自動車です。道路もほとんどがアスファルトで整備されていて、昔に比べると車の流れがとてもスムーズになったそうです。宮古島の隣にある池間島、来間島とは長い橋が架けられ、とても便利になりました。さらに、平成二十四年度には伊良部島と宮古島とを結ぶ、全長四`bもある伊良部大橋が完成予定です。僕は引っ越しをする前に家族と何度か宮古島に来たことがありますが、来るたびに島が発展していく様子について家族とよく話すことがありました。国が都心だけではなく。離島まできちんと道路を整備してくれているという事実を、僕はとても嬉しく思いました。
 便利になるということは、とても素晴らしいことだと思います。しかし、その便利さは宮古島が車社会であるということが根底にあります。自動車が増えると、地球温暖化の原因の一つである二酸化炭素が大量に放出されてしまいます。これからの交通手段とは、便利であると同時に環境に配慮したものでなければなりません。
 その代表として鉄道があげられます。鉄道は、車輪と線路との摩擦抵抗が自動車に比べて格段に少ないため、重い荷物を載せても少しの力で走ってくれます。エネルギーの消費を極力抑えられるので、環境に優しいという大きなメリットがあります。鉄道は、環境への配慮がなされた素晴らしい交通手段だといえます。しかし、鉄道事業を宮古島で興すのは、容易なことではありません。宮古島はそれほど狭くはありませんが、中心市街地では住宅が密集し、店舗もたくさんあります。それに、片側三車線以上の広い道路が少なく、沖縄本島のモノレールのように道路の中央分離帯に柱を立て、上に鉄道を敷設することも難しいです。仮にそれができたとしても、車輌基地や変電所、駅などの設備を置くには、膨大な土地と費用を要します。それから、需要が少ないこともあります。中心市街地では必要な物品がほとんど手に入るので、長距離を移動する必要がありません。利用者が少なければ採算が合わず、すぐに廃線になってしまいます。これらのことから、宮古島に鉄道事業を興すのは難しいと思います。
 では宮古島の交通手段は、環境に悪いまま近い将来を迎えてしまうのでしょうか。
 鉄道を利用できない以上、自動車そのものを改良するしか方法はありません。現在のところ、燃費が良い自動車としてハイブリッドカーが実用化されていますが、価格は普通の車より三十万円から四十万円ほど高価です。宮古島で走る自動車を、全てこの車にするのは容易なことではありません。
 そこで、僕が注目したのは宮古島で研究しているバイオエタノールの技術です。バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビから作られ、燃やしても化石燃料のように二酸化炭素を多く放出しません。この燃料を自動車のガソリンに何割か混ぜて使うことによって、大気への悪影響も減ると思います。しかも、この原料となるサトウキビは宮古島の基幹作物で、沖縄県全体で生産している量の約四割を宮古島が生産しています。まさに、地域にあった環境問題への取り組みではないでしょうか。実際にこの燃料を使用している自動車は、昨年は百台ほどでしたが、今年は五百台を超え、来年は千台を目標に着々とその成果を上げています。さらに、この事業が成功すれば地域の活性化にも繋がり、新たに雇用の場をつくり出すこともできると思います。
 人々の暮らしが便利になるということはとても素晴らしいことだと思いますが、環境を壊さないように心掛けることも重要です。便利さを追求することと、環境保全に努めることはどちらも実現できると僕は思います。大都会である東京と、自然が多く残る宮古島とでは環境が違います。一言に環境問題と言っても、環境が違えば対策の仕方も変わってきます。宮古島は車社会で、それは、これからもずっと変わらないと思います。これからの環境問題への取り組みは、それぞれの地域に合ったもので、みんなが協力してできるものでなければなりません。近い将来、人にも、環境にも優しい宮古島を、私たちの手で築いていくことができれば素晴らしいと思います。