新生宮古の行く路

 
視線の彼方へ

意外性のある地域おこしを

仲本 栄章

 9人制のバレーボールを経験した者にとっては、最近のバレーボールのプレーは驚きの連続である。世界女子バレーをテレビ観戦した後の男子バレーの動きの速さとパワフルなアタックはワクワクする。特にアタックラインからの一瞬宙に浮いたのかと思われるジャンプには思いっきり唸る。
 ブロックも見ごたえがある。実は勝負の流れを変えるのはこのブロックだったりする。世界最小最強の竹下佳江さんは、身長が低いにも関わらず見事にブロックを決めて日本の窮地を救った。力が均一化している世界大会では、攻めるほうも攻められるほうも意外性がなければ勝てないほど勝利の女神はわがままになっている。実はここでもITバレーというソフトウェアが活躍している。ゲームをリアルタイムで戦術分析をする。そして右、左のアタックの指示がだせるという。ブロックの手の幅まで提案できるという。それを受けて、監督は具体的な指示がだせる。だからプレーする選手は計算外の行動をする。それが水中に飛び込むようなダイビング・レシーブであったり、相手のコートにも飛び込む。この意外性に観客はさらに熱狂する。
 o月の末、香港からマカオについたのは夜だった。上下にゆれて、ガンガン冷房の効いた高速艇の中でふるえながら、マカオ本島から離れ島にかかる橋がイルミネーションに縁取られて美しい。港に近づくとネオンサインに輝くマカオサンズが迫る。今や売上高ではラスべガスを追い抜いた世界一のカジノ、マカオの顔である。日本人ガイドのNさんはカジノで働いていた経歴の持ち主で、まるで我が家のようにサンズに入っていく。ズラリと並んだスロットマシン、ルーレット、バカラ、ビンゴ、ブラックジャック。ディーラーはエリート公務員で、若い女性が目立つ。マカオの若者の就職先として人気があるという。室内は以外と装飾品は少なく、テーブルがひしめきあっている。}時間の不夜城である。日本人が幅を利かせていたのは、バブルの頃までで、今や中国大陸の客がお得意様であるという。見渡すと、金髪もいるが、やはり中国人が目立つ。重ねられたコインで賭け値がわかる。勝っている人の見分け方をガイドさんに教えてもらった。目が笑っているという。どんな苦虫を噛み潰した表情をしていても、目だけはごまかせないという。その視点でみると、なるほど、いるいる。ひとり、ふたり…。人口末恊lの小さな島で、年間のカジノ収益が約6700億円、カジノのおかげで大学が4つできて、医療施設も充実し、失業率も大幅に減って、気になる犯罪率も減少したという。しかしながら当然陰の部分もあるだろう。
 沖縄出身の日本ゲーミング産業会長の上野健一氏によれば、歴史的にも一国二制度の経験があり、貧乏な県だから、カジノは沖縄に向いているという。もし、沖縄にカジノができれば、すべての弊害は取り除く事ができるという。新たなコミュニティーとして、シニアに優しいカジノシティー。観光客を1千万人にするより、カジノをつくって、搓ホ以上の方のハッピーリタイア組を6千人移住させれば、一挙に金持ち県になる。オーストラリアのパースを例に地域おこし、町づくりとして提唱している。オーストラリアのカジノ・オーストラリア・インターナショナルは糸満市進出を表明している。上野氏は浦添のキャンプキンザー跡を候補地としてあげている。東京都の石原知事も東京へ誘致したいと声をあげている。全国レベルでみてもカジノを提唱する県は多い。それはそれぞれが地域おこしに躍起になっているからである。
 ここ半年間、県外の出張先から、あるいは観光で訪れた島々から、そして海外から、絶えず私の視線の彼方には宮古島があった。そしてたどりついた言葉の結論が「意外性」である。カジノは世界最先端のコンピューターを導入している。最終的にはディーラーの0・2パーセントのによるとのことだがシステムは万全だ。IT技術を駆使して、ITバレーボールといわれ、データの分析技術で攻撃を定め、備えを万全に整えた上で、最終は人間力の意外性なのである。意外性は鍛え抜かれた末に宿る。地域おこしの意外性、旗を振る人の情熱からほとばしる意外性。さらに、さらに追求してみたい。

 仲本栄章(なかもと・えいしょう) 1947(昭和22)年6月8日生まれ。58歳。那覇市出身。日本大学法学部卒。70年に琉球電信電話公社入社。那覇電報電話局庶務課長、NTT沖縄支社沖縄情報案内センター所長、沖縄支店副支店長、エヌ・ティ・ティ・ドゥ取締役ITビジネス本部長などを経て、2003年、同社代表取締役社長。06年7月、NTT西日本−沖縄取締役副社長 

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