新生宮古の行く路

地産地消に向けた取り組み
ファーマーズマーケットへの参画を


長濱 哲夫

 昨日、皆さんの食卓に出ていた野菜のうち、宮古島で生産された野菜は何品ありましたか?
 宮古島の家庭で消費されている野菜の大部分は島外から移入されていることに気づいたはずです。秋から春先までは田舎の両親が作った野菜をおすそ分けしている家庭もたくさんありますが、スーパーで買ってきた食材は島外から移入されたものが多いのが実態です。これまで、地産地消を意識して島内販売向けの生産を行ってきた農家が少なかったことや販売拠点を提供できなかったことが最大の要因であると考えられます。
 宮古島の専業農家は主に県外市場向けの作物を生産販売してきました。市場流通ルート(共選共販)には、出荷する作目、数量、規格、時期に厳しい制限があります。また、離島から県外向けの作物を生産し販売するためには大量輸送を前提としなければ輸送コストが吸収できないことから品目がおのずと限定されます。専業農家として生きていくためには今後とも市場出荷を中心地とした販売戦略を継続していかなければならない離島農業の宿命にありますが、少量でも販売できる仕組みをつくることも重要なことです。
 宮古島のアルカリ性土壌の畑で作られた栄養豊富な野菜が県外出荷の規格に合わないことで廃棄されたり、自家用野菜の余剰分が地元で消費されないことはもったいないことです。
 このようなことからJAでは地元で生産された農産物を直売するための「ファーマーズマーケット・あたらす市」を昨年の12月にオープンしました。現在、生産農家や加工業者を含めて約230名の登録会員で運営しています。
 ファーマーズマーケットは消費者からは@つくり手が見える「安心感」A朝取りの「新鮮さ」B地場直販の「安さ」を、生産者からは@少量多品目の商品化A付加価値づくりによる加工品の有利販売B高齢者・女性の社会参加と生きがいづくりC県外出荷野菜の規格外品の換金を目的に開設しました。
 また、IT時代に対応したネット販売による「産地直送」や他地域のファーマーズとの提携による販売を強化するとともに、地域特産加工品を開発し「農産物や特産物の発信市場」をめざしています。
 観光客が40万人を突破することが確実な時代になりましたが、せっかく宮古島に来られた観光客に宮古島ならではの島野菜を発掘し居酒屋や宿泊施設へ提供することも今後の検討課題であります。
 一方、消費者の信頼を得るためには、比較的生産が容易な冬春季以外の季節の生産技術を確立し通年供給できる生産体制を構築していくことが求められています。そのためには会員を増やして少量多品目の栽培農家数の確保が必要になります。ある高齢の生産者の話では、これまで野菜を作って子供たちに提供してきたものの畑で残った野菜については廃棄せざるをえなかったが、「あたらす市」に納品し自分の名前が入った野菜を消費者が目の前で買っていただくことは大きな喜びであり「生きがいづくり」になるとのことです。
 これまで野菜を栽培したことのない方たちや苦手な方にもJAの営農指導員や県の普及員で栽培指導を行っていきますので、サラリーマンや公務員を退職した方たちが積極的に参画することを期待しています。
 ファーマーズマーケットを生産者と地域住民の交流の場として、また、高齢者を含めた市民の生きがいづくりの場として運営していく考えでありますので、多くの市民が参画することをお待ちしています。

 長濱 哲夫(ながはま・てつお)1953(昭和28)年11月30日生まれ。52歳。宮古高校卒業後、75年に平良市農業協同組合に入組。JA宮古郡企画管理部長、JAおきなわ農業経営対策室長を経て、2004年8月、JAおきなわ宮古地区事業本部副本部長。

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