新生宮古の行く路

 
富山の「昆布まつり」

〜物語が商品を掛け算にする〜

仲本 栄章

 街路樹には、花みずきの紅白の花が可憐である。植え込みには色とりどりのチューリップの花が規則正しく咲いている。
 ホテルの部屋からは、ゆったりした街並みが見下ろせ、神通川が横一文字に流れる。頂にはまだ雪をかぶった立山連峰が屏風状にひろがる。この季節の富山市内には、たっぷりとした情感が漂っている。
 昨夜の「昆布まつり」のレセプション会場でのメニューを思い返していた。前菜にクーブイリチーと焼きホタテ貝と糸昆布の酢の物、焼きアナゴの昆布巻きの三点セットが小ぶりの器にでた。ためらわず、箸はクーブイリチーにいく。豚肉と柔らかく炒めたトロリとした味は格別だ。富山でうまいクーブイリチーに出会うとは。その他に、昆布のてんぷら、海鮮の昆布蒸し、島らっきょうの昆布締め等々、昆布づくしである。後で悔しかったのが、昆布舟盛り春の立山蒸し、昆布の両端を竹の皮でしばり、舟形をつくり、中にしめじや、ほうれん草、魚介類。中身だけを食べて、昆布の器を残したのは後悔の念が残った。
 北前船は富山を出て、北海道で昆布を積み、大阪や長崎港をわたり、富山の売薬商人によって薩摩へ。そこから琉球、中国にまで昆布が運ばれた船路を昆布ロードと呼ぶ。
 板子一枚下は地獄。北海や日本海の荒波をくぐり昆布を運んだ、北前船のチャレンジスピリッツを感じる。絵で見る北前船の、大きな帆いっぱいの風をはらんだ勇姿を見ると、かつての大交易時代における琉球の進貢船と相通じるものを感じる。現代の我々が失いかけているロマンがそこにはある。
 富山駅のホームから北陸電力のビルが伸びる。その横におしゃれなガラス張りのIT企業で名高いインテックのビルが並ぶ。
 インテックの中尾会長とは、二年ほど前の那覇での昆布談義から、先だっての四月二十九日のみどりの日に開催されるまで、何度も「昆布まつり」のうわさ話をした。ある時は富山で酒を酌み交わしながら、ある時はご家族で来られた時に首里の料理屋で、ある時は富山の新聞で、ある時はインターネット上で、知るたびにまつりは膨れあがっていった。
 当日の富山の駅前は日本で初めてのライトレールのスタートと合わせて人出でごったがえしていた。
 富山駅前テントに並ぶ札幌、富山、沖縄の物産を眺めながら、宮古島に想いを馳せてみた。今、昆布の消費量は富山が一番で、沖縄は三本の指にも入っていないということを宮古の人はご存知だろうか。(沖縄本島の人も知らない人は多いが)富山の特産で有名な、昆布巻きかまぼこがあって、前述のような昆布料理があるのをご存じだろうか。沖縄が事あるごとに、薩摩揚げの元祖はチキアギーだと力んだところで、空しい。宮古も海産物は豊富だ。しかし空港に並ぶ地元産は寂しい。もっと加工技術を学ぶべきだ。
 富山はさらに新たな昆布料理と産官学による新商品を開発していた。その一つが“からだよろコンブゼリーだよ”。富山の海洋深層水と沖縄のモズク、北海道の昆布を合わせたゼリー状の健康飲料水である。
 トライアスロンを世界的にアピールする効果も素晴らしい。オリックスのキャンプ誘致もかなりの経済効果をもたらすと聞く。しかしあれもこれも、『いらっしゃいませ』である。
 来月はいよいよ世界中のサッカーファンが熱狂するドイツのW杯。スポーツアイランドを目指す宮古島。ドイツといえば商船ロベルトソン号を救助した博愛の宮古島。ドイツW杯を契機に宮古スピリッツを秘めた、ドイツと宮古島の特産品を合わせた産官学共同開発による健康食品を売り出したらどうだろうか。物語りと合わせて掛け算の商品となる。当然できた商品はインターネットで世界中へ発信する。宮古→人の燃ゆる気概を込めて、熱くグローバルに。

 仲本栄章(なかもと・えいしょう) 1947(昭和22)年6月8日生まれ。58歳。那覇市出身。日本大学法学部卒。70年に琉球電信電話公社入社。那覇電報電話局庶務課長、NTT沖縄支社沖縄情報案内センター所長、沖縄支店副支店長、エヌ・ティ・ティ・ドゥ取締役ITビジネス本部長などを経て、2003年、同社代表取締役社長。
 

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