健康の答えは家庭の中に


宮古地区医師会学校担当理事

砂川 伊弘さん(52歳)

(宮古島市平良)

砂川 伊弘さん 教諭やPTAを対象に正しい食事の取り方を伝えている。昨年、各学校で開催した講演会は二十四回。「健康課題は、家庭の中に答えがある」。宮古島の未来を支える子どもたちが心身ともに健康に育つよう、大人の理解を広げている。
 きっかけは、十五年前の糖尿病患者向け講習会だ。予防の重要性を痛感し、低年齢からの食事指導や家庭料理の役割の大切さを伝えようと決意。同時期、小学校の運動会に出向くたびに目に付く、児童の肥満も気掛かりだった。勤務医生活に区切りを付け、地域に根差した健康指導活動を行うように。徐々に食育講演の依頼が増え、今では各校やPTAに引っ張りだこだ。
 講演では、栄養バランスを車のボディー、ガソリン、オイルに例えて分かりやすく伝え「葉野菜だけで野菜いためを作っていませんか?野菜は一種類だけでなく、緑黄色野菜と淡色野菜を必ず混ぜて」などと具体的に話す。栄養を効果的に引き出す調理法も指導し「マスコミの情報に振り回されるな」と呼び掛ける。健康ブームの昨今、食べ物に関する情報がはんらんする。「惑わされずに正しい食事を」。日ごろ台所を担当する母親らの表情は真剣だ。
 ある高校からは「手作り弁当を持参する生徒が増えた」、小学校からは「子どもが、母親に野菜が足りないとアドバイスしている」など、うれしい声を聞くことも増えてきた。数々の反応の中で印象的だったのは「うちでは事情があっておにぎりやラーメンの食事が多いけど、私が大人になったら子どもにきちんとした食事を取らせたい」という高校生の感想だった。「悲しいけどうれしかった」と複雑な表情で振り返る。
 子育て中の親や思春期の子どもたちから悩みを打ち明けられることもしばしば。「答えを持っているのは子ども自身」というのが一貫した姿勢だ。「子どもの話にじっくり耳を傾け、気持ちを受け入れ、一緒に考えて、答えを見つける子どものパワーを引き出すのが大人の役割」と考える。栄養の取れた毎日の手料理と一緒。「子どもたちの体と心の成長を支えるためには、大人に気持ちのゆとりが必要」と話し、社会全体の問題として問い掛ける。
 また、「うちの子、地域の子、宮古島の子…と考えればみんなかわいいし大事に思える。私たちには、未来の宮古を担う人材を育てる責任がある」とし、どんな子どもを育てたいのか、どんな宮古島をつくりたいのかという意識の明確化を呼び掛ける。
 講演で話す栄養知識や愛情いっぱいの手料理の意義が、多くの食卓に届くことを願っている。

 砂川 伊弘(すながわ・ただひろ)1954(昭和29)年3月22日生まれ。平良字西里出身。宮古高校、杏林大学卒。同大学付属病院、琉球大学付属病院内科医を経て、89年、宮古病院内科医。95年、砂川内科医院開業。96年、宮古地区医師会学校担当理事。             (砂川智江)
 

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