農業の可能性に期待込め


全国環境保全型農業推進コン優秀賞 県指導農業士

砂川 寛裕さん(52歳)

(平良字西原(福山地区))

 第十二回全国環境保全型農業推進コンクール(主催・全国環境保全型農業推進会議)で、優秀賞に当たる同会議会長賞を受賞した。施設野菜の栽培が主で、東京農業大学や宮古農林高校と連携し有機肥料の使用、減農薬、減・化学肥料に取り組んでいる。「私自身、今後も実践を続けるが、地域の人たちにも何とか、啓蒙(けいもう)していきたい」と話す。
 二〇〇四年にストックホルム青少年水大賞(通称・水のノーベル賞)を受賞した宮古農林高校環境班とのかかわりは長い。同班が開発した有機肥料「Bio−P(バイオ・リン)」も積極的に取り入れ。地下水保全の重要性を気付かせてくれたのが彼らだ。「発表の中で、『私たちの大好きな農業が地下水を汚染している』と言っていたのがショックだった」
 〇一年からは宮古島上水道企業団(現宮古島市水道局)のモデル農家として、有機肥料による野菜栽培を進めてきた。東農大の中西康博助教授による勉強会にも参加し、「無駄な養分の流出の状況がようやく分かってきた」と実感を込める。
 青少年の受け入れにも積極的だ。地元の小学校や養護学校などの児童生徒に農業体験をさせたり、本土の学生が滞在したり。「ある大学生はうつのような状態だったが、宮古へ来て農業とかかわることで日に日に顔が変わっていった」と振り返る。
 いじめやそれによる不登校などが社会問題となる中、「農業が子どもたちの心を浄化できるのではないか」と、その潜在力を期待する。「将来的には学生たちを受け入れられるよう、民宿をつくりたいという考えもある」と熱が入る。
 現在はナスをはじめ、ピーマン、トマト、キュウリ、ゴーヤー、水菜などの野菜を栽培する。JAおきなわ宮古地区本部の「あたらす市場」にも作物を提供。商品には出荷者の名前が記されており、知り合いから「砂川さんの野菜、買ったよ」といった声を聞くと、「これほどうれしいものはない」。
 「消費者が地元産野菜に目を向けてくれることをうれしく思う。子育てと一緒。親がしっかり注目すれば子供は良くなる。農家もいい加減なものは作れなくなる」と、消費者の関心の高まりを歓迎する。
 土地によって人に気質や顔かたちがあるように、食べ物にもそれがあるのでは、との考えを持つ。「土地の野菜は、その土地で生き抜けるよう適応していく。そこで育ったものを食べることが一番、住民にとって体に良いと思う」と持論を述べる。
 経営を安定させるための大量生産、島外出荷と、地元に向けた多種栽培のバランスで今も悩む。「島内産野菜を大型スーパーに安定供給できるよう、グループをつくるとか。地元の農家としてもっと頑張らないと」。理想とする地下水保全型の農業と「地産地消」の実現を目標に、「孫たちに『自分も農業をしたい』と言ってもらえるよう、死ぬまで現役でやりたい」と、意気込んだ。

 砂川 寛裕(すなかわ・かんゆう)1954(昭和29)年11月6日生まれ。平良字西原(福山)出身。宮古農林高校卒。旅行会社勤務などを経て、25歳で帰島し、農業に従事。砂川農園代表。JAおきなわ宮古地区青壮年部平良支部長、同部副委員長などを務め、現在は県指導農業士、宮古島市農業委員。妻和子さんとの間に1女5男。   (砂川拓也)
 

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