宮古上布に新風吹き込む

第27回県工芸公募展 最優秀賞
        
仲宗根 みちこ さん (45歳)

(平良市西里)

wpe7.jpg (5288 バイト) 「昔はつらい歴史の中でしか存在しなかった宮古上布を、私たちの世代で明るい前向きな宮古上布にしたい」―。第27回県工芸公募展に宮古上布を出展し、最優秀賞を受賞した仲宗根みちこさんは受賞者あいさつでこう意気込みを語った。
 「賞はあくまでも結果。それが目標ではないが、出展して認められるとうれしい気持ちになる。もっと良いものを作りたいと意欲がわく」と生き生きした表情で話す。
 生まれ育ったのは石垣市。地元の高校を卒業後、県伝統工芸指導所に通い、首里織りなど織物の基礎を学んだ。その後、沖縄本島の工房で経験を積んだ。
 宮古は両親の出身地。幼いころ何度も訪れた思い出深い場所だった。独立を考えた際に、選択肢の中に宮古が入ったのも自然なことだった。いろいろな縁が重なって、引き寄せられるように宮古へ移住。工房「風雅」を立ち上げ、宮古上布に本格的に取り組んだ。
 首里織りで使う絹は動物性なのに対し、宮古上布で使う苧麻(ちょま)は植物性。糸が持つ独特の質感の違いに「どう表現すれば良いのか、分からなかった」と戸惑う日々もあった。
 太い糸と細い糸を交互に織ることで、布に表情を付ける。独自の技法は戸惑いや迷い、試行錯誤する中から生まれた。
 苧麻糸のナチュラルな特徴を生かし、地と縞の繊度の違う独特な糸遣いで布に表情を与えた。その技法は県工芸公募展の審査員から「宮古上布の新しい展開として期待される」と評価を受けた。
 「本当に素晴らしいものは私の足元にあった。昔は気付かなかったが、今はそのことに感謝しながらこれからの仕事につなげたい」。
 宮古上布についてよく言われることが後継者不足や糸不足。伝統の衰退を危ぶむ声も多く聞こえる。
 今後も宮古上布が受け継がれてゆくには、「仕事」として残すことが大事だ。伝統ある宮古上布を織ることに満足しては「趣味」の範囲にしかすぎない。夏着として使えるように涼感が出るよう工夫を加えたのも買い手のことを考えた結果。また、流通や販売のルートを作ることにも力を入れた。
 年貢として納められた宮古上布は、現在、取り巻く環境が大きく変化し、昔は生活のために糸積みをしていた高齢者たちが、今は自分の生きがい、楽しみとしているという。
 仲宗根さんの宮古上布は婦人雑誌などで紹介され、全国からの問い合わせも多い。5月には2度目の個展を東京で開催する予定だ。
 「糸もある、織り手もいる。作品もそれなりに評価されている。マスコミなどで報道されるような危機感はなく、むしろ明るい未来が開ける気がする」。仲宗根さんの笑顔のように、宮古上布の未来は明るい。

 仲宗根 みちこ(なかそね・みちこ) 1959(昭和34)年6月1日生まれ。45歳。石垣市出身。八重山高校卒、県伝統工芸指導所で織物を学ぶ。多和田工房に勤めた後、83年に宮古へ移住。工房「風雅」を始める。05年、第27回県工芸公募展で最優秀賞を受賞。夫、英夫さんとの間に2男、1女。

                                                                    (洲鎌恵仁記者)

 

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