ぺん遊ぺん楽

 
三大がっかり

久貝  徳三

<2003年
 12/9掲載>
   日本には「観光名物三大がっかり」というのがあるそうだ。
 その一つは、札幌大通り公園沿いにある「時計台」。札幌の観光名所だというから、大英帝国はロンドンのビッグ・ベンのような立派な時計台を連想しながら訪ねて行った。しかし、街路樹に隠されて案内がなければ見逃してしまう程小ぢんまりと佇んでいた。
 この時計台、歴史をたどれば明治十一年札幌農学校(現在の北海道大学)の演武場として建設された。その後裁判所や郵便局の仮庁舎として利用され、昭和四十五年には国の重要文化財に指定されたと言う。現在でも正確に時を刻んでいる時計は、明治十四年の米国ハワード社製で、動力は豊平川の石を木箱に詰めた「おもり」だとか。今日、時計の大半は水晶発振だと言うのにである。やはり名物時計台であることに間違いはない。
 二つ目は、日光・東照宮の東回廊奥社参道入り口、鴨居の上に彫り込まれている「眠りネコ」。作者はかの有名な左甚五郎。見れば実物大のネコの彫り物体を丸めて寝ている。その裏側には、スズメの彫り物もあるが、ネコはそれを知らず眠りこけているとか。あまりにも小さいことががっかりだと言う。(この眠りネコに代わって、長崎の眼鏡橋や四国の播磨屋橋を入れる説もある) 
 三つ目は、「守礼の門」。西暦二千年には二千円札にも描かれて全国的にその存在を知られた。この建造物は十六世紀初め頃の琉球国王・尚清が、琉球国王に冊封されたことを記念して、中国牌楼(はいろう)の流れを汲んで造営された装飾建造物である。掲げられている扁額には「守礼の邦」。
 ところでこの守礼の門、何ががっかりかと言えば、規模が小さい事だと言う。首里城にはふさわしい大きさの門だと私は思っているのだが、他府県から来た観光客には、物足りないようである。中国の紫禁城を見た人は、首里城そのものも小さく見えるのではあるまいか。国王の居城は、その国の規模・国力にふさわしい規模で建てられるものであり、琉球国王の居城が大阪城並では、がっかりする前に異様さを感ずるのではあるまいか。
 観光名物と銘打つからには、それなりに何か意味が秘められている筈である。小さいからと言ってがっかりする前に、そのいわれを知ると、がっかりも興味の的になるのではないか。
 因みに世界の三大がっかり一つ目は、コペンハーゲンの「人魚姫」だとか。次はシンガポールの「マーライオン」。
 この二つは私も実際に見たが、がっかりしなかった。もう一つは、オーストラリアの「オペラハウス」だと聞くが、実際に見ていないので、これについて書くと、四つ目のがっかりになるのでこれについて書くことは差し控える。
 (宮古ペンクラブ会員・フリーライター) top.gif (811 バイト)