ぺん遊ぺん楽

 
鳥の結納


久貝 勝盛
(くがい かつもり)


<2006年01/07掲載>
 明けましておめでとうございます。輝かしい2006年、戌年がスタートしました。まだ酉年の余韻が残っています。鳥社会の結納について紹介したいと思います。
 人間社会での結納とは、お国柄によっていろいろ違いはあるものの、婚約の証として婿や嫁の双方から金、織物、生活必需品等の品々を取り交わす事であるとされます。アフリカのマサイ族の社会では男性は女性の家に牛を送ると言います。ニューギニアのある地域では男性は豚を送ると言います。ここで生活する男性たちは、この贈り物の準備が出来なければ結婚できないということになります。古今東西、男性側の収入や社会的な地位は結婚成立の大きな条件になるという事です。
 それでは、鳥の社会ではどうなっているのでしょうか。鳥の社会でも求愛時にオスがメスに餌を与える求愛給餌という儀式が知られています。これが人間社会の結納に相当します。
 ウミネコやユリカモメ等のカモメ類(宮古では冬場に見られるが数が少ない)では、オスは気に入ったメスにプロポーズする時は餌をはき出して与えます。ハヤブサ、サシバ等のワシタカ類では大好きな彼女に空中で獲物を与えます。このプレゼントを意中のメスが受け取るかどうかがオスの運命を大きく左右します。メスが受け取ると結婚の成立を受け取らないと結婚の不成立を意味するからです。
 人間社会では結納は結婚時の一回きりですが、鳥の結納(求愛給餌)は求愛の時だけではなく、結婚してからも続きます。特に産卵期の求愛給餌はメスの卵形成に必要な栄養という意味で大変重要な意味を持ちます。
 立教大学の上田恵介先生は「メスはオスの持ってくる餌の量を見て、将来の連れ合いの稼ぎ高を評価しているようだ。それは稼ぎの悪いオスと結婚してしまうと、もらえる餌の量が少なくなる。それでは卵へまわす栄養も少なくなってしまうからではないか」と言います。
 アメリカの鳥類学者、ニスベットはアジサシ類の卵と求愛給餌の関係を調査し、次のような興味深い結果を得ました。求愛給餌の回数が少ないと、三卵目の卵が小さくなり、ふかしたヒナの生存率も低くなった。三番目のヒナを無事に巣立たせたペアの夫は求愛給餌の回数が多かった。
 恋のシーズンになると鳥のオスたちは自分自身は粗食に甘んじ、彼女へのプレゼント用には大きくて、見栄えがあり、ボリュームのあるものを探し求めて日夜涙ぐましい奮闘をしているのです。

(宮古ペンクラブ会員・宮古島市教育委員会教育長)


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