ぺん遊ぺん楽


同級生との再会

仲原 かおる(なかはら かおる)


<2005年11/05掲載>
 「東京に行く事になりました。もし良かったら時間取れないかな?」現在は沖縄在住で、保育園から高校まで一緒だった幼なじみのいくえちゃんからメールが届いた。「会いたい!」 もちろん即レス。
 一通り東京観光を終えた私たちは六本木ヒルズ内にあるグランド・ハイアット・東京内のバー・マデュロへ。お洒落なバーらしく行き方も複雑で、一度ホテルのロビーから六階まで上がり、専用エレベーターで四階まで降りないと辿り着かない。看板もでていないし、ドアもまるで壁のようで、開くまでそれがドアであるとは気がつかない。小学校の教室を4つ繋なげた程の広さの店内は、手前の方には明るめの立ち飲みバーがあり、ワイワイしたい方はそちらへ。ショット・バーとは切り離された形で暗めのオレンジ色を帯びた間接照明だけで照らされた店内は、壁際にベルベットのソファーが並び、仕切りの奥には、ひっそりとした個室も用意されている。中央にはJAZZの演奏されるステージがあり、その周りを囲むように革張りのイスと2―4人用のテーブルがいくつもある。後ろの方には大人数でも座れる大きなテーブルが設えてある。ステージからちょっと離れた所には、落ち着いて飲める感じのバーもある。ヒルズ族と呼ばれる近くの証券会社やIT関連企業で働く人たちが飲みにくる場所らしい。国際的ホテルのバーらしく外国人客の姿も目立った。
 私たちは店の中央の席に案内され、どっしりした一人がけのソファーに各自深々と腰掛けた。よく分からないが気取った名前のカクテルとスパークリング・ワインとデザートを注文した。適度にざわめいた店内には既に大勢の先客がいて、9時ごろからはJAZZの生演奏が始まった。ピアノとベースとドラムのスリーピースバンドに、その日は外人女性ボーカリストが出演していた。おもむろにポルトガル語でボサノバが歌われる。私たちは間接照明の闇と、その闇を満たすボサノバの音符に包まれて談笑し、「二人の再会に」乾杯をし、音楽に聞き入り、ちょっと酔っ払い、歌手が間奏に踊る様子が、西辺のおばさんのクイチャーの踊り方と一緒だといっては笑いあった。
 不思議…。今まで私は都会で結構楽しく暮らしてきたつもりだった。でも、いくえと数日一緒にいて思い出した。腹の底から笑うってこういうことだったんだ! 笑いすぎて腹筋が痛くなる程、可笑しすぎて笑っても声が出なくなってしまうくらい私たちは笑った。いくえの前では一瞬にしてあの頃の私に戻れる。どんなに長い間離れていて、その間のお互いの様子を聞いていなくても。
 私たちは今までの二人の人生を振り返った。子供の頃なりたかった大人に私たちはなれているのかな? あの頃憧れていた仕事について、希望していたような生活を送れているのかな?
 結論は、私たちはその時自分で考えられる限りで最良の選択をしてきたと言う事。最終的にその選択が最善だったのかは分からないけど、自分で選んだ道を歩んできた結果、二人は今この場所に座っているのだという事だった。
 2006年1月2日、私の誕生日に、宮古島で西辺中学校卒業20周年記念同窓会が開催される。その時は同級生の皆とこれまでの20年を振り返り、笑い合いたいものだ。

 (宮古ペンクラブ会員・TV局勤務)

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