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 <2005年09/16掲載> |
| 久松漁港から下地の川満漁港への海沿いの道がある。海に向かうとパナリ（小さな離れ島）があって夕陽どきはとくにいい。なぜかこの道は「パラダイスロード」と呼ばれているらしい。墓場も海に向かって並び、ニライカナイを臨んでいるから、「パラダイス」だろうか。 その道から少し脇に入った畑（３００坪ほど）を知人から借り受け、この夏、鍬や鋤を新調して３人で20坪ほど耕した。元肥をしてスイカの苗を20本ほど植えた。水の設備はないので梅雨明け後は、毎日交代で水やりをせっせとした。ポリタンクも２つ買った。勢いよく育って花がたくさん咲いた。図書館から本を借りて調べた。「一株から三個の実を残して…ということは、50〜60個収穫して…ということはスイカ三昧で、よし！残りは新城海岸へ『エーッ、冷たいスイカはいらんかあ〜！』とスイカ売りしよう。そうしたら軽トラックがいるなあ」などと取らぬ狸の皮算用の話に盛り上がったりして楽しんでいた。台風もなんとかやり過ごし、20個くらいの実がなり、そのうち７〜８個はいい感じに大きくなった。うれしがって、「どの角度から写すとより大きくみえるかなあ」と写真を撮ったり、毎日眺め回して喜んでいた。「もうそろそろ、食べごろじゃないか？」「いや、もうちょっと待とう」。 そして、よし今日こそ収穫だという日に、畑に行くと、「ない！」大きな実が全部無くなっている。その日は私は誰ともできるだけ口を利かないようにした。寝込まんばかりにがっかりした。見ればわかる20坪ばかりの小さなスイカ畑で、いかにも素人パリンチュが楽しみに作っている小さな成果を、ごっそりかっさらって行く心根が口惜しいやら悲しいやら。それから、一気に気力が萎えて畑から足が遠のいているが、台風シーズンが終ったら、また気を取り直して再開しようか、素人パリンチュを、と話し合っている。（いっしょにやりたい方、どうぞ声をおかけください）。 そんな頃、久松地区公民館で、「伊良部大橋建設事業に係る事業説明会」があった。伊良部大橋の平良市側の着地点は久松になるというので、関心を持って聞きに行った。広げられた地図を見てびっくり。お役所の説明によると３案あるということだったが、もうすでにルートは決められていて、そのルートは大浜と呼ばれる小さな港付近から、久松北側に残る森の横を通って久松中学校の横の県道を通り３９０号線に出るというルート。私の家のすぐ近くを通る。聞けば、ルートを決定するまでに４回地元と話し合ったというが、それは久松の自治会役員と地元選出議員とだけ。一部畑も道路用地に入っているが地権者全員に事前に話されてもいない。試算では一日８千台近い台数の車両が通ることになるという。久松集落入り口辺にロータリーを作り、歩道橋を架け、現在ある道路を拡幅するという。そのルート建設がコストが一番安上がりだからだそうだ。 建設工事による赤土の問題、今でも排水の悪い中学校周辺の排水の問題、終日続く車両の騒音、排ガスによる汚染、交通事故危険の増加などなど。大きく地域住民の生活に影響を未来にわたって与える大事なのに、事前に地域住民の声を聞かないこのやり方は何なんだろう。まず、この話を知らない地域住民がたくさんいる。久松中学校への防音措置として植樹帯を増やすというが、そんなことで防音できるのだろうか。信号を付けるだけで事故防止できるのだろうか。 久松集落北側の森が「聖域」だということを、私は今は亡き谷口光利さんの著書「竜宮の謎」で知った。毎朝、家の近くで綺麗な囀りを賑やかに聞かせてくれる小鳥たちはこの森からやって来るようだ。この森に沿って毎日８千台の車両が往来すれば、やがてこの森は枯死に向かうだろう。そんなことなどなどをとにかくもっと住民と議論すべきではないのだろうか。 ３案に入っていないが、トゥリバーの埋め立て地にやがてできる予定の臨海道路を利用すれば住民生活にはもっとも影響が少なく、距離も最短でよいのではないのかという質問へのお役所側の返答は全く説得力がなかった。「このルートを選択することで、どんなメリットがあるのか」という問いもあった。一部利権がからんでいないかと穿って考えさせられる向きもある。コストが低く済むという説明も試算の根拠があいまいであったが、経済性を優先して公共事業をするととんでもない犠牲が生まれていることをもっと歴史から学んでほしい。第２回目の説明会が去る９月１日に行われたが、「これで地域住民の同意を得たものとして、今後は用地の買収交渉に入る」と翌日の新聞にあったが、「地域住民」は同意するも何も、知らされていないのに。 近未来、赤瓦屋根の家並みと、雲湧くサバニの港と、夕陽に心鎮まるこの久松が、どんなに変貌するのかと悲しい想像に、ちょっと心が塞ぐ。 （宮古ペンクラブ会員・自由自在空間久松館主宰） |
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