ぺん遊ぺん楽
映画 マイ・フェア・レディに学ぶ
久貝 勝盛
(くがい かつもり)
<2005年09/14掲載>
私の大好きな映画の一つに知的で美しいオードリー・ヘプバーンの演ずるミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」があります。
伝道勉氏(沖縄タイムス朝刊、1999年12月5日付)の文章を引用して粗筋を見てみます。花売り娘イライザが街で偶然に出合った言語学者の大学教授とその友人の退役軍人大佐の二人から教育を受け、上流社会へ華々しくデビューするというシンデレラ物語です。
イライザは粗野で、言葉遣いもマナーも悪い貧しい花売り娘です。ちょっとしたきっかけで、その娘に興味をもった教授は友人の大佐と一緒になって彼女を教育します。教授は彼女のひどい下町のなまりや言葉遣いを強制的に徹底して直すような教育をしました。一方、マナーと教養の面を指導した大佐はイライザに何も無理強いせずに、いつも、イライザを立派なレディとして扱いました。
半年後、正しい発音とレディとしてのマナーと教養を身につけて社交界へデビューしたイライザは、ある日、教授にこう言いました。「レディと花売り娘の違いは、私がどう振る舞うかではなく、どう扱われるかです。私を花売り娘として扱う先生の前では私はいつも花売り娘としての振る舞いをします。しかし、私を一人のレディとして扱う大佐の前では私は高貴なレディになれます」と心情を打ち明けました。イライザを最初から最後まで一人前のレディとして扱った大佐の「期待」に応えてレディとして振る舞っているうちにいつしかイライザは本物のレディに大変身をしたのです。
「心から願い、励まし、期待することが相手に良い結果をもたらす」という現象をピグマリオン効果といいます。これはギリシャ伝説でキプロス島のピグマリオンという王様が象牙で作った女像に恋をし、妻にしたいという強い願望がかない、女像に命が宿り、二人はめでたく結婚したという、言い伝えからきています。大佐はこのピグマリオン効果を見事に引き出したのです。
学校教育でも「生徒を励まし、期待しているから頑張れよ」という心配り、気配りが大切であるという事は言うまでもありません。生徒も教師から目をかけられ、期待される中で、マイ・フェア・レディのイライザのように変身します。そういえば、先日平良市で講演していただきました著名な教育学者ドロシー・ロー・ノルト博士の著書「子どもが育つ魔法の言葉」の中に以下のような詩があったのを思い出します。
激励をうけた 子どもは
自信を
おぼえる
誉めてあげれば
子どもは
明るい子に
そだつ
可愛がられ
抱きしめられた
子どもは
世界中の愛情を
感じとることをおぼえる
(宮古ペンクラブ会員・平良市教育委員会教育長)