ぺん遊ぺん楽



0・1ミリ 海は広いな大きいな

梶原 健次
(かじわら けんじ)


<2005年03/23掲載>

 すごい量でした。去る3月10日に八重干瀬(やびじ)で行われたオニヒトデの一斉駆除では、3隻の船に分乗した17名が午前、午後の2回の駆除作業を行い、約1500匹を駆除しました。私もこの作業に同行させてもらい、海に潜って現況確認しながら、少々の作業も手伝いました。

 この日私が潜ったのはウルの西とイフの北東。15分ほど水面を泳ぐとおよそ50メートル四方の範囲を観察できるのですが、ウルでは15分間で52匹、イフでは175匹を確認しました。イフの浅瀬では隙間がないほどのオニヒトデ集団がいましたが、これは観察終了後に気づいたので、175の数字には反映していません。県のオニヒトデ会議では15分間の観察数が10匹以上だと大発生と見なしていますので、ウルもイフも超大発生とでもいうべきところでしょうか。
 ウルでのサンゴ食害率は10%程度で、まだサンゴの被度(海底に占めるサンゴの面積の割合)は60%残っていました。今後も徹底した駆除を続ければこの場所のサンゴは保全できるかもしれません。

 一方イフではひどい状態でした。私の知る限り、これまでに少なくとも14回の駆除が行われていて、2598匹が駆除されています。しかし一向に減る気配はなく、12月に入ってから爆発的に確認数が増えています。
 今回イフの北東に潜ったときには、既に6割程度のサンゴが食害を受けて、サンゴ被度は30%にまで落ち込んでいました(食害前の被度は70%程度と思われます)。今後も継続的な駆除が行われる予定ですが、オニヒトデの圧倒的な多さには気が遠くなる思いです。

 それにしてもオニヒトデをどれだけ捕獲すればサンゴを食害から守れるのでしょうか? オニヒトデ以外にサンゴへの悪要因がないとして、オニヒトデがサンゴを食べる量よりも、サンゴが成長する量の方が多いか、少なくとも均衡している必要があります。

 ある研究では50メートル四方のサンゴに対して、オニヒトデ2・5〜2・8匹で釣り合うと報告しています。すなわち物陰に隠れているものも含めて2匹以下にできなければ、サンゴは減り続けることになります。
 海はとても広いです。八重干瀬がこの新聞片面の面積だとすると、身長160センチの人間は0・1ミリほどです。しかも陸上に比べて水中での活動は物理的・生理的制約がはるかに厳しいです。とても残念ですが、現実的な対応としては狭い範囲であっても健全なサンゴ群集を残すための保全区を設定し、そこでの駆除を徹底するしかないようです。

 この考え方は県オニヒトデ会議での結論で、宮古でも関係者協議により、8カ所の保全区域を昨年8月に設定済みです。その1つがウルの西。これに加えて保全区に近づく可能性があるイフの大集団排除が今回の駆除目的でした。闇雲に捕りまくっていたわけではありません。どうも駆除した数ばかりに目がいきがちですが、何のための駆除であるかを考えると、健全なサンゴ群集をどれだけ残せるかを考える必要があります。

 なおオニヒトデのトゲには猛毒があります。まれですが呼吸困難に陥ることもありますので、むやみにオニヒトデを駆除しようとはしないで下さい。

  (宮古ペンクラブ会員・平良市栽培漁業センター)

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