ぺん遊ぺん楽


世果報(ゆがふ)の島

近角 敏通
(ちかずみ としみち)


<2005年03/16掲載>

 世果報とは、世界のしあわせである。この1カ月、宮古島の自立にとって、大切な事が成った。自立とは、地場産業の成り立ちと自然と平和を守る事である。

 ほぼ無農薬かぼちゃが家の畑でも3・4トン実った。日本有機農業規格認定の硫黄を3回、うどんこ病対策で使っただけの上等のかぼちゃがとれた。伊良部のグループ(下地幸清会長)の知恵と努力による。平良や城辺・下地の有機農業研究会や普及所とも連携をとっている。平良の店の女将が炊いたものはホクホクで本当においしかった。家で作ったムースやスープも美味で伊良部金曜市や平良市場でも出して味わっていただきたいと思っている。有機農業と加工製品の成り立ちこそ、宮古の地場産業の希望である。多くの作物でもさらなる研究と上等な加工所が必要である。力をあわせたい。

 2月14日、宮古美ぎ島グリーンツーリズム研究会の方たちが来られ、家の畑でアロエベラハーブ体験と町がつくった果樹園施設で草木染め体験をしていただいた。アロエベラ・ナスタチウム寿司やローズマリー・セージ・ひき肉をこねた串刺しソーセージの炭火焼等10品を畑でみんなで料理しながら味わった。畑でとった月桃は桃色に、レモングラスは渋い黄緑色に染まり、みんなが息をのんで自分の模様のハンカチーフをひらいた。島の自然素材を使った創作・体験を共に楽しんでつくっていきたい。

 2月20日は伊良部島ロマン海道マラソン大会があり、島内外の老若男女がそれぞれのペースで下地島を巡る美しい自然の中を走った。浜川町長は下地島の平和を宮古全体で守りたいと語られた。交流会や打ち上げのオトーリも盛り上がり、絆も深まった。

 2月25日から27日は、沖縄大学の加藤彰彦先生の呼びかけで全国から60名の方々が伊良部島に集まり、第9回にぎわい塾が行われた。「いのち、生まれ出づる時」というテーマで話し合いがもたれた。昼は、島の自然の聖地を12箇所程まわり、地球の根の原初的な自然の美しさに観じ入った。コンクリートで埋められた潮吹き岩には胸が塞がれたが、下って観た白鳥海岸のたて洞に息づく潮の生命感あふれる動きには皆で感嘆の声をあげた。通り池は「世界を見通す」龍眼(りゅうがん)であり、牧山の大和ブーは「世界を照らす」鏡岩といわれている。人が自然や命を尊び、自分の根元を大切にして平和に生きる事などが話しあわれた。私は島での暮らしの奥深さや人々のあたたかさを報告した。

 その翌日の28日、今の世界を照らし出すような出来事が起きた。自衛隊基地誘致問題の再燃である。「緊急に町議会で決議すれば、10億円の金が町におりる」等の談話が発表された。一方では、アメリカによる下地島空港軍事化要請の動きがある。中国にも緊張が走っているとの報道も入った。町議会は「誘致要請には信憑性(しんぴょうせい)なし」と冷静に受け止めた。まさに、「何によってこの島を起こしていくか」その事こそが問われている。一部報道には、合併反対派は自衛隊誘致・軍事化に「自立」の財源を求めているとあったが、3月5日、代表の川満昭吉氏に会合で直接伺った所、「軍事化には反対、国際貨物空港・リゾート開発等の平和利用を進めるべき」と明言された。確認できてよかった。軍事化は他国に脅威を与え、戦闘により市民・兵士を死傷に導くあり方であり、それにより、金銭的潤いを求めるあり方は、自立ではなく依存、相互自滅への道である。その事が、はっきりと照らし出された出来事であった。宮古6市町村で下地島軍事化反対の決議をした昨年11月の郡民大会に引き続き、平和を守る意思が確認できた。

 3月9日、キビ刈りの加勢に行き、おじいと話しながらキビの山を積んだ。深い深い、農業に対する愛情と平和への願いが伝わってきた。
 「しあわせ」は「しわ」と「あせ」から生まれるよと、にぎわい塾で教わった。皆で、心と力をあわせて、宮古島をおこし、日本・アジア・世界の人々と世果報を共にしたい。

   (宮古ペンクラブ会員・農業)

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