ぺん遊ぺん楽

 
鳥に学ぶ子育て


久貝 勝盛
(くがい かつもり)


<2005年02/12掲載>
 おにんぎょは
 ひゃっかてんに
 いくらでもうっているけど
 わたしはどこにもうっていない
 わたしはたったひとりだけ
 だけどかあちゃんは
 わたしをしかる

 この詩は1997年度NHK人間大学7月〜9月号で紹介された小学校1年生、山口雅代さんの作品です。この詩を読むと子どもの素直な気持ちがじかに伝わり思わず笑みがこぼれます。同時に、まるで自分自身の子どもの頃が再現されているようで何となく身につまされる思いがします。皆さんもきっとそうだと思います。今回は酉年に因んで鳥に学ぶ子育てについて考えてみたい。

 宮古では特に秋の風物詩で知られるサシバという渡り鳥がいる。東南アジアの越冬地から繁殖地の日本列島に戻ったサシバは5月の中頃から6月の初めにかけて恋をし、巣作りをし、2〜4個の卵を産む。ふかしたヒナは約2カ月かかって若鳥になる。このサシバの子育ては大変に興味深い。私たち人間にも大いに参考になる。

 親鳥は巣立つとすぐに厳しい自然界での身の処し方を学習させる。例えば親鳥が「我が子は、もうそろそろ自立できるな」と判断すると餌を持ってきても、すぐには子どもたちの待つ巣には戻らない。10〜15メートル程離れた木の枝で餌を見せびらかしながらじっとしている。お腹をすかしている子どもたちはどうにかして親鳥から餌を貰おうとする。羽を大きく広げバタバタさせたり飛び跳ねたりしながら餌をねだる。それでも親鳥は知らぬ顔である。子どもと親との我慢比べである。我慢しきれなくなった子どもたちは何度も何度も失敗をくり返しながら、恐る恐る親鳥の所まで飛ぶ。こういう学習を繰り返すうちに、最初あれ程こわごわと不器用に飛んでいたサシバは大変身をして大空をスイスイ飛ぶようになる。今度は、外敵から身を守る方法、餌の見つけ方、狩りの仕方、上昇気流の見つけ方、渡りの仕方等を学ばせる。親鳥は子どもたちの発達段階に合わせて生き残る術をしっかりと教育しているのである。この大事な子育て期間に親が必死になって学習させないと子どもたちは厳しい自然界では生きていけない。

 人間社会も同じである。高校までは基礎固めの一番大切な時期である。それこそ親や教師がマナーも含めしっかりと自律教育をしなければならない。子育てはやり直しのきかない一度っきりの真剣勝負だからである。
 上記の作者もきっと、自分が親になったとき、どうしてかあちゃんが叱ったのか分かるようになるはずである。

  (宮古ペンクラブ会員・平良市教育委員会教育長)
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