ぺん遊ぺん楽


宮古上布で スナカギ・ウエアを

久貝 徳三(くがい とくぞう)


<2004年12/11掲載>
 宮古上布に関して何を知っているということでもないが、復帰当時、年間1000反以上も織られていた宮古上布が、現在は20反まで低下していると聞けば、さびしい思いをするのは私一人ではあるまい。

 人頭税の時代には、平民婦女の鮮血をしぼりとり、王府に貢納布として納めさせられた上布である。人頭税から解放されると、宮古の花形産業として、年間1万8000反も織られていたと記録にある。そして、昭和53年4月には、その精巧さが認められ重要文化財として、国から指定された。
 これによって生産にはずみがつくかと思っていたが、時代の波はいかんともしがたく、その後の生産量は、前に書いたとおりで、衰退の一途をたどっている。

 その理由は何か。織紡行程があまりにも煩雑(はんざつ)で、織り上げるのに手間ひまがかかり、過酷な忍耐と高度な技術を要する。そのため価格が高い。さらに、色合いや図柄が、現代の被服素材としてふさわしくなく、利用価値が低下した。など、幾つかの理由はあろう。

 しかし、重要文化財として国に指定にされるほどの工芸品である。そのまますたれさせるにはもったいないし、これまで400年も守り続けてきた、先人たちに申し訳がたたない。何とか再興の道は図れないものか。

 この頃、県内にはカリユシ・ウエアと銘打って、軽装が普通になってきた。暑い沖縄のことである。見ていて涼しそうだし、沖縄の気候に適していると思う。
 このカリユシ・ウエア、ハワイのアロハシャツと色柄がよく似ているため、どのように違うのかと尋ねてみた。答えは、「沖縄でつくったから、カリユシ・ウエアなんだ」と説明された。

 そこで考えた。宮古上布を素材としてこれを縫製してみてはどうか。と。しかし、これもカリユシ・ウエアでは、他からの借り物のようで、落ち着かない。ならばいっそのこと、宮古らしく「スナカギ・ウエア」と名付けてはどうか。スナカギとは、品行方正な人の事である。ウエアとはあちらの言葉で、被服のこと。
 ねらいは、宮古上布の生産拡大と活用促進である。そのためにより多くの人が、この「スナカギ・ウエア」を、身につけるようにするとよい。
 これを身につけた人が、文字通りスナカギ者、気心のやさしい者になってくれるとなおよい。
 これまで宮古上布を素材としては、ネクタイや財布などの小物が、つくられていると聞いた。しかし、それだけではいくらの需要も期待出来まい。

 ところで、宮古特産品「スナカギ・ウエア」とは。宮古群島産の宮古上布を素材として、縫製された被服のことである。似たような図柄の素材で、どこかの国で生産された素材で縫製されたものは、「スナカギ・ウエア」ではない。最近はインドで縫製されたカリユシ・ウエアがあると聞く。

 さて、このスナカギ・ウエア、出来るだけ多くの人に着けてもらいたいが、問題は価格である。出回っているカリユシ・ウエアと比較して、べらぼうな価格では、手にしてくれないだろう。
 また、宮古上布とは名ばかりで、粗雑な品質、見栄えのしない色柄では敬遠される。そのため、生産に当たる者はそれなりの研究と努力、そして宮古の皆さん方の理解と協力が必要である。

 これまで培ってきた宮古上布の生産技術、その伝統はこれからも、是非守っていってもらいたい。

   (宮古ペンクラブ会員・団体役員)

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