ぺん遊ぺん楽


孫との会話より


下地 昭五郎
(しもじ しょうごろう)


<2004年09/25掲載>
 ×月×日 孫の学習発表会があった。2人の孫は朝から欣喜雀躍(きんきじゃくやく)。いや落ち着かないのは祖父と祖母かな。小さな子供たちの演技はいつ観ても無条件に楽しい。真剣に演技する子。客席にママやパパを探すのに一生懸命な子。オーバーな演技で自己主張に懸命な子。グループから外れて自分勝手に表現する子。実に多種多様だ。爆笑と拍手が会場を席巻。

 発表会終了後、孫たちを囲んで昼食を楽しもうとレストランへ向かった。何処も思いは一緒でレストランは満員。好物の宮古ソバをオーダーして発表会の話しに花が咲いた。2人の孫はそれぞれ自分の演技に話題を独占しようと懸命だ。ややあって、今日、おいしいおソバが食べられるのもコウキ(おにいちゃん)のおかげだな、というと。すかさず、「かみさまのおかげじゃな〜い」と言う孫の返事に意表を突かれ我脱帽。「門前の小僧〜」というが、教会での毎朝夕の礼拝の習慣の意味は大きい。

 ×月×日 朝ご飯をすませ、廊下の椅子に孫(おにいちゃんの方)とおしゃべりを始めた。今朝はやや風が強く吹いていた。風に揺れている木々の枝をじっと見ていた孫から、「ね〜しょうごろうおじい、どうして風は見えないの」といきなり質問されて一瞬狼狽(ろうばい)した。「そうだね〜目には見えないちっちゃなちっちゃな粒でできているからかな」と答えると、「ふ〜ん、そっか…」と言って、またじっと木々の枝や葉が揺れるのを見ていた。数日後、同じような状況があって、今度は、私が「どうして風は見えないのかな〜」と独り言をいった。すると、側で玩具であそんでいた孫が「ちっちゃな粒でできているからじゃな〜い」と返事をくれた。ぎくっとした。まだ記憶にあったんだ、と私は数日前を思い出した。そして、ちいさな子供の質問への説明の重要性をかみしめていた。

 ×月×日 訳あって、1週間、アメリカはバージニア出身の交換留学生(高校)のホームステイを引き受けることになった。久しぶりのホストファミリー体験に妻も不安顔。日本語もうまいから心配はいらないよ、と妻の理解を求めた。誰よりも喜んだのは孫のコウキくんだ。弟のリョウガくんもおにいちゃんに負けじとティムの側をはなれない。ティムは2人の孫のパワーに圧倒されて目を白黒させ狼狽気味。

 さて、ティム君のホームステイ初日の夜、我が家の夕食時に久しぶりに英語のネイティブスピーカーを迎え入れた。孫たちは落ち着かない。自己紹介を終え、食事を楽しんだ。食後の団欒が始まり、孫たちはティム君の側を離れない。クイズゲームを楽しむことになり、孫がティム君に、あたまは英語でなんといいますかと質問すると、ティム君が「ヘッドゥ」と答えると、孫がピンポーン、肩は?「ショルダー」と返事するティムにまたピンポーン、私はあまりにもおかしくなって、ティムに、ピンポーンの意味分かるのと訊くと、わかるよとのこと。ティムの配慮が伝わった。1週間、ティムは煩がらずに孫を可愛がってくれた。はてこの1週間孫の人生にどんな意味をもつのだろうか。ティムが記念にくれたキャップを年頃になるまで大切にしてほしい。

 ティムは将来エレクトロニクス・エンジニアになると言って宮古空港を後にした。先日、そのティム君から日本語の手紙が届いた。下地先生、お世話になってありがとうございました。いっしょに住んでいたのはとてもたのしかったです。いらぶ島と池間島を私に見せてありがとうございました。本当におもしろかったです。まごさんたちとあそんだのもたのしかったですね。その2人をわすれません! いつか宮古にもう1回行けば、ぜひうかがいますよ! ティムの真心のこもった文面に草の根交流の実を観た。将来の孫たちへこの真実を伝えたい。

  (宮古ペンクラブ会員)

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