ぺん遊ぺん楽


オニヒトデとお金

サンゴ礁を守るのはお金ではなく
熱意と支援


梶原 健次
(かじわら けんじ)


<2004年07/21掲載>
 今年2月以降、宮古周辺の海でもオニヒトデ大発生の初期段階にあることが確認されました。大発生したオニヒトデを広いサンゴ礁全域から駆除し尽くすことは現実的ではありません。間引きにしかならない全域駆除は大発生を慢性化させるだけです。心情的には苦しいのですが、ほとんどの海域では駆除せずにサンゴが激減してオニヒトデが自滅するのを待ち、重要保全区域を決めて駆除を徹底し、少しでも健全なサンゴ群集を残す方が現実的です。

 オニヒトデ大発生への備えとして昨年8月に宮古圏域海洋危険生物対策協議会オニヒトデ部会を組織し、重要保全区域の選定作業を進めていましたが、その途中で大発生が現実となりました。これまで海人やダイバーらの自主的な駆除活動で、私が把握している範囲だけでも、29回の出艇で既に3000匹近くが駆除されています。

 本稿が掲載される頃には決定されていると思いますが、執筆時点では、重要保全区域は宮古周辺で八カ所挙げられていて、サンゴ礁保全のためオニヒトデ駆除を保全区に集中して実施することで調整が進められています。これまで「駆除事業」と異なるのは、海人やダイバーら潜水のプロたちによる自主的なボランティアを基盤とする「駆除活動支援事業」である点です。

 現在県内のある地域で行われている駆除事業は1回20万円の経費がかかります。当然短期集中型となります。これでは事業終了後周辺から保全区域に移動してくるオニヒトデが防げません。1年を通じた駆除事業は財政的理由から不可能です。しかも大発生は5〜10年に及ぶ可能性があります。長期間安定した経費確保が不可欠です。そこで宮古では、海人やダイバーらの自主的な駆除活動に対して最低限の駆除経費(主に潜水タンクの空気充填代と燃料費)のみの支援を計画しています。これだと駆除事業で1回20万円かかるものが、支援事業だと1回2万円程度ですみます。打ち上げ花火的な事業よりも効果的ではないかと考えています。あとはサンゴ礁を守ろうとする、海で生活する人たちの熱意、それを支える地域の関心・支援が頼りです。

 去る7月4日、マティダ市民劇場で琉球國祭り太鼓宮古支部の小中学生たちが主役の公演がありました。テーマは「琉宮の詩」。海を守るために何かできないかとの思いが込められていて、駆除活動への寄付として公演収益金の一部から10万円のほか、劇場フロアで募金活動までしていただきました。行政が公共事業として海を守ろうとしても先立つものはなく、実質的に海に携わる人たちの自主活動を支援するので精一杯です。その自主活動を基盤としたサンゴ礁保全に理解して下さった多くの関係者の皆様に深く感謝致します。大変ありがとうございました。

  (宮古ペンクラブ会員・平良市栽培漁業センター)

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