ぺん遊ぺん楽


落 下 傘

近角 敏通
(ちかずみ としみち)


<2004年07/16掲載>
 昨年末に観たテレビ番組「映像の世紀」の一場面が目に焼きついている。ベトナム戦争で、フランスの若い兵士の群れが、ベトナムの泥沼に落下していく姿だ。戦闘機で背中を押したのは国の政策だ。落ちていくしかない若者たちの姿が痛ましかった。降り立った地は激戦地となる。フランスは敗退しこれを機に撤退する。アメリカがとってかわるが、文字通り、泥沼の長期激戦の末、敗退、ベトナムは独立を勝ち取る。ベトナム人を攻める、殺し合いをする。どれだけの意味があったのかを問いたい。

 最近、手紙により、中国戦線で戦死した伯父が、いかに故郷に帰ることを望んでいたかを知った。中国人を攻める、殺し合いをする。どれだけの意味があったのかを問いたい。

 今、イラク人を攻めるアメリカ兵士の心の荒廃を観るにつけ、加害者も被害者。それも、国の命令に従うしかない、自分を失わされた被害者なのだと思う。イラクでの日本人人質は、自己責任を問われたが、 3人の若者は、イラクの子どもを助ける、劣化ウラン弾の被害に抗議し調査する、戦争の真実を取材する等の主体的な活動をしていた。いずれも命をかけて戦争に苦しむイラク人を支援していた、誇るべき人たちだ。そして、その活動ゆえ、彼らは解放された。何故、彼らを非難するのか。口を封じるのか。責任を問われるべきは、殺し合いをしかけ、 1万名に余るイラク人と800名に余るアメリカ人を死に追いやっている国そのもの、それを支持する国そのものではないか。日本!人質事件の時、ファルージャでは、米兵によるイラク市民大虐殺が行なわれていた。
 テレビ番組「米兵たちのイラク戦争」を観た。駆け足行進での米兵のかけ声の日本語訳のテロップを観て驚いた。「進め進め進んでいけ!僕に手紙がきた!戦争に行くか?それとも監獄行きか?進め進め進んでいけ!武器をよこせ!殺し屋になってやる!斬りつけてやる!撃ってやる!全力でやる!何だってやる!アメリカのために!進め進め進んでいけ!」若者を追いたてて、イラク人を攻める、殺し合いをする。その正体を問いたい。殺し合いを許す国には心の荒廃と悲しみが浸透しているように思えてならない。イラク戦争開戦 1周年宮古島コンサートでこの米兵のかけ声をブルース調で歌った。1番目はそのまま、2番目は言葉毎に「いやだ!」の叫びを入れて、「…平和に暮らしたい」と結んだ。

 平和憲法を論議する前提として、実際の戦争を観なければいけない。テレビ番組で観たかつての軍国主義・日露戦争の英雄・乃木将軍の目は、深い憂いに満ちていた。自ら指揮した戦闘で累々たる死者を出した事を嘆いていたという。第二次世界大戦のA級戦犯東条英機は極東裁判において「天皇陛下の命令に従っただけだ」と証言、自己責任を否定した。いずれも、戦争指導者は責任を負えない、負わないという事だ。小泉さん然りだろう。市民は自らと子供たちを守るために、過去及び現在の無謀な戦争とそれにつながる軍事化への道をみきわめ、許してはならない。平和憲法は世界の大切な宝だ。宮古にも下地島空港を軍事化しないと国と県が約束した屋良覚書がある。下地島空港を軍事化しない事。今回の県議選の当選者、奥平氏は公約し、砂川氏も直接伺った所、「軍事化はない、民活をすすめる」と明言された。戦争反対を言いきることは大切な事だ。子どもを自らを人を戦場に突き落としてはならない。

 (宮古ペンクラブ会員・農業)

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