ぺん遊ぺん楽


「私の知らなかった宮古」


仲原 かおる(なかはら かおる)


<2004年05/14掲載>
  一昨年の正月休みに帰郷した際、スキューバダイビングの免許を取った。宮古島の一番の売りである海の素晴らしさをもっと知りたかったし、知らない世界を覗いて見たかったから。

 陸上での一連の講習を終え、生まれて初めてスキューバダイビングをした。水深8メートルの海の底で、私は敬虔な気持ちになった。潜る前の「ちょっと潜って魚に餌でもあげてみっか」などと言う、高飛車な考えはぶっ飛んだ。頭上をぎらぎらと青光りしながら過ぎて行く小魚の大群に恐れ慄き、目の前を横切るクブスミャの形や大きさに圧倒されながら、「魚さん失礼します。ちょっとお邪魔させていただきます。しばらくしたら帰りますんで、それまで、居させてください」と、頭の中で繰り返した。インストラクターさんの後を必死になって追いながら、「なんてちっぽけなあたし」という気分になった。

 私のお父さんを含めて漁業に従事してきた人たちは皆、毎日この大きな海と格闘していたんだーと、1人海の底で感動すると同時に、海に遊びに来ている人は、海で生計を立てている人の邪魔をしてはいけないと感じた。

 1本目のダイブを終え海から上がると、インストラクターさんが言った。「10年前の宮古の海に潜ってみたい。今でもまだ綺麗だけど、10年前はもっと、綺麗だったらしい。今、潜っておかないと、10年後、珊瑚はもっと白色化しているかもしれないですね」そうつぶやかれ、私は黙ってしまった。

 知らなかったさ、ゴメンね。何が悪かったんだろうね。どうすれば良いんだろうね。でも、潜ってみて、「海の中の環境がもっと良くなるように努力したい!」と思ったことは確かだよ。潜る前はそんな事考えた事無かった。

 私みたいに島で育った人は、島の良さに慣れすぎているのかもしれない。「あがえー、海の底は上から見えているのに、何をわざわざ重たい機材を背負って、高いお金払って、口に管をくわえてダイビングする訳? バカじゃないか!?」という意見が地元では一般的だろう。でも、地元の人にこそ、1度潜ってみて欲しい。

 私のインストラクターの先生は北海道や青森の人たちだった。「宮古島出身でインストラクターって人はいないのかな?」と考えた。こういう事が職業として成り立つと言う考えが地元の人にはあまり無いのかもしれない。私も考えた事なかったもの。ちょっと残念な気もした。どうせ誰かが潜るなら、市営スキューバセンターを作って地元で講師育成でもしたらどうか。そしたら、Uターン、Iターン就職も考えるってもんだ。

 島育ちなのにまともに泳げもしないような私に、利益でてるのかな? というような破格で丁寧にご指導下さった海塾インストラクターの皆様に感謝申し上げます。
 それと、私がスキューバの免許を取る事に反対した父へ。おとう! おとうの海に潜ったよ。深くて、大きくて、恐かったけど、とっても綺麗だった。内緒で免許取った事いつまでも秘密にしておくのもなんだから、ここでバラしちゃいます。だって、今度はいつゆっくりスキューバの免許取れるくらいの休み貰えるか分らないからさ。今度夏に帰ったら、おとうの船で、みんな島に連れて行ってね。

 (宮古ペンクラブ会員・TV番組制作会社勤務)

top.gif (811 バイト)