ぺん遊ぺん楽


迫るオニヒトデ大発生

去の大発生に学ぶ保全海域の選定

梶原 健次(かじわら けんじ)



<2004年02/25掲載>
 どうやら宮古でもオニヒトデの大発生が始まりつつあるようです。来間や下地島で局所的に多くのオニヒトデが確認され、一部は既に自主駆除がされています。今後のオニヒトデ発生状況がどう推移するのか根拠ある予測は全くできませんが、来間と下地の局所にとどまるとは考えないのが自然でしょう。
 1970〜80年代を中心に猛威を振るったオニヒトデ大発生では、約14年にわたって駆除事業が展開されたそうです。ある資料によると、その間に投入された事業費は総額6億円に達し、約1300万匹が駆除されました。しかし膨大な駆除実績とは裏腹にほとんどの海域でサンゴは食害し尽くされてしまいました。
 せっかくの努力にもかかわらずサンゴが保全できなかった原因はいくつか指摘されていますが、その1つに対象海域を限定しなかったことが挙げられています。駆除努力が広い海域に分散してしまい、間引き効果となり大発生を長期化させたとすら言われています。
 オニヒトデの駆除は潜水して1匹ずつサンゴのすき間から取り上げる手間のかかるものです。船の上から機械や大きな網を使って大漁、というわけにはいきません。サンゴ礁の広さに対して潜水作業で対応できる範囲はごく限られているのです。潜水経験のない人でも、泳いで宮古を1周することができるかを想像してもらえれば、海に対する人の小ささがよく分かるかと思います。
 そこで大発生したときに駆除努力を集中させるための保全海域を、あらかじめ選定しておく必要があります。場所はどこでも良いわけではありません。サンゴが健全で、学術上の価値、観光上の価値、漁業資源との関連が求められます。保全海域以外の場所は、いわば見殺しにせざるを得ないのですが、大発生が沈静化したのちに保全海域からサンゴの卵が供給されることも重要です。また継続的な駆除作業ができるよう、頻繁に通える場所であることも必須条件でしょう。
 宮古では宮古圏域海洋危険生物対策協議会オニヒトデ部会(事務局は宮古支庁)で候補地が10カ所挙げられていて、今月中旬には県自然保護課が招集したサンゴ礁研究者の調査団も現場視察しています。現在は各候補地を評価するための調査が同課により進められているところで、おそらく4月頃には選定できるでしょう。
 オニヒトデが大発生状態になってから闇雲な駆除をすると間引き効果になってしまう危険性があるので、その時には保全海域以外での駆除は慎重にすべきで組織的対応が必要です。しかしそれ以前の予兆的状態、すなわち現時点であれば大発生を未然に防ぐ、遅らせる、規模を緩和するような効果があるでしょう。
 オニヒトデがどのくらいまで増えたら大発生と言えるのかは明確な基準はありませんが、潜らずに表層遊泳で確認できる数が50メートル四方当たり10匹というのが1つの判断ラインになるでしょうか。いずれにしても保全海域選定と平行して、作業人員と経費の確保が大きな課題です。この点については別の機会に紹介したいと思います。

   (宮古ペンクラブ会員・平良市栽培漁業センター)
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