ぺん遊ぺん楽


育英制度の積極活用を

仲地 清成(きよしげ)



<2004年01/16掲載>
 大学や専門学校等で学ぶ能力と意欲がありながら家庭の経済的な理由で進学出来ないことほど無念なことはない。そのことはまた社会にとっても大きな損失となる。そのような事情のある場合、国の育英事業を行っている日本育英会(来年度からは学生支援機構)の貸与奨学制度を活用することを勧めたい。
 申し込みは春季と秋季、在籍する高等学校を通して行われる。奨学生としての選考は人物・健康・学力・家計について基準に照らして行われる。採用されると、進学した場合、最高月額10万円の奨学金(貸与)を卒業まで受けることができる。
 全国で、大学生の約2割、大学院生の4割がこの制度を活用している。本年度は約5800億円の費用をかけて、86万人の学生に奨学金が支給されている。来年度、本県の場合、3000人の申し込みがあり、2300人余の採用予定者が決まった。そのうち宮古は5高校合わせて104人である。平成13年は43人であったから、3年で2倍以上に増えたことになり、制度に対する理解の深まりと各学校の積極的な取り組みがうかがえる。しかし、宮古の経済力を考慮に入れると、なお一層の積極的活用が望まれる。
 ところで、奨学生選考の資料を得る目的で面接が実施される。人数が多いので幾つかのグループに分けて集団で行う。「動物が好き、獣医になりたい」、「珠算は5段、公認会計士を目指したい」、「アルバイトをして家計を助けている。経済的には厳しいが、夢は実現したい」、「部活動での友情は何ものにも代えがたい」等、彼らは高校生活で努力した点や学んだこと、希望進路とその理由、今関心を寄せていること等について、明るく率直に、そして真剣に語っていた。
 奨学生採用候補者が決まると、各学校で通知書の交付式が行われる。校長と育英会の奨学相談員の講話につづいて、1つの学校では生徒代表が次のような挨拶をした「私たちは、今、高校卒業後の新しい生活の期待で胸を膨らませながら、この学校で過ごす残りの高校生活を充実させようと頑張っています。私たちは将来の夢をかなえるために、また夢を見つけるために大学や専門学校に進学します。進学後は、勉強に励み、卒業後は責任をもって奨学金を返還することを誓います」。
 5兆5000億円余の巨費を投じて、673万人を支援してきた日本育英会はこの3月で60年の歴史を閉じる。あとは、学生支援機構にすべての業務は引き継がれる。
 この数年、日本育英会沖縄県支部の奨学相談員をつとめているが、向学心溢れる高校生と関わることは実に楽しいことである。
 奨学生たちが奨学制度を人生設計の中にきちんと位置づけ、勉学に励み、将来よき社会人として大成するよう期待したい。
 
 (宮古ペンクラブ会員・元高校長)

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