200平成19  316 金曜日

宮古島市 連結赤字比率32.7%/05年度全会計
  県内市町村で突出/財政再建団体に危険信号

 【那覇支局】宮古島市、財政再建団体に危険信号−。県企画部市町村課がこのほどまとめた県内市町村の二〇〇五年度普通会計と公営企業(下水道会計など)などの特別会計すべてを含めた連結実質収支の赤字比率によると、宮古島市は県内市町村の中で唯一、赤字比率が三〇%を超え三二・七%となり、厳しい財政状況が改めて示された。今国会に提案されている国の地方公共団体の財政健全化に関する法律案で同赤字比率も「健全化判断比率」の一つとして盛り込まれている。同案が通過すれば、総務省令で示される同赤字比率に対する再建団体指定判断要件の基準値が注目される。

 県内市町村のうち、連結実質収支で赤字となったのは宮古島市を含め六市町村。このうち、赤字比率一〇%以下は石垣市(二・九%)、うるま市(〇・六%)、渡嘉敷村(六・〇%)、伊是名村(六・二%)。一〇%以上は本部町の一四・九%で、宮古島市の三二・七%は群を抜いて高い数値となっている。
 宮古島市の連結実質収支の赤字額は、五十三億九千六百三十九万一千円。その内容は、県全体の九三%の赤字を占める地方公営企業会計における赤字で、その中でも地域開発事業(臨海)が三十億五千八百八十四万一千円と大きい。これは売却が進まないトゥリバー地区に伴うもので、そのほかにも国民健康保険事業で十二億四百四十六万一千円なども赤字額を膨らませている。
 今回、県が示した連結実質赤字比率は、今国会に提出された「自治体の財政健全化法案」で、健全化判断比率の新たな財政指標の一つとして示されたもので県が試算したのも今回が初めて。今後「将来負担比率」(公営企業、第三セクターなどを含めた普通会計の実質的負債の標準財政規模に対する比率)の試算も新年度以降に予定されている。
 今回の試算で宮古島市の財政状況は極めて厳しい状況であることが改めて示された。今国会に提出された財政健全化の法案が成立すれば、地方自治体の新たな財政健全化判断比率が設定されることとなり成立後、総務省令で示される。その基準値が宮古島市の赤字比率よりも下回ると一気に財政再建団体が現実味を帯びてくることとなる。
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新年度予算も減額公算/市議会総務財政委
  
報酬、委託料支出を指摘

07年度一般会計予算案を審議した市議会総務財政委=15日、宮古島市役所平良庁舎
07年度一般会計予算案を審議した市議会総務財政委=15日、宮古島市役所平良庁舎

 開会中の宮古島市議会(友利恵一議長)三月定例会は十五日、各常任委員会を開いた。前日に引き続き二〇〇七年度一般会計予算案を審議した総務財政委員会(前川尚誼委員長)は、嘱託員報酬や委託料の支出に疑問を呈し、歳出・入の見直しを当局に要求した。〇六年度補正予算と同様、新年度予算も減額修正の公算が大きくなった。経済工務委員会(池間豊委員長)は新年度予算を賛成多数で可決した。総務財政委は、きょう十六日も新年度予算と〇六年度予算を審議する。
 総務財政委が減額を求めた予算は嘱託員報酬と法定外目的税導入に絡む委託料。計約四百六十万円の予算だが、いずれも正職員で対応できると指摘した。
 合併後、千人余の職員を抱える現状を示し「合併して優秀な職員がこれだけいる中で、なぜ自分たちで仕事をせず、外に任せようとするのか」などと詰め寄った。
 市は〇七年度、法定外目的税導入事業で三百九万五千円を計上した。このうち委託料は二百四十七万六千円。同税の導入に当たり、法的な対応を含めて「効率的」(企画調整課)な導入を目指して支出を決めた。
 この対応を委員らは疑問視。法定外目的税を導入している他自治体を参考にするなどの対応を取れば、市職員でも同税を導入できるとし、委託料を別の支出項目に振り替えるよう求めた。
 そのほか、市が計画する事業の費用対効果を強調する委員らは、歳入の見直しも必要だとしてこの日の可否を見送り。減額修正を軸に、きょう十六日の委員会で再度審議することを確認した。
 一方、経済工務委員会は、新年度一般会計予算案を賛成多数で可決。棚原芳樹委員が退席して採決した結果、与野党同数となったが、池間委員長の賛成により可決された。
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ごみ有料化10月開始困難/市議会文教厚生委
  市民への説明不十分
全会一致で継続審議に/有料化条例案

家庭ごみ有料化の条例案について、継続審議を決めた文教厚生委員会=15日、宮古島市役所平良庁舎
家庭ごみ有料化の条例案について、継続審議を決めた文教厚生委員会=15日、宮古島市役所平良庁舎

 宮古島市議会文教厚生委員会(佐久本洋介委員長)は十五日、当局が三月定例会に上程している「廃棄物の減量化の推進および適正処理に関する条例案」(家庭ごみ有料化条例案)について審議した。各委員とも「市民の声を十分に聞く必要がある」との考えから、全会一致で継続審議とした。条例案がこのまま本会議で採決されなければ、市当局の目指す今年十月一日施行のスケジュールに影響が出そうだ。

 委員からは「有料化による歳入の使途は」「財政問題がごみ問題よりも先に来ていることは問題」「環境行政に関するアンケートが条例案を後追いしている」などの意見が相次いで出された。採決でも「もう少し市民の意見を聞く時間が必要」などの声が上がり、継続審議が決まった。
 亀浜玲子委員は「市民の負担増への理解を得るには、その目的をはっきりさせるべき」、上地博通委員は「有料化で集まった歳入の使い道の問題で、条例では決められないのか」と質問。
 担当の環境保全課は、使途として▽不法投棄対策(廃棄物撤去)▽資源リサイクル促進事業▽環境ボランティア活動支援▽クリーン指導員の設置・育成▽し尿・浄化槽汚泥の公共下水道への投入事業−などを列挙。「規則に明記し、市長決裁を待っている段階」と答えた。
 条例案第五条の「市が指定する事業者以外の者が収集・運搬してはならない」の規定について、環境保全課は「市の委託業者が回収する前にアルミ缶が抜き取られている。アルミの価格が高騰して市の収集実績が減り、その売却で市が得られる歳入も減少している」と理由を説明した。
 豊見山恵栄委員、砂川明寛委員らは「営業目的でアルミ缶を集めている業者などは規制も必要だが、お年寄りで生計を立てている人もいる。線引きが難しいのでは」などと指摘。
 環境保全課は「お年寄りや学校のボランティアなどは対象外としたい。トラックなどで山積みに集めているような人を対象とする」と説明した。
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「工期」で認識にずれ/平良港防波堤工事
  
伊漁協と港湾事務所が協議

防波堤工事をめぐり漁協側(左)と工事事務所側の意見は平行線のままだった=15日、伊良部漁協
防波堤工事をめぐり漁協側(左)と工事事務所側の意見は平行線のままだった=15日、伊良部漁協

 平良港下崎防波堤工事に関し、伊良部漁業協同組合と平良港湾工事事務所は十五日午後、同組合で話し合いを行った。漁協側は「工事の期間は約十年だった。二十年以上は認められない」と主張。一方、工事事務所側は「工期は完成までと認識している」との考えを示した。結局、それぞれの主張は平行線をたどり、話し合いは物別れとなった。
 同漁協が一九八五年六月二十九日に開催した通常総会での議事録によると、平良市港湾課長(当時)が「工事は(昭和)六十一年から始まって約十年と計画しております」などと明記されている。
 この年の七月三日、当時の伊良部町、平良市、池間の三漁協は共同漁業権の一部消失に伴う損失補償金として七億円を妥結した。今年は妥結した八五年から二十二年目に当たる。
 工事事務所側は「きょうは、組合長に工事の説明ができた。しかし、理事会の場で説明するとは知らなかった」と困惑した様子。漁協側の理事の一人は「工事事務所側が理事会の中で説明すると思ってきた」と語るなど、双方の行き違いも見られた。
 漁協側が「昭和六十一年の通常総会で、工事は約十年というから決議した。総会で決議したから、工事を延期する場合は、再び総会に諮らなければならない」と主張した。
 これに対し工事事務所側は「工期は完成まで。当時の漁業補償契約書と漁場汚染防止協定書にも工期は明記されていない」と理解を求めた。
 漁協側が「漁業補償契約書には、疑義が生じた時は、協議して解決を図ることになっている。工期延期は疑義ではないか」と質問したことに対し、工事事務所側は「こちらに落ち度はない」と突っぱねた。
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ソバ栽培で地下水保全/宮農高環境班
 水大賞委員らを前に発表

日本水大賞委員らが、環境班の発表に耳を傾けた=15日、宮古農林高校
日本水大賞委員らが、環境班の発表に耳を傾けた=15日、宮古農林高校

 日本水大賞委員会と日本ストックホルム青少年水大賞委員会の委員らが十五日、二〇〇四年にアジア初となるストックホルム青少年水大賞(通称・水のノーベル賞)を受賞した宮古農林高校環境班を訪ねた。生徒らは日本ソバ栽培による地下水保全の取り組みについて発表。「サトウキビ収穫後、土壌に残る硝酸態窒素をソバが吸収することで、地下水への流入を防げる。ソバをそのまま緑肥としてすき込めば地力も上がる」と力を込めた。
 十四日から来島しているのは、日本水大賞委員会の藤吉洋一郎委員、同大賞審査部会の宮尾博一委員、日本ストックホルム青少年水大賞審査部会の清水芳久委員ら。環境班が〇五年から取り組んでいるソバ栽培に関する説明に、熱心に聞き入った。
 発表者の砂川勝莉華さん(二年)は、サトウキビ栽培で使用された化学肥料の養分(硝酸態窒素)が土壌中に残り、キビ収穫後の裸地に大雨が降るなどして硝酸態窒素が流入して汚染の原因となっていると指摘。二、三カ月で収穫できるソバに着目し、裸地で栽培したところ、硝酸態窒素を吸収する効果があったと述べた。課題に▽宮古に適したソバの品種の育成▽地域の農家へのソバ栽培の普及−を挙げた。
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国内初の博士課程修了/獣医師の兼島孝さん 小動物感染症
 
豊見城市で動物病院開院へ

国内で初めて小動物感染症の獣医学博士課程を修了した兼島孝さん
国内で初めて小動物感染症の獣医学博士課程を修了した兼島孝さん

 【那覇支局】沖縄宮古郷友連合会の兼島恵孝会長の長男で、埼玉県にある「みずほ台動物病院」の院長を務める兼島孝さん(43)がこのほど、日本で初めてとなる小動物感染症の獣医学博士課程を修了。さらに、五月には豊見城市に大規模な動物病院を開院する。兼島さんは「幼稚園まで宮古で過ごし、ふるさと沖縄に対する思いは昔から強かった。優秀なスタッフとともに高度医療を提供したい」と話した。五月に開院する病院は、動物用のCTスキャン、エコーなども設置。スタッフ五人でスタートし、兼島さんも月、火曜日は沖縄。木、金、土曜日は埼玉で診療する予定。
 沖縄市で生まれた孝さんは父恵孝さんが琉球銀行の行員時代に転勤が多く、幼稚園卒園時まで宮古島で過ごした。中学二年から東京に移り住み、高校、大学に進学した。
 獣医になったきっかけを兼島さんは「宮古で過ごしたときに祖父母が家畜を飼っていて、周囲にいつも家畜がいた。そんな生活を経験したことが大きく影響した」と振り返った。
 北里大学卒業後、東京大学大学院研修生(獣医微生物学)を修了。一九九一年には、埼玉県富士見市で現在の「みずほ台動物病院」を開院した。今回の小動物感染症の博士学位は母校・北里大学から授与された。
 兼島さんは「これまでにもペットに関する問い合わせが沖縄本島や宮古からもあったので、沖縄で動物病院を開院しようと思っていた。宮古からペットの診療で訪れる飼い主に対して医療費が高くなる場合は、交通費の半額を出したいと思っている」と語った。
 「みずほ台動物病院」のキャラクターをシーサーにするなど、兼島さんの沖縄に対する思いは深い。さらに、本も執筆し、これまでにも「ヒトに伝染るペットの病気」(実業之日本社)などを出版している。
 ふるさとへの恩返しとなる動物病院「琉球動物医療センター」は五月十五日に開院予定だ。

 兼島孝(かねしま・たかし)1963(昭和38)年10月15日沖縄市生まれ。沖縄宮古郷友連合会会長の父恵孝さんと母榮子さんの長男。宮古で幼少期を過し、88年北里大学大学院修士課程(獣医微生物学)を卒業後、東京大学(大学院研修生)修了。91年に「みずほ台動物病院」開院。2007年3月北里大学から日本で初となる小動物感染症の博士(獣医学)の学位を取得。妻順子さんと2人暮らし。
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