200平成19  2 日曜日

「子どもを受け止める余裕を」/夜回り先生・水谷さんが講演
関心高く総合体育館に4500人


子どもたちの育成に対する大人の責任を訴える水谷修さん=3日、市総合体育館

 子どもたちの非行行為の更生に尽力する「夜回り先生」こと水谷修さんの講演会「今、子どもたちは…−今、私たちにできること、しなければならないこと−」(主催・宮古島市、市教育委員会)が三日、市総合体育館で行われた。市教委が毎年二月の第三日曜日を「教育の日」に定めた記念事業。水谷さんは、社会の荒廃化に警鐘を鳴らし「大人は、子どもの不完全さや失敗を受け止める余裕を」と促した。講演には、子どもから大人まで四千五百人が参加し、水谷さんのメッセージに聞き入った。

 水谷さんは、教師生活を送りながら、夜の世界で薬物中毒や売春など問題行動に身を染めた若者たちの更生に尽力するとともに、悩みを抱える子どもたちを広くサポートする活動を行っている。
 講演の中で水谷さんは、「子どもたちの心や行動の問題の背景には大人の問題が潜んでいる」とし、大人の社会のストレスやいらつきがまん延していることで「家族、特に子どもたちにとって憩いの場所であるはずの家庭に、イライラや攻撃が入り込んできている」と指摘。「子どもの社会は、昼間の学校と夜の家庭しかないのに、大人が家でも学校でも子どもたちを追い込み、結果として子どもを非行や不登校、援助交際などに追いやっている」と、子どもたちに対する大人の責任の重さを強調した。

会場いっぱいの聴衆が講演に耳を傾けた

 また、追いつめられた子どもたちのサインとして▽大人が自分にしたことを仲間にする(いじめ)▽夜の世界に浸る▽不登校や引きこもりになる▽不眠になる−の四種類を挙げ「親は、深夜二時に子ども部屋を十晩連続でのぞき、眠れているか確認を。学校の先生は、子どもたちと握手をし、子どもが目を合わせるかどうかで心の状態を知って」と促し「子どもたちの幸せは太陽の下で多くの大人から優しさや愛をもらって育つ」と広く呼び掛けた。
 さらに「ストレスが頂点に達する金曜日と、新たなストレスの始まりを前日に控えた日曜日は、全国の子どもたちや若者の自殺が最も多い日」とし、孫と離れて暮らしている祖父母に向けて「金、日曜日の午後九時から十時の間に電話をかけてあげて」と、家族、地域で子どもたちの命を支えるよう強く訴えた。
 講演の締めくくりで水谷さんは、「優しさに囲まれて育った子どもは、宮古島を離れてどこに行っても、すべての悪に『ノー』と言える大人になる」とし、笑顔とあいさつのあふれる家庭、地域づくりを求めた。
 

Aメグミ(小6)の場合
「リーダーに立ち向かうなんて、誰も思い付かない」 

 クラスの仲良しグループの一人が、女の子たちに無視され、いじめられるようになった。グループのメンバー、メグミ=仮名、宮古島の小学校六年生(当時)=は、「彼女のことを嫌いじゃなかったけど」いじめの空気に同調し、一緒に無視したり悪口を言った。少しでも彼女をかばうような発言をすると、自分の身が危ないという恐怖心が先立った。
 そのうち彼女はグループを完全に抜け、一人で行動するようになった。すると、次のいじめの矛先はいとも簡単にメグミに向けられた。いじめのリーダーは、男子を含むクラスのほぼ全員に「きもい」と吹聴し、メグミの体のコンプレックスを言いふらして嘲笑した。靴を隠されることもしょっちゅうあった。
 友達同士で机を寄せ合う給食時間。メグミは一人ぼっちだった。ヘラヘラとした冷たい視線を痛いほど感じる。惨めだった。こみ上げる涙と戦うのに必死で、給食はのどを通らない。屈辱の一方で、誰かが声を掛けてくれるのを待っていた。

教室の中の社会、楽しいばかりではない(写真と本文は関係ありません)

 ◇部活動の変化
 部活動では部長を務めていた。しかし、部員の中にいじめグループのメンバーがいるため、部長職は機能しない。顧問の先生に「みんなに伝えておいてね」と言われことを伝えることすらままならず、部長としての力不足を自ら責めた。
 あるとき、顧問の先生に「最近元気がないけどどうしたの」と聞かれた。最初は何も答えられなかったが、何度も問われるうちに訳を話すことができた。先生は黙って耳を傾け、部長を中心に部活動が動くように仕向けてくれた。
 例えば「集合」などの号令を部長が掛ける仕組みにした。号令を掛けても、部員らの多くは号令を無視して全然集まらなかったが、先生がそれを見ていてしかるとみんなが集まる。そんなことを繰り返していくうちに、号令が機能するようになった。「それは、イコールいじめがなくなったことにはならないと思う。でも、先生は一人ひとりをちゃんと見ていてくれた。だから私の異変に気付いてくれたんだと思う。先生の存在は救いになったと今でも思っている」
 ◇心配を掛けたくない
 「両親に心配を掛けてはいけない」。家ではそんな思いで過ごした。「今思えば、いつも以上に明るく振る舞っていたと思う」。その分、家に誰もいないときには、枕を投げ付けて大声で泣いた。心の中が混乱して収拾がつかなかった。
 「両親に『気付いてよ』と願う気持ちが2、『気付かれてはいけない』という気持ちが8」。揺れる思いの中で、やっぱり打ち明けることはできなかった。
 ◇いじめのムード
 「経験から言うと、いじめにはリーダーがいて、その力は絶対。クラスの大勢は、教室の雰囲気が気まずくなるのを避けたり、何より自分がいじめられるのを恐れて、みんなでリーダーの機嫌取りをするんだよね」。メグミの語気は熱を帯びる。「ターゲットになった『いじめられっ子』を嫌いな人はほとんどいない。ただリーダーに同調しているだけ。でも、大勢でリーダー一人に立ち向かうなんて誰も思い付かない。リーダーに従うのが絶対という空気が教室を支配している」
 ◇小さな一言が救いに
 メグミが教室の中で「ターゲット」になっていたとき、休み時間は他のクラスへ逃れ、授業でどうしても誰かとペアやグループをつくる必要があるときは、いじめに属さない二、三人の人と行動を共にした。
 しかし、惨めな思いに変わりはない。そんなとき、声を掛けてくれた一人のクラスメートがいた。もともと同じグループでメグミの前にいじめに遭い、グループを抜けた彼女だった。当時はメグミもいじめに加わっていたにもかかわらず、彼女は「何で一人か?一緒に回ろう」と肩をたたいた。思わず涙が出そうになった。
 「いじめられている人を見たら、陰でいい、自分に被害の及ばない程度でいいから、そっと声を掛けてあげてほしい。『大丈夫?』その一言だけで、きっと心強くなるから」
 根本的な解決法は分からない。何しろ相手は、教室全体に重く漂う「空気」なのだから。でもメグミは、小さな優しい声が時として、心の救いになることを知っている。   (砂川智江)
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佐渡山正光さん優秀賞/県工芸公募展
作品「追憶の晩秋雲」


佐渡山正光さん

 第二十九回県工芸公募展(主催・県)でこのほど、「みやこ焼」窯元で工芸士の佐渡山正光さん(56)の作品「追憶の晩秋雲」が優秀賞を受賞した。佐渡山さんは受賞を喜び「次は最優秀賞を目指したい」とさらなる意欲を示した。作品は那覇市の文化テンブス館で展示される。四日まで。
 同公募展は、織物や陶芸、漆芸などさまざまな分野の伝統工芸が対象。今回は九十四人、百十七点の応募があった。
 佐渡山さんの作品(壺)は、鉄分を多く含む茶色の土と白土を練り込み、さらに土灰を使って夕空に広がる雲を表現。白土では、ヤシガニをかたどったポイントを配置している。

優秀賞を受賞した「追憶の晩秋雲」

 大きさは縦七十五a、横五十a。
 佐渡山さんは「予想以上の結果。離島で活動していても努力次第で作品を広く発表できる。陶芸に限らず、さまざまな分野で表現活動に挑戦している宮古の子どもたちや若者の励みになればうれしい」と話した。
 審査では「練り込み技術・技法が素晴らしく、造形とのバランスがうまく表現されている。重量感もあり力強さが感じられ、見る人をさわやかな気分にさせる」と講評された。
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ミャークフツで健康談議/健康まつり
多くの市民でにぎわう/行政・地域で健康づくり


多くの市民が参加して行われたシンポジウム=3日、宮古島市中央公民館

 二〇〇七年健康まつり「健康を語る宮古人の集い−減ら脂体みんなでとりくむぷからす健康(ガンズゥー)」(主催・宮古島市福祉保健部)が三日、市中央公民館で開催された。会場内には健康相談、歯科相談、健康食試食の各コーナーが設けられ、多くの市民でにぎわった。シンポジウムでは、各パネリストが宮古方言で健康について意見を述べた。健康増進に取り組んでいる一団体、五個人が表彰された。

 このまつりは、市民の意識向上を促進して生活習慣病の予防対策を図ることが狙い。市の住民健診では受診者の約半数が肥満、三割が糖尿病予備軍となっており、行政、地域が一体となって取り組むことが市の課題となっている。
 発言すべてが宮古方言で行われたシンポジウムには、天久宏さん、添石久子さん、池田健吉さん、松川紀江さんをパネリストに迎え、健康をテーマに意見を述べた。
 天久さんは宮古方言でユーモアたっぷりに話を披露し、聴衆を沸かせた。また、高齢者らの生涯学習の場「ひらら大学」に男性の参加が少ないことを指摘し、「女性は生き生きしているが男性はあまり外に出ない。男性が参加する講座を開いた方がいい」と述べた。
 健康づくり推進員はメンバー全員でステージで「けんこうリズム体操」を披露。会場中が一体となって、手をつないだり、足を上げたりして体操を楽しんだ。
 開会式で伊志嶺亮市長は「市では全市民が健康な百歳への挑戦ができる環境整備に努めている。市民がこの集いを通して、ますます健康づくりへの関心が深まることを期待する」とあいさつした。
 表彰されたのは次の皆さん。(敬称略)
 【団体】▽添道健康ロード倶楽部
 【個人】▽荷川取悦子(平良字下里)▽友利真知子(下地字上地)▽大嶺シゲ(上野字野原)▽川満浩次(城辺字福里)▽川満京子(城辺字下里添)
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事件発生から1週間経過/平良女性殺害
犯人像の特定至らず/長期化様相に住民不安

 一月二十六日午後、宮古島市平良字西里のアパート三階に住む前泊美智子さん(48)が遺体で発見された事件は、一日で発生から一週間を迎えたが、依然として犯人は特定されておらず、逃走したままだ。目立った進展を見せない捜査状況に市民からは「一日でも早い解決を」「外出が怖い」といった声も出始めた。いったい、犯人はどこにいるのか。長期化の様相を見せ始めた殺人事件の一週間を検証する。

事件があったアパート付近で聞き込み調査を行う捜査員ら=2日、平良字西里

 ■浮かび上がらぬ犯人像
 前泊さんが自室の浴室で死亡しているのを、二十六日午後に訪ねた知人女性が発見。当時、ドアは鍵とチェーンで施錠され、ベランダにつながる窓は一aほど開いていたという。ベランダと三階の廊下は壁で仕切られている。壁の高さは約一bで乗り越えることは容易だ。三階廊下への逃走経路となった可能性は高いとみられる。
 司法解剖の結果、死亡推定時刻は発見当日である二十六日の午前ごろ、死因は背部を一突きで刺されたことによる失血死と判明した。傷は内臓にまで達しており、関係者は「抵抗する間もなく、その場で息絶えたのだろう」と話す。
 宮古島署は殺人事件として特別捜査本部を設置した。八十二人態勢で周辺の聞き込みなど捜査を実施。現場鑑識の結果、指紋数十点、足跡数カ所、血痕や毛髪など多数を採取した。また、殺害に使われたと思われる凶器も、販売店などで在庫の有無を確認。交友関係など含め、照合・照会を急いでいる。
 捜査を進める同署にも一般市民からの目撃情報など数十件が寄せられている。しかし、今のところ犯人逮捕に結び付く有力な目撃情報や犯行に使われた凶器なども発見できないまま。犯人像は全く浮かび上がっていない。
 第一発見者の通報時刻は午後二時三分ごろ。死亡推定時刻から見ると、犯行から緊急警備が敷かれるまでは数時間が経過している。犯人が島外へ逃走した可能性も捨て切れない。
 ■人柄
 昨年から一人暮らしを始めたという前泊さん。週に三回、二時間程度の訪問介護サービスを受けていた。彼女を知る人は、きちょうめんできれい好き、おとなしい人だったと口をそろえる。調理や買い物などを介助してもらう以外、身の回りのことはほとんど自分でやっていた。しかし、あまり他人との接点は持たなかったといい、知人は「恨みをもたれるほどの交流があったとは考えられない」とまゆをひそめる。近くの住民も「あまり(彼女の姿を)見たことがない」、「近所付き合いはなかった」と交友関係の狭さをうかがわせる。
 ■早期解決を
 犯人が前泊さんを殺害した目的は金目当てか、怨恨か、その両方なのか。それとも違う何かなのか−。なかなか見えてこない前泊さんの生活の様子や交遊関係が、その特定を困難なものにしている。
 宮古島署の岸本亮署長は「寄せられた情報に関してその都度、捜査に取り組んでおり、一歩一歩、進展している。慎重に、現場周辺や居住者、関係者から聞き込み捜査を進め、精査している」と話し、少しずつだが捜査が進ちょくしているという状況を説明する。
 犯人が特定できないままでは、市民も安寧した暮らしが送れず、その生活自体が脅かされているといっても過言ではない。
 付近に住む二十代女性は「誰が犯人か分からない状況での生活は怖い。一日でも早い解決を望む」、五十代女性は「物騒な宮古になった。早く犯人を逮捕して、被害者の冥福を祈りたい」と不安げな表情を見せる。一日でも早い事件解決が先決であり、市民もそう願っている。
 (具志堅千恵子、深沢千絵子)
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明大生キビ刈り体験/上野
地域文化学習の一環


サトウキビの収穫を体験する学生たち=3日、上野地区の畑

 明治大学経営学部の学生らは三日、宮古島市上野地区にある佐渡山荘さんの畑で、サトウキビの収穫作業を体験した。地域文化を学ぶフィールドスタディ(体験学習)の授業の一環。学生らは、キビ収穫のほか、二日から四日の日程で祭祀や宮古上布の歴史など宮古の文化について学んでいる。
 学生らは、二、三、四年生の二十二人が参加。慣れない手つきながらもそれぞれ協力してキビを収穫。作業の合間には「キビ収穫の所要時間は」「連作は可能か」などと積極的に質問。佐渡山さんは一人ひとりの質問に答え、品種の特徴や春植えと夏植えの違いなどについて説明した。
 同大学の居駒永幸教授は「自分の知らない世界の文化に触れることは、今後の考え方に大きな衝撃を与える。気軽に情報が入手できるインターネット社会だからこそ、身をもって体験することで実感の伴うレポートを作成できる」と意義を強調した。
 参加した赤間美香さんは「キビの生え方や葉の付き方など発見がたくさんあった。体験を今後の学生生活に生かしたい」と話した。
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ミュージカルで魅了/ふるさときゃらばん


迫力のステージが繰り広げられたミュージカル=2日、マティダ市民劇場
 全国各地で上演活動を行う劇団「ふるさときゃらばん」の宮古公演(主催・宮古島市、同市教育委員会)が二日夜、マティダ市民劇場で行われた。一月から県内で開催している「沖縄みちぶしん」の最終公演。多数の親子連れらが鑑賞し、沖縄、宮古の自然や文化を盛り込んだエンターテインメントの世界に引き込まれた。
 このミュージカルは、一月十三日の読谷村公演を皮切りに県内十三カ所を巡回。宮古公演がフィナーレの舞台となった。
 同公演には、協力して道路を造る「道普請」と関連させ、沖縄の「ユイマール」精神を未来につなぐメッセージが込められている。上演に際し伊志嶺亮市長は「いま一度ゆいの心を見つめ直し、協力して地域づくりに取り組んでいこう」とあいさつを述べた。
 ステージでは、演者らが迫力の歌とダンスを繰り広げ観客を圧倒。物語の中には、市鳥のサシバのエピソードが盛り込まれるなど宮古の自然や文化が生かされ、訪れた人々に楽しい時間をプレゼントした。
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