200平成18  831 木曜日

アオドウガネを根絶へ/防除支援推進協が発足
可動式誘殺灯1000基設置へ/キビの増産体制確立に期待

 宮古島市・多良間村の基幹作物サトウキビの根部に食害を与えて立ち枯れさせる、土壌害虫アオドウガネの根絶へ向けた組織「さとうきび土壌害虫防除確立支援事業推進協議会」が三十日、発足し、初会合が県宮古支庁で開かれた。可動式誘殺灯約千基を今年度から導入し、来年度から本格稼働、二○○九年度までにアオドウガネの個体密度の低減を図る。既存の固定式誘殺灯も併用する。国の特別支援で県が実施するもので、事業費は一億五千五百万円(国庫支出一億二千四百万円、県支出三千百万円)。アオドウガネの短期間根絶に向けた大掛かりな事業展開は、今回が初めてとなる。アオドウガネの根絶で、キビ生産農家の反収・収益増、増産体制の確立などのほか、バイオ燃料の増産に弾みが期待されている。
 初会合では、協議会の設立を承認した上で、会長に県宮古支庁農林水産調整監の砂川光弘氏を全会一致で承認した。
 協議会は、サトウキビ土壌害虫防除を円滑に実施する目的で設置。今後、キビ土壌害虫であるアオドウガネ防除体制、アオドウガネによる被害状況調査のほか、防除に関しての情報提供などについて検討していく。
 宮古のアオドウガネ被害は、一九六五―七八年ごろまではキビ株出し面積が全体の六○―七○%だった。それ以降急激に減少し、八八年以降には一○%以下まで減少。これは株出し不萌芽(ふほうが)地域の急速な拡大によるもので、主としてアオドウガネなどによる地下部の食害が直接的要因とされている。
 アオドウガネの成虫は夏季に発生。このため、キビの立ち枯れや株出しの不萌芽や夏植えの収穫減少などの被害を受けている。成虫は誘殺灯で防除しているが、幼虫は土中に広く分布するため、防除は難しい。また幼虫防除には大量の農薬が必要なため、地下水などの環境保全上、問題視されている。
 同協議会では「アオドウガネは飛行力が高いため、地域全体での取り組みが必要」と協力を呼び掛けている。
 一方、宮古ではキビを搾った後の廃蜜糖でバイオエタノール製造を実証実験中。今後、量産体制を進めていく中で、一つの課題は原料となるキビの増産。アオドウガネが根絶された場合、キビの増産に加えバイオ燃料の量産が一気に加速しそうだ。
 委員は次の皆さん。(敬称略)
 【会長】砂川光弘(宮古支庁農林水産調整監)【副会長】本村隆信(宮古農政・農業改良普及センター所長)▽比嘉俊昭(県農林水産部糖業農産課長)【委員】宮国泰男(宮古島市経済部長)▽長浜光雄(同市伊良部総合支所長)▽運天宏和(多良間村経済課長)▽川満久雄(同市農業委員会長)▽渡口直和(同村農業委員会長)▽下地隆弘(JAおきなわ宮古地区事業本部長)▽大見謝伊久雄(沖縄製糖工場次長)▽新城淳作(宮古製糖専務)▽下地功祐(宮古支庁農林水産整備課長)▽與那覇龍雄(宮古農政・農業改良普及センター農政班長)▽本永忠久(県農林水産部糖業農産課副参事)▽安田慶次(県農業研究センター病虫管理技術開発班長)▽大城正市(同センター宮古島支所長) (伊良波彌)

◆ことば◆
  誘殺灯 アオドウガネの成虫を電灯でおびき寄せ、ぶつかって落ちた成虫を袋で捕獲する病害虫駆除設備。成虫の活動期は五月から八月いっぱい。

 写真説明・今後の事業計画などについて確認した協議会=30日、県宮古支庁top.gif (811 バイト)
 

宮古地区畜産共進会/各地区の精鋭牛一堂に
体積や被毛の質など審査/伊良部さんの牛など最優秀

 二〇〇六年度宮古地区畜産共進会(主催・同地区農業振興会)が三十日、JAおきなわ宮古家畜市場で開かれた。宮古島市として初めて開催された共進会には各地区を代表する精鋭牛が一堂に会し、発育や品位などの審査を受けた。審査の結果、伊良部平三さん(城辺)の所有する「しげみ」号など四頭が最優秀賞に輝いた。

 今回入賞した牛の中からさらに厳選し、宮古代表牛として県大会へ出品される。
 同共進会は、宮古における家畜の改良と畜産経営に寄与することを目的に開催される。七月に行われた各地区共進会で選考された黒毛和牛が対象。
 宮古家畜保健衛生所や県家畜改良協会、JA宮古地区営農センターの職員らが出品牛の発育度をチェック。体積や被毛の質、色、品位などを厳しく審査し、各類の順位を付けた。
 開会式で同振興会の伊志嶺亮会長(宮古島市長)は「各地区から精鋭牛が出品され、伊良部地区からも初めての出品があった。昨年度の肉用牛の取引実績は約七千頭、売り上げにして二十九億五千万円と毎年更新しており、依然として高値維持されているが、飼養頭数が減少傾向にあるのが今後の課題。牛の生産地として購買者が魅力を感じるよう、取り組んでいこう」とあいさつした。
 結果は次の通り。
 【若雌第一類】▽最優秀賞=伊良部平三(城辺)「しげみ」▽一等一席=下里栄市(下地)「ひろと」▽一等二席=砂川勉(城辺)「まりお」▽二等一席=喜屋武則吉(同)「しげみ」▽二等二席=上地誠(上野)「あきこ」▽二等三席=来間辰夫(下地)「やすこ2」
 【同第二類】▽最優秀賞=長浜輝代(城辺)「やすこのこ」▽一等一席=喜屋武則吉(同)「ももよ」▽一等二席=大海(上野)「さつき」▽二等一席=吉本光金(平良)「みつこ」▽二等二席=上地正夫(同)「さっちゃん」▽二等三席=棚原正剛(上野)「きくえ」
 【成雌の部第一類】▽最優秀賞=喜屋武則吉(城辺)「つきよ」▽一等一席=伊山和吉(平良)「ふくみ」▽一等二席=石垣精一(城辺)「ひろこ」▽二等一席=末広秀樹(同)「かなと」▽二等二席=長浜国博(伊良部)「みちこ」▽二等三席=砂川健治(下地)「すたあ」
 【同第二類】▽最優秀賞=松原広幸(城辺)「まるちゃん」▽一等一席=池村盛徳(下地)「もりたか」▽一等二席=吉本光金(平良)「わかな」▽二等一席=長浜輝代(城辺)「ひろし」▽二等二席=末広秀樹(同)「としえ」▽二等三席=宮国朝親(上野)「だんでい」
 【県農林水産部長賞】▽長浜輝代(城辺)「やすこのこ」(若雌の部第二類)▽松原広幸(同)「まるちゃん」(成雌の部第二類)
 【県畜産公社基金協会理事長賞】▽伊良部平三(城辺)「しげみ」(若雌の部第一類)▽喜屋武則吉(同)「つきよ」(成雌の部第一類)

 写真説明・各地区から選考された精鋭牛を、被毛や骨格など厳しく審査した=30日、JAおきなわ宮古家畜市場
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初出品で初入賞/伊良部から参加の長浜さん
「みちこ」、二等二席に輝く

 宮古島市となって初めての開催となった宮古地区畜産共進会に、伊良部地区から初めて、代表として参加した長浜国博さん(37)=字国仲=は、成雌の部第一類に「みちこ」(四五三`)を出品した。初出品にして二等二席に輝いた喜びを「初参加で初入賞に、恐縮してしまうほどうれしい。おなかの中に十一月に出産予定の第一子もいるので、喜びは二倍に膨らんでいる」と笑顔を見せた。
 今年五月に、和牛改良組合伊良部支部が発足し、長浜さんは支部長を務める。会員十六人を先導するリーダー的存在だ。
 今回の出品を「支部を発足させたのなら、各地区の発育状況などを学び、切磋琢磨する意味でも一頭でも出品させたかった」と説明。会員らの心強い後押しや関係機関などの協力などを得て、手塩にかけ愛情たっぷり育てている「みちこ」を出品した。
 長浜さんは「みちこは期待通りに発育の良い、自慢の牛。栄養度七と指摘を受けたが、全体的に見て悪くない。受賞を励みにして、支部のみんなと共に手と手を取って協力し合い、素晴らしい宮古牛を産出していきたい。会員一同、来年も出品し、さらに上位入賞を目指します」と力強く語り、伊良部畜産のけん引として、まい進していくことを決意していた。

 写真説明・伊良部から初参加の長浜さん(右)と「みちこ」=30日、JAおきなわ家畜市場
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累積赤字87億6000万円/宮古病院
経営状態、さらに悪化/05年度県病院会計決算

 【那覇支局】七つの県立病院を含む二〇〇五年度県病院事業会計決算について、県監査委員(太田守胤代表監査委員)は二十九日、審査意見書を県に提出した。それによると、県立宮古病院の同年度の純損益は六億六百二十三万一千五十七円となり、前年度よりも九千九百九十八万五千七十二円の損失増加。累積赤字も膨らみ八十七億六千百九十七万五千円となっていることが分かった。また、県立七病院すべてが同年度赤字となり、県立病院の経営環境はさらに厳しくなっている実態が明らかになった。
 〇五年度における宮古病院の総収益は、四十三億八百十五万八千四百九十七円で、前年度比九千八百七十六万七千七百七十九円減少。医業収益も入院収益、外来収益などのマイナスが重なり同比四・四%の減となった。
 一方、総費用は四十九億一千四百三十八万九千五百五十四円で材料費、特別損失などは減少となったが、給与費が増加したため前年度比で百二十一万七千二百九十三円の増加となっている。
 また、総収支比率は八七・七%で、前年度を二・〇ポイント下回り、医業収支比率も七九・四%で同比四・六]下回るなど、宮古病院の経営状況はさらに悪化している結果となった。
 さらに、宮古病院における入院・外来患者の当初予定量と実績費比較では、入院がマイナス七・一%、外来がマイナス〇・二%で、合計ではマイナス三・六%となっている。
 県全体では県立七病院すべてで〇五年度は赤字となっており、県病院事業全体の単年度赤字も前年度に比べ約十六億円増加の約四十七億円となり、過去最悪となったほか、累積赤字も約四百六十九億円となっている。
 こうした状況から県立病院経営状況は一段と厳しさを増すともに不良債務比率も大幅に上昇するなど資金繰りも一層厳しくなっている。
 意見書を提出した太田代表監査委員は、経営改善取り組みの強化で「県病院事業経営健全化計画」の推進を訴え、離島・へき地医療について医師確保の必要性なども求めた。

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委員12人に委嘱状/男女共同参画懇話会
会長に古波蔵さん/10月めどに市長へ提言

 宮古島市(伊志嶺亮市長)は三十日、宮古島市男女共同参画懇話会設置に伴い、委員十二人に委嘱状を交付した。
 同日初めての会合があり、委員らが男女共同参画社会の概要説明を受けた。同懇話会は男女共同参画に関する問題点とその施策のあり方について調査を行い、十月をめどに意見をまとめて伊志嶺市長に提言する方針。懇話会の会長には下地の古波蔵小夜子さんを選任した。
 委嘱状交付式は午後三時からゆいみなぁ(働く女性の家)で行われ、砂川道子館長が委員一人ひとりに委嘱状を交付。その上で「男女共同参画社会は男性と女性が互いの人権を尊重し、喜びや責任も分かち合うもの。宮古島市が計画の策定を進めているが、実効性のある計画にしたいという思いから、今回の会合開催になっている。ぜひ忌憚のない意見を聞かせていただきたい」などと協力を求めた。
 引き続き、第一回の会合が開かれた。男女共同参画社会の概要説明やビデオ映写が行われ、各委員が認識を深めた。懇話会は今後、二−三回の会合を開き、男女共同参画に向けての具体的な施策などを取りまとめていく方針。
 懇話会の委員は次の皆さん。(敬称略)
 【会長】古波蔵小夜子(前下地町議会議員)【副会長】愛澤直樹(市青年団協議会)【委員】上地一正(市農業委員)▽上地洋美(市農漁村生活研究会)▽佐和田涼子(観光ガイド)▽座喜味淳子(人権擁護委員)▽下地正子(宮古島婦人会)▽新里玲子(市教育委員)▽仲里タカ子(消費生活相談員)▽花城加代子(市行政連絡員)▽宮川正廣(地域生活支援センターコーディネーター)▽安元徹好(宮古青年会議所)

 写真説明・市男女共同参画懇話会委員に委嘱状が交付された=30日、ゆいみなぁ
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毎月1回、慰霊碑を清掃/西原幸の会が25年間続ける
「戦争の悲惨さ後世に伝えたい」

 ボランティアグループの「西原幸の会」(花城はる会長、会員十八人)は三十日午前、平良地区にある慰霊碑「豊旗の塔」境内で清掃活動を行った。毎月一回、二十五年間続けてきた同会のボランティア活動の一環。会長の花城さんは、「戦争の悲惨さを若い世代に引き継いでいくためにも、命ある限り続けていきたい」と話している。
 西原幸の会は一九八一年に、西原生活改善グループや婦人会などの役員らを中心に発足。この時から、慰霊碑の清掃活動を始めたという。
 毎月、会員五人が交代で、慰霊碑周辺の雑草を刈り取ったり、碑を水で清めたりして戦争で亡くなった人たちを供養する。
 二十五年間、毎月休まずに参加している花城さんは、「戦争が再び起こらないようにと、世界平和を願いながら清掃をしている。戦争を知らない人たちに、この活動と目的を引き継いでいくのが私たちの使命だと思っている」と語った。
 西原幸の会は、西原地区に住む六十歳以上を会員として、トライアスロンコースの清掃や交通安全指導、朝のあいさつ運動など、地域に根差したさまざまなボランティア活動を展開している。

 写真説明・戦争が再び起こらないよう願いを込め清掃作業をする西原幸の会のメンバー=30日、平良地区にある慰霊塔
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