宮古島市（伊志嶺亮市長）がトゥリバー地区の売却に向け、初めて土地の鑑定評価を行う方針を固めた。現在公表されている売買価格四十億九千八百万円は事業費から算出したもの。鑑定すればこの価格を下回ることも十分予想される。市土地対策局は「一部で高いという評価がある。鑑定するのもトゥリバーを売るための手段の一つ」と強調した。市は今月十四日に開会する市議会臨時会に、鑑定評価委託料百五十万円に加え、土地売買を媒介した業者に支払う成功報酬額四千万円の予算化を求める議案を提出する。
 
　トゥリバー地区の現在の売買価格は二〇〇二年九月にトゥリバー地区事業推進検討委員会で決定した価格。仮に鑑定評価が実施され、売買価格が下がっても、最終的な価格を決定するのは同委員会であることから、価格が大幅に下がるということは考えにくい。土地対策局内でも「今の価格と大きな差が出た場合は考えなければならない」としており「鑑定評価＝売値」という図式は強く否定する。市の港湾事業特別会計で三十二億八千七百万円の赤字（〇五年度決算ベース）を抱えているという現状も踏まえ、たたき売りだけは避けたい方針だ。　
　鑑定評価を行う根拠として土地対策局は「地価変動が著しい昨今、近隣地の取引事例などを参考に鑑定評価を依頼し、売買価格の見直しをする必要がある」と説明。売買価格下落の可能性も否定できない状況の中、一方で土地購入を求める企業の信頼を得られるという点に期待している。
　十四日に開会する市議会臨時会ではトゥリバー地区の鑑定評価のほか、売れた場合の成功報酬予算案も提出する。この案件は旧平良市議会の中で否決されているが、今回は土地対策局が与野党議員に提出理由を詳しく説明し、一定の理解を得ているという。報酬額は土地代金の一％程度としているため、現在の価格四十億九千八百万円と算出すると、約四千万円が報酬額となる。
　トゥリバー地区は平良港コースタルリゾート計画で平良港の側を埋め立てた三十二�fの土地。売却する部分はホテルゾーンの九万九千九百四十平方�bとコテージゾーンの三万二千八百八十二平方�b。周辺には人工海浜や人工水路などがあり、複数の企業から注目を集めている。　　（山下誠）

　写真説明・売却に向け、初めて土地の鑑定評価が行われる予定のトゥリバー地区
　

　宮古島市議会総務財政委員会（前川尚誼委員長）は十日午後の委員会で、六月の定例会で継続審議としていた「宮古島市水道局と多良間村簡易水道事業の広域化協議について」の要請と、ゴルフ場用地に係わる固定資産税に関する陳情について審議した。各委員が議論を交わしたが、最終的に再び継続審議とした。
　市水道局と多良間村の簡易水道事業の広域化協議の要請については、多くの委員が「今は時期が早い」「判断する材料が不足している」などとして結論を先送り。各氏が多良間村、市水道局の財政状況などを十分に把握した上で再度協議するとして継続審議とした。
　この要請は多良間村から宮古島市と宮古島市議会に提出されている。多良間村は運営基盤の強化をはじめ、安全、安心な水の確保、災害などに対する危機管理体制の確立は重要な課題であるなどとして広域化協議を打診している。
　ゴルフ場用地に係わる固定資産税に関する陳情書については、不採択の公算が大きかったが、継続審議として結論を持ち越した。陳情では宮古各地のゴルフ場が「固定資産税の占める率が非常に高く経営を著しく圧迫する要因となっている」と訴えている。

　今年三月十六日に、上原前代表理事組合長は辞表を提出。それを受け、同二十七日に理事会が開かれた。辞表の取り扱いについて審議した結果、六月三十日に開かれる通常総会が終わるまでは「代表理事組合長としての責任がある」と意見は一致し、辞表は預かる形にした。
　総会終了後の七月六日の理事会で、代表理事組合長の辞表を正式に受理。後任の代表理事組合長の選任をめぐり、議論噴出。全理事が辞任すべきとの意見が多かったという。この日の理事会で、代表理事組合長に次ぐ筆頭理事の渡真利氏が、暫定の代表理事組合長に選ばれた。
　その後、渡真利代表理事組合長は市、県、上部の系統団体と相談。行政などから「全理事の辞意表明は撤回し、新しい代表理事組合長を選任しスタートしては」などの指導を受けた。
　指導を受け、この日開かれた理事会では「今後の平良市漁協の運営はどうすべきか」などを審議したが、一部の理事から「上原代表理事組合長が辞任したので、全理事とも辞任すべき」などとの意見が上がり、辞任の賛否を問う採決に入った。その結果、全理事辞任が過半数を占め、次回の臨時総会の日程などを協議した。
　先月二十二日の宮古毎日新聞の電話インタビューで、上原氏は「辞任した理由はいろいろあるが、今は言えない」とコメントしていた。

　写真説明・職員らは普段通り仕事をこなしていた＝１０日、平良市漁協

　県宮古支庁（兼城克夫支庁長）は十日、宮古島地方を約八時間暴風域に巻き込んだ台風８号の被害状況（速報）をまとめた。被害総額は九十八万円で県道の倒木など。サトウキビなどの農作物には恵みの雨ともなった。野菜類、果樹類にも被害は見られず、人的被害もなかった。
　宮古島地方は九日午後五時ごろ、台風８号の暴風域に入った。暴風警報の解除は、十日午前一時五十五分で宮古島地方は約八時間にわたって暴風雨にさらされた。最大瞬間風速は九日午後八時八分に平良字下里で観測された西の風二四・九�b。
　この台風の影響による降り始めからの各地の雨量は▽平良三七・五�_▽城辺四七�_▽伊良部二四�_▽多良間六�_−となっている。また、池間、来間の両大橋は十日午前二時に通行を再開させた。
　サトウキビは夏植、春植、株出とも倒状、葉片裂傷などは見られなかったが。海岸に近いほ場では塩害が懸念され散水が必要としている。
　野菜類は露地および施設栽培とも被害はない。また、果樹（マンゴー）の収穫はほとんど終了しており、落果や樹体の損傷はなかった。

　台風８号の接近により空の便に影響を受けた宮古空港では十日、全便が通常通り運航され、旧盆帰省のＵターンで足止めされた利用客らの混雑は解消された。前日午後から全便欠航となり、宮古発着の便では、二千九百三十八人に影響が出た。多良間空港では十日午前、宮古行きの空席を待つ客が六十二人おり、同日昼、琉球エアーコミューター（ＲＡＣ）は多良間−宮古で臨時便一便を運航した。
　日本トランスオーシャン航空（ＪＴＡ）では宮古−那覇の空席待ちは約七百四十人。全便満席で午後四時までに、混雑はほぼ解消された。全日空（ＡＮＡ）も多少の遅れはあったものの全便通常通り運航し、ほぼ満席だった。
　空港ロビーには空席待ちの整理券を握りしめた利用客らが、今か今かと順番を待っていた。宮古へ旧盆のため里帰りしていた沖縄本島在住の女性は「足止めは今回で二回目。きょうは出勤だったので仕事に影響が出てしまった。でも、空席待ちの間、見送りに来た宮古の家族とたくさん話ができた」と話した。

　写真説明・早朝から空席を待つ利用客ら＝１０日、宮古空港