200平成18  722 土曜日

キビ新価格制度を決定/政府・自民党
交付金d当たり1万6320円/農家への支払い遅れ確実

 政府、自民党は二十一日、同党本部で野菜・果樹・畑作物等対策小委員会(近藤基彦委員長)を開き、二〇〇七年産から適用されるサトウキビの新しい価格制度を了承した。国の交付金はトン当たり一万六千三百二十円に決定、三年間は据え置くことも決めた。ただ、懸念された農家への支払いは月二回と限定され、現行の制度より遅れることがほぼ確実となった。農家の手取り額はキビ取引価格と国の交付金の合算だが、〇七年産の取引価格が決定するまで手取り額は未定。農水省は「確約はできないが二万四百七十円は確保できる」としている。

 小委員会が決定した政府の交付金一万六千三百二十円は糖度一三・一度以上で、一四・三度以下に支払われる。品質格差は現行の水準が確保されるため、一四・三度を超えるキビは糖度〇・一度上回るごとにトン当たり百円を上乗せ。一三・一度を下回るキビは〇・一度下がるごとにトン当たり百円を差し引いた額が交付される。
 この交付金を受け取るためには農家、あるいはJAなどの団体による申請が不可欠。搬入量と糖度を農水省の外郭である農畜産業振興機構に申請する必要がある。その数字を同機構が審査、手続きを行い、農家へ支払うという仕組みだ。
 ただ、申請日が月に二回と定められたため、必然的に農家への支払いも月二回となり、現行制度よりは交付金の支払いが遅れる。農家の資金繰りに与える影響は解消されない結果となった。
 新価格制度は現行の最低生産者価格制度廃止に伴って適用される。現行の価格はトン当たり最低生産者価格の二万百十円に政策支援の対策費三百六十円を上乗せし二万四百七十円としている。
(山下誠)

ことば◆ キビ新価格制度 市場原理を導入し工場が農家のキビを市場の価格で買い取る制度。現行の制度と同様に、国の支援があるため農家の手取り額は現行とほぼ同じ。ただし助成の基準があり、個人の対象は栽培面積一f以上が一定要件。共同では四・五fを有することが条件となる。〇七年度から三年間は小規模農家の救済策として、地域の生産者組織に加入した農家も助成対象とする経過措置がある。

◆解説◆

農家手取り額は未定/農水省 「現行額確保できる」
キビ新価格制度

 二〇〇七年産から適用されるサトウキビの新価格制度が、二十一日の政府・自民党の小委員会で決定した。農家が受け取るキビ代金は現行とほぼ同水準が確保される見通しだが、現段階での取引額は未定。国の交付金支払い時期が現行より遅れることも分かった。
 農水省によると、交付金を受け取るためには農畜産業振興機構への申請が必要になる。その申請が月に二回と限定されているため、現行制度のように一週間以内にキビ代金を受け取れる保証はなくなる。支払いは申請後十日前後となるため、最大二十日以上待たされる農家が出てくる可能性もある。
 農水省の担当課は「交付金は補助金。審査や手続きを終えて支払わなければならない。これまでと同じような時期に支払うことは極めて難しい。沖縄の農家の方々には理解してほしい」と話した。
 農家の手取り額にも若干の影響が出そうだ。現行の最低生産者価格制度では二万四百七十円が保証されているが、新制度では砂糖の取引価格でキビ代が変動する。新価格制度における農家の手取り額は工場が支払う代金(取引価格)と国の交付金の合算であるため、取引価格が上昇すれば農家の手取り額もアップする。下降すればキビ代金も減少するという仕組みだ。国の交付金は一万六千三百二十円で固定されていることから、その年の取引価格によってはキビ代金に差が生じる。農水省が試算した取引価格三千九百八十三円と交付金一万六千三百二十円を合算した農家の手取額は二万三百三円。これは現行を下回る額だが、農水省は「このままいけば取引価格が試算値より高くなる。確約はできないが、現行の手取りを確保できる」としている。
 新しい価格制度は決定されたが、申請方法など具体性に欠ける部分も多く残されている。混乱を招かないためにも、国を含む行政側の迅速な対応が求められている。(山下誠)

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市に損害賠償請求/塩素イオン濃度 「汚名晴らしたい」
リハビリ温泉病院

 平良の四水源地の塩素イオン濃度が上昇している問題で、宮古島リハビリ温泉病院(奥原典一理事長)は二十一日午前、宮古島市(伊志嶺亮市長)を相手に損害賠償二千万円を求める訴えを那覇地裁平良支部に起こした。病院側は同日午後、記者会見を開き、「塩素イオン濃度上昇の犯人と決め付けられ、有形無形の計り知れない損害を受けた。法廷の場で汚名を晴らしたい」と提訴した理由を明かした。
 会見には奥原理事長をはじめ、代理人の宮ア政久、中村昌樹、市川尚の三弁護士らが同席した。
 奥原理事長は「施設は関係する法規制は百パーセントクリアしている。私たちの施設は決して有害な施設ではない。有益な治療施設だ」と訴えた。公表後、温泉施設利用者が半減したという。
 同病院は今年四月に、市に対し上水道企業団が公表した病院近くにある井戸の塩素イオン濃度上昇の原因が施設から排出される温泉排水とした科学的調査とその結果に基づく釈明を求めていた。市側が内容ある対応がないとして、提訴に踏み切ることとなった。
 同病院の依頼を受け井戸を調査した鹿児島県環境技術協会の田中健次郎企画開発部長は「調査した結果、井戸と温泉排水の関係はあるとはいえない」と語った。
 昨年から実施している温泉排水の流域外処理については「家庭からの排水も含めて地下に流すことは良くない。流域外処理は今後も続ける」と継続することを明かした。
 出張中の伊志嶺市長に代わり下地学助役は「訴状が届いていないのでコメントできない。届き次第、庁議や調査にかかわった人との話し合いをして、今後の対応を決めたい」と述べた。
 市側は二十四日に専門家七人による学術委員会を開き、過去のデータを基に原因究明に取り組む予定。

 写真説明・記者会見で提訴の報告をする奥原理事長(左)=21日、宮古島リハビリ温泉病院
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 医療機関の連携構築急務/遠隔医療推進協シンポ
テレビ会議≠ナ情報交換/トライでの実験成果など報告

 今年四月の全日本トライアスロン宮古島大会で遠隔医療システムの実証実験を行った沖縄遠隔医療推進協議会(代表幹事・宮城隼夫琉球大学工学部長)の報告会が二十日夜、南風原町の県立南部医療センター・こども医療センターと県立宮古病院などをテレビ会議システムで結んで行われた。南部医療センターの会場では宮古地区医師会長の中村貢医師が「観光立県を唱える中では、離島医療の整備なくして観光振興なし」と述べ、大学病院と南部医療センター、宮古病院をはじめ離島医療機関の連携構築が急務だと訴えた。

 同協議会は今年四月二十三日に開催された第二十二回全日本トライアスロン宮古島大会で、人工衛星回線と地上網回線を用いて同大会スイム会場と宮古病院、琉球大学付属病院を結び、可動式デジタルレントゲン撮影機による画像を送受信する遠隔医療システムの実証実験を実施。三例の通信を成功させた。
 実証実験については、中村医師と琉球大学救急部の久木田一朗教授、金城聡彦さんが南部医療センターから、宮古病院の本永英治医師、池村眞医師が宮古病院から、それぞれ報告した。
 中村医師は二〇〇三年九月の台風14号災害時の医療体制を例示。「宮古病院と地区医師会、宮古福祉保健所が連携し、携帯電話の写真付きメールを送り合うなどして状況を確認した。地域が一体となり、IT(情報技術)を利用して災害を乗り切った。トライアスロン医療救護部で毎年行っているので連携が取りやすい」と説明した上で、「人が動くのではなく、情報を動かすことが重要。多くの機能を集中した一つの大病院は時代遅れで、医療機関の連携体制をつくっていかなければならない」と話した。
 トライアスロン大会の医療救護本部で実際に遠隔医療システムを取り扱った池村医師は「デジタルレントゲンで撮影した溺水した選手の肺の画像は鮮明だと感じた。医療救護部が選手を宮古病院に届けるまでには、レントゲン画像が届いていた」と現場での好感触を報告。大会時に宮古病院で対応した本永医師は「選手が医療救護本部を出発する前にはある程度準備ができる」とその良さを報告。一方で、「災害時には動画などもっと大きな情報量が必要になるだろう。改良を重ねてほしい」と要望も付け加えた。
 久木田教授は、テレビ会議システムの構築などを課題に挙げながら、「遠隔からの現場支援は有効。実証実験は有効性の証明と問題の掘り起こしに有用」と結論付けた。
 このほか、県立伊是名島診療所の島袋盛之医師もテレビ会議システムで参加。「療養期の患者の支援ツールとして活用できる」と一定の評価をしながらも、「現状の通信回線速度ではほとんどの離島で利用不可能」と、伊是名島などの離島での課題を指摘した。

 写真説明・南部医療センターとテレビ会議システムで結んで行われたシンポジウム=20日、県立宮古病院
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宮古島市の歌/砂川さんの歌詞に決まる
「黎明
(れいめい)の空に」、作曲者を募集

 「宮古島市」誕生に伴って募集していた市歌の歌詞が、同市在の会社員、砂川健次さん(52)の「黎明(れいめい)の空に」に決まった。市は引き続き、砂川さんの詩に合わせた曲を募集。応募作品の中から、曲を決定し、今年十月の合併記念一周年式典で「宮古島市の歌」を市民にお披露目する。
 市歌への採用が決まった砂川さんは「とても光栄なことで、大変喜んでいる。これから、この詩が宮古島市民に愛され続けてほしい」と話した。
 詩には市内外から六十三点の応募があり、市歌選定委員会(委員長・久貝勝盛教育長、十二人)が四回の審査委員会を経て、今月二十日に委員の全会一致で砂川さんの詩に決定した。二十一日午後、伊志嶺亮市長に答申した選定委員会の仲地清成副委員長は「適切な言葉で、旧五市町村のことを盛り上げ、格調高い歌にまとめられている。郷土愛にあふれ、将来の理想像を高らかに歌い上げている」と評した。伊志嶺市長は「広い視野で旧五市町村のことが広く詠まれている詩で、市民に親しまれるものになると思う。今後、曲も募集して、良い歌にしたい」と話した。
 曲の募集は二十一日から始まり、来月十三日まで。応募は一人一作品で、自作の未発表作品。詳しくは宮古島市企画政策部企画調整課(電話72・3751)まで。

 写真説明 上・詩の選定結果を答申する仲地副委員長(左)=21日、宮古島市役所
 写真説明 下・砂川健次さん
 
 宮古島市の歌 〜黎明(れいめい)の空に〜
 
作詞 砂川 健次

(一番)
群青の波間 ひときわの光
島建(しまだ)ての神の 降り立つところ
みどりを縁取る 潮の花白く
天女の来たりて 水に遊ぶ
ああこれがあなたの美しきまち
これが私の宮古島市

(二番)
白銀の甘蔗(かんしょ) 降り注ぐ真太陽(まてぃだ)
黒土に根ざす 結いの心
湧きいずる泉 豊穣の印
(たわ)まぬ魂 子への宝
ああこれがあなたの豊かなるまち
これが私の宮古島市

(三番)
選ばれしものよ 博愛の民よ
導く若鷹 平和の使者
手を取り飛び立て 愛しきものたち
黎明の空に 赤星見ゆ
ああこれがあなたの希望のまち
これが私の宮古島市

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地デジ放送で意見交換/市保守系・公明党議員団
「民放3社同時放送」/
小禄会長(琉球放送

 【那覇支局】先島地区の地上デジタル放送の早期実現に向け、宮古島市保守系・公明党議員団(池間雅昭会長)と宮古地区選出の砂川佳一県議、多良間村出身の糸洲朝則県議は二十一日、琉球放送の小禄邦男代表取締役会長と面談し、先島地区における地上デジタル放送に向けた現状などについて意見交換した。
 県内の民放三社を代表して、これまで内閣府、総務省、県と協議してきた小禄会長は「現在のアナログ放送では琉球朝日放送が先島地区で放送に至っていないが、地上デジタル放送では三社同時に放送する。放送開始時期については二〇〇九年十月ごろから一〇年四月ごろを予定している」と説明した。
 また、地上デジタル放送については先島地区が現在検討中となっており、放送のための置局設置に十五億−十六億円の費用が必要なことについては「デジタル放送については本島内だけで約六十億円かかる。本島はわれわれだけでやるが、先島地区の放送には三社でさらに約十五億円かかる。これは民放だけの自助努力では難しい。この問題について内閣府、総務省とも協議したが沖縄本島だけが見えて先島が見えないというおかしいことは十二分に理解を示しており、何とかできると思っている」と述べた。
 また、小禄会長は、「情報格差」については「インターネットよりもテレビの方が重要と住民は考えていると思う。先島で民放が見れなくなることは本島と大きな情報格差が生じることになる。この問題を解決するためには県の取り組みも必要で、稲嶺恵一知事がさらに積極的に動くことも重要」との見解も示した。
(垣花尚)

 写真説明・小禄会長と宮古島市保守系・公明党議員団が地上デジタル放送で意見交換した=21日、琉球放送
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不法投棄180d確認/腐った生ごみも悪臭放つ
伊良部

 今月二十九日に実施されるちゅら島環境美化全県一斉清掃を控え、宮古島市伊良部のちゅら島環境美化清掃活動連絡会議は二十一日午後、伊良部島・下地島の不法投棄現場計五カ所を調査した。廃車や廃家電、プラスチック類、家具類など産業廃棄物や一般家庭ごみを合わせた約百八十d(試算)の不法投棄量が確認された。現場は異常なほどの不法投棄物が重なって広がり、現場によっては腐った生ごみが悪臭を放っている。全不法投棄量を撤去するのは難しく、資源循環型社会の構築へはほど遠い実態が明らかになった。
 県は、二○○四年に旧伊良部町を環境美化促進モデル地区に指定。指定に伴い、連絡会議を設置し「ちゅら島環境美化条例」に基づいて環境美化清掃活動を展開。しかし、住民の一部の不法投棄が後を絶たないため、活動の成果は今ひとつ上がらないのが現状だ。
 連絡会議が今年三月末までにまとめた不法投棄実態調査では、この日調査した現場五カ所の不法投棄量は百七十d。未撤去だった現場には、その後も増え続け約百八十dが予想されている。
 不法投棄が目立つのは、佐良浜地区の牧山展望台下方の一部。道路そばでは、廃車五台が捨てられているほか、テレビや冷蔵庫、扇風機などの廃家電や家具類などがごちゃ混ぜになってごみ山となっている。
 また不法投棄防止の警告看板が設置されている場所では、警告看板が無視されて捨て放題。古タイヤ、自転車、バイクなどが生い茂った緑の中で散乱している。調査に参加した一人は「不法投棄物を撤去しても、また同じ場所に不法投棄される。不法投棄する人は何を考えているのか」と怒り心頭の表情で語った。
 この日の連絡会議では、会長が不在だったため、会長に佐和田自治会長の浜川正弘さんを選出した。

 写真説明・不法投棄された車両=21日、伊良部の佐良浜地区

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