農林水産バイオリサイクル研究「施設・システム化」「システム実用化宮古島ユニット」成果発表会(主催・農村工学研究所)が二十日、県宮古支庁で行われ、沖縄総合事務局の樺山大輔氏の基調講演をはじめ、五人の研究者が宮古におけるバイオマス(生物に由来する有機性資源)研究の現状や成果などを報告した。農林水産省の委託を受け、バイオマスの堆肥化やメタン発酵などを研究する同研究所の凌祥之氏は、サトウキビの製糖過程で発生するバガスや肉用牛のふん尿などをバイオマスとして活用することで循環型の社会が実現できると強調した。
同研究所では農林水産省の委託で、「農林水産バイオリサイクル研究」を進めている。バガスや家畜ふん尿に、▽堆肥化▽メタン発酵▽炭化▽複合燃焼―などの処理を加えることで、炭化物やバガス炭、酢液、堆肥、消化液などを主に農業に利用するもの。メタン発酵や複合燃焼で得られたガスによる発電も研究し、施設で活用する研究も行っている。
凌氏は「亜熱帯の気候はバイオマスの生産能力が高く、宮古島は農業が重要な産業で特にサトウキビや肉牛の生産が盛ん」と宮古島の特徴を挙げ、「宮古島の持続的な農業の振興のため、バイオマスがどのように貢献できるかの可能性を提案し、そのための問題解決を図っている」と研究の意義を説明。「各種バイオマスの変換手法や変換物は基本的に安全。宮古島のバイオマス循環利用システムが確立すれば、県内外の他の島嶼やアジア・環太平洋地域への技術発信もできる」と述べた。
沖縄総合事務局農林水産部土地改良課課長補佐の樺山氏は、国が推進する「バイオマス・ニッポン総合戦略」について解説した。バイオマス利活用の促進により@地球温暖化の防止A循環型社会の形成B競争力あるわが国の戦略的産業の育成C農林漁業、農山漁村の活性化―が図られると強調。現在宮古島市で行われているサトウキビの製糖過程から出る糖蜜を利用したバイオエタノールの精製、混合ガソリン(E3)による走行実験など、全国六カ所で行われているバイオエタノール混合ガソリン実証実験を紹介した。また、自治体レベルでバイオマスの利活用を推進する「バイオマスタウン構想」について現在、全国五十三市町村が実現に向けた取り組みを進めており、二〇一〇年度までに三百市町村に拡大する戦略を説明した。
このほか四人の研究者がバイオマスについてそれぞれの研究成果を報告した。同日午前には上野字野原にあるバイオリサイクル研究施設の一般公開も行われ、同施設での研究に関して参加者が理解を深めた。
(砂川拓也)
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