2006年(平成18年)
5月30日 火曜日
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村議会が広域化案可決/多良間村水道事業
31日に宮古島市へ要請
財政難を受け、簡易水道事業の切り離しを検討している多良間村(下地昌明村長)の村議会(西平幹議長)は二十九日午前の臨時会で、宮古島市水道局との広域化協議を求める村提案の要請案を全会一致で可決した。下地村長は三十一日に宮古本島入りし、伊志嶺亮市長と友利恵一市議会議長に広域化に伴う安全、安心な水の確保を訴えながら要請文を提出する。伊志嶺市長は一定の理解を示しているが、広域化して市水道局の前身となる企業団に戻すのか、広域化せず同村の水道事業を受託するのかといった行政上の手続きに加え、これを判断する市議会など市側の反応は不透明のままだ。
多良間村によると、特別会計で運営している同村の簡易水道事業の年間予算は約七千万円。一九九六年度に硬度処理を行う浄水施設を整備しているが、多額なランニングコスト(年間約千四百万―千五百万円)などの影響を受けて厳しい運営を強いられている。現在は特別会計だけで運営できない状況が続いており、ここ数年は一般会計から二千五百万―三千万円を繰り入れて対応している。
二十九日の村議会臨時会で村当局は「水道事業の将来を踏まえた運営基盤の強化、安全、安心な水の確保、災害などに対する危機管理体制の確立は重要な課題」として市水道局との広域化が望ましいと主張。「経験と実績を誇る宮古島市水道局が宮古全域の水道事業を統括、管理していることから当村においても、宮古圏域の住民として、その恩恵を等しく享受できればと願う」などと要請理由を示している。
ただ、事実上の赤字特会を切り離し、財政難を回避したいとする村側の意向もあるようだ。合併協議から離脱し自立を選択した同村だが、依然として厳しい財政事情に変わりはない。水道事業会計への負担は逼迫(ひっぱく)する村財政にとって大きな痛手と言える。こうした負担を軽減させることも広域化を求める要因とみられている。
下地村長は今月十一日にも宮古本島入りし、伊志嶺市長に水道事業の広域化を打診。この際、伊志嶺市長は「国や県も広域化を進めていることを踏まえ、勉強をしながら検討したい」などと理解を示した。現在、市水道局を通じて統合案を検討しており、六月の初旬にも具体案を取りまとめる方針だ。
(山下誠)
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バイオエタノール生産設備/事業化に向け財政支援へ
西川衆院議員らが視察
衆院議員の西川公也氏(自由民主党農林水産部会長)と衆院議員の近藤基彦氏(野菜・果樹・畑作物等対策小委員長)らが二十九日、宮古島市下地にある「バイオエタノール生産設備」などを視察した。視察後、西川氏は、サトウキビ由来の燃料のバイオエタノールについて「これはぜひ早く事業化したい」と、農林部の立場から財政支援などに取り組んでいく意欲を示した。その上で「サトウキビは沖縄の主要作物なので、主要作物を安定化させ、農家の収入拡大につなげたい」とキビ振興策に積極的に取り組んでいく姿勢を示した。
同設備は、環境省の地球温暖化対策技術開発事業の一環で実証実験を展開。同省から委託を受けた石油卸会社りゅうせきの産業エネルギー事業本部の、バイオエタノールプロジェクト推進室(奥島憲二室長)が進めている。
沖縄製糖宮古工場から排出される廃糖蜜を原料に、バイオエタノールを生産。バイオエタノール三%をガソリンに混ぜ「バイオエタノール混合ガソリン(E3)を造り、県宮古支庁や宮古島市の公用車に給油。現在、公用車の性能などをチェックしている。
今月二十五日、バイオエタノール生産事業の支援に向けた関係府省連絡会議が開かれ、宮古にある生産プラント拡充のための財政支援などを検討。八月の二○○七年度予算編成の概算要求をめどに具体策をまとめる方針を決めていた。
こうした動きの中、西川氏らはバイオエタノール生産設備を視察。西川氏は「今、地球温暖化をどうするかとの話の中で、バイオをどう活用していくか、そしてまた農業生産にどう結び付けていくかを考えるために、バイオの先進地(宮古)を視察に来た」と述べた。
近藤氏は「各省庁と協力しながら、農林水産省関係の立場から支援していきたい」などと語った。
写真説明・バイオエタノールの生産過程などを視察した西川衆院議員(左)=29日、下地のバイオエタノール生産設備
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宮古では初確認/ゴイサギが集団営巣
分布地図塗り替えへ
ゴイサギ(サギ科)の集団営巣(えいそう)(コロニー)が二十八日までに、宮古では初めて確認された。二十羽余りが、元気良く巣立った。今後、県内を含めた集団営巣の分布地図が塗り替えられそうだ。
宮古野鳥の会の岡徹会長は「事実ならすごい」と興奮気味に話し「これまで宮古では、ゴイサギの集団営巣は確認されていない」と語り、今後の良好な環境に期待を込めた。
宮古島市の同じ区域内で、今月上旬までに確認された営巣数は十一巣。このうち、九巣からは卵やひながそれぞれ観察された。残り三巣からは卵などは見つからなかった。
ゴイサギの巣は小枝で作った粗雑な皿形。本土などの繁殖地で一羽が産卵する卵数は三ないし六個。宮古では二ないし三個だった。
ゴイサギの成鳥は頭上から背は青黒く、白い冠羽が特徴。翼と尾は灰色。全長約五八a。県内では冬鳥または一部留鳥。
幼鳥と若鳥は、全身褐色に白っぽい斑点があることから、別名ホシゴイと呼ばれている。異名は「ホシちゃん」。
夜間カラスのような鳴き声を出すため、別名は多い。本土では「ヨ(夜)ガラス」、沖縄本島方言では「ユーガラサー」、池間島方言では「ユガラガ・ッザ」と呼ぶ。
写真説明 上・巣立った幼鳥とうっすらと見える親鳥ゴイサギ=27日、宮古島市(撮影・伊良波彌)
写真説明 下・まだ白い産毛が残る幼鳥ゴイサギ
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ハンセン病歴史850ページの本に/南静園・愛楽園
「資料編」を稲嶺知事に贈呈
5年がかり編纂、委員13人従事/啓発活動に全力誓う
【那覇支局】国立療養所宮古南静園入園者自治会(宮里光雄会長)と沖縄愛楽園自治会(金城雅春会長)の両自治会は二十九日、県庁を訪れ、「沖縄県ハンセン病証言集資料編」を稲嶺恵一知事に贈呈した。稲嶺知事は「このような形で皆さんの長年のご苦労をしっかり記録として残すことは大変重要で、多くの人の心に留めてほしいと思う。今までのご苦労に対して心からおわび申し上げたい。県としても教育機関など関係機関に配布し多くの方に読んでいただきたいと思っている」と述べ、今後、関係機関とともにハンセン病の啓蒙(けいもう)啓発活動に全力を尽くすことを誓った。
同証言集資料編は、政府機関や県内外の図書館などに保管されていた沖縄におけるハンセン病に関する歴史的な資料を収集し取りまとめたもの。
宮里会長は「今回発刊された資料編は、難産の末に生まれたもので大変いとおしい気持ちがしている。ぜひ、多くの方に読まれることを念願している」と述べた。また糸満市の摩文仁の平和の礎にハンセン病患者が刻銘されることにも触れ「宮古南静園からも九十人を超える人が今度刻銘されることになった。私たちは同じ県民として扱ってほしいという気持ちでお願いをしてきたが、それに応えていただき本当にありがたい」と感謝した。
金城会長は「この証言集を二〇〇二年から作業を進めてきた。やっと県のご協力をいただき、これだけ大きな分厚い資料集が出来上がった。これを多くの人に見ていただき二度と同じことを繰り返さないように思ってほしい」と話した。
同証言集資料編を発刊するにあたり、南静園と愛楽園の両自治会は、それぞれに編集事務局を設置、両編集事務局を統括する編集総務局を愛楽園自治会に設置して調査などを実施した。両自治会長など関係者や学識経験者など十三人で構成する証言集編集委員会を設置し、その内容などについて協議・検討を行ってきた。発行部数は二千部。県各関係機関や図書館および教育機関などに配布する。
ハンセン病証言集編集事業は〇五年度の県の事業として一般財源から千二百万円が補助された。
〇六年度は、療養所の入所者や回復者などからハンセン病に対する偏見や差別などの被害の実態について聞き取り調査を行い、その記録を歴史的に検証する観点に立って宮古南静園、沖縄愛楽園それぞれの「証言集」を作製し刊行する。
〇六年五月現在の療養所入所者数は宮古南静園が百七人(男性五十九人、女性四十八人)、沖縄愛楽園は三百九人(同百六十四人、同百四十五人)となっている。(川満勇人)
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「沖縄県ハンセン病証言集」編さんの取り組み経緯は次の通り。
〇二年 愛楽園、南静園自治会は聞き取り調査員ボランティアを募り入所者、退所者などに対し調査を開始
〇三年 刑法を専門とする森川琉大助教授(国検証会議委員)が加わり調査作業の組織化を推進 史資料の調査収集を開始
〇四年 証言集編集委員会準備会の立ち上げ 証言者への聞き取り調査数は南静園七十一人 愛楽園百六十八人
〇五年 南静園、愛楽園自治会は「沖縄県ハンン病証言集編集事業」を実施、証言集編集事務局および証言集編集委員会を設置(三回開催)。資料編の編集作業完了、聞き取り調査もほぼ完了した。証言者への聞き取り調査数は、南静園七十四人、愛楽園百九十一人
〇五年までのボランティア調査員数は百三十二人となった。
〇六年五月「沖縄県ハンセン病証言集資料編」刊行
〇七年 各自治会編集事務局で「証言集」編さんを進め、三月をめどに両園それぞれの「証言集」刊行を予定している。
写真説明 上・左から宮里自治会長と金城自治会長から稲嶺知事に「沖縄県ハンセン病証言集資料編」が贈呈された=29日、県庁
写真説明 下・稲嶺知事に贈呈された「沖縄県ハンセン病証言集資料編」
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囲碁を通して交流/東京・大阪からツアー40人
宮古の愛好者たちと手談
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施設使用料減免が9割/市公共施設管理公社
理事会で「多過ぎる」と指摘
宮古島市公共施設管理公社(理事長・下地学助役)の二○○六年度第一回理事会が二十九日午前、伊良部総合庁舎で開かれた。○五年度事業・収支決算などの議案を原案通り承認した。このうち、前里添多目的共同利用施設など五施設を合わせた○五年度使用料収入額は計五百七十一万五千三百四十円、減免額計五百十三万四千六百五十五円で差引実収入は計五十八万六百八十五円。全体の減免額が九割を占めたことに対し、下地助役は「減免が多過ぎる」と指摘し、減免対象者の有無をチェックするよう指導した。営利団体の利用は減免対象外であるが、営利団体を減免した可能性も高い。
下地助役は「公共施設の使用料について条例などに基づいて徴収すべき」と語った。
五つの公共施設のうち、北区の前里添多目的共同利用施設の使用料収入額が百七十七万三千二百四十円に対し、減免額は百五十七万二千四百八十円で差引実収入は二十万七百六十円。減免率八九%。
一方、女性若者等活動促進施設は、使用収入額百十三万一千七百九十五円に対し、減免額百十万四千七十五円で、差引実収入が二万七千七百二十円。
○五年度収支予算は、収入五千二百七十五万円、支出五千二百五十六万円で約十九万円の黒字。
席上、下地助役が、同支所総務課の仲宗根均課長補佐に同公社事務局長への辞令を交付した。
写真説明・公共施設の利用料などについて議論をした理事会=29日、伊良部総合支所
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