200平成18  529 月曜日

偏見ない社会づくりへ/南静園で記念集会
らい予防法廃止10年、国賠訴訟判決5年
次世代層をけん引役に

 らい予防法廃止十周年、ハンセン病国家賠償訴訟熊本地裁判決五周年「記念集会」(主催・同実行委員会)が二十八日、宮古南静園公会堂で行われ、中・高校生を含む百六十人が参加して偏見・差別の打開や南静園の将来構想などについて意見を交わした。城辺中学校二年の平安山佳晃君と宮古高校三年の比嘉加奈子さんは、南静園の入所者や退所者との出会いを通して感じたことを発表。同園入所者自治会長の宮里光雄実行委員長は「子供たちは、豊かな感受性でハンセン病問題についてもしっかり受け止めている。若い力に期待したい」と喜び、次代を担う若い世代が、差別のない社会づくりのけん引役として成長することを願った。

 平安山君は、ハンセン病に関する書物との出会いや南静園自治会との交流などを通して学んだことを紹介し、「一人の人間として、自分も他の人も尊重できる人になりたい」と発表。比嘉さんは「南静園を訪問して感じたことや学んだことを、学校や周りのみんなに伝え、差別や偏見をなくしていきたい」と話した。
 あいさつで宮里委員長は「ハンセン病の長い歴史の先に今後は若い世代の力が加わり、社会全体の新たな展開を望む」と話し、子供たちに対する啓発の意義を強調した。
 比嘉賀雄園長は「命の尊厳を守り、より良い医療、介護、看護の実現に最大限の努力をする」と職員を代表して述べた。
 宮古島市の伊志嶺亮市長は「入所者が高齢化しているため、地域と意見を交えて南静園の将来構想確立に向けた検討会を早急に立ち上げたい」と話した。
 また、西日本弁護団の岩田務さんが、熊本地裁判決から五年間の成果と課題を説明。成果として▽国の全面的謝罪▽療養所入所者の社会生活と遜色(そんしょく)ない生活の保障▽退所者給与金、非入所者給与金の実現▽真相究明の検証会議─などを挙げた。課題としては▽偏見、差別の打破▽療養所の将来構想問題▽医療問題を中心とする退所者の生活保障─などを挙げ、具体的な問題について説明した。
 意見交換会は「共に生きる社会を目指して」のテーマで行われ、八人の出席者がそれぞれの立場で声を出し合った。宮古高校の知念勝美教諭は「南静園は互いの存在をありがたく感じられる場所で、人権教育の第一歩となる所。子供たちがここで感じた人権の尊さを父母や祖父母に伝えることで、理解の輪が広がると思う。今日の『皆さんも将来の社会づくりに参加する大切な一員』というメッセージは子供たちにとって貴重な体験になる」と話した。
 九十三年にわたってハンセン病患者を強制隔離してきた「らい予防法」は一九九六年に廃止されたが、社会に根付いた偏見、差別は払しょくし切れておらず、元患者の人権回復に向けた啓発、療養所入所者と退所者の恒久的な生活保障などの課題が残されている。
 (砂川智江)

 写真説明 上・多数が参加し、ハンセン病問題に関する課題について共に考えた記念集会=28日、南静園公会堂
 写真説明 下・(右)平安山佳晃君、(左)比嘉加奈子さん
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ハンセン病の歴史後世に/南静園将来構想で意見交換会

 二十八日に宮古南静園で開催された「らい予防法」廃止十周年、ハンセン病国家賠償訴訟熊本地裁判決五周年「記念集会」(主催・同実行委員会)で、子供から大人まで八人の出席者による「共に生きる社会を目指して」と題した意見交換会が行われた。在園者と地域住民双方で施設を有効活用するとともに、ハンセン病の歴史を後世に残す南静園の将来構想問題についての提案など、活発な意見が交わされた。
 出席者は、宮古島市の伊志嶺亮市長、宮古高校の知念勝美教諭、「ムツウサの会(宮古退所者の会)」の秋山昇副会長、宮古原告団の野原忠雄さん、全日本国立医療労働組合南静園支部の島尻敏雄支部長、城辺中学校二年の平安山佳晃君、宮古高校二年の与那覇賢美さん、南静園入園者自治会の宮里光雄会長の八人。司会は「ムツウサの会」の知念正勝会長が務めた。
 伊志嶺市長は「国は、最後の一人まで入所者の在園生活を保障すると言っているが、現在の医療体制が崩れていく可能性は高い」と危機感を示し「宮古最大の産業は観光。南静園は、日本最大の長期滞在型保養地として冬場の来島者を受け入れ、宮古病院などではできない健康チェック機能で価値を高めたい」と提案。
 宮里自治会長は「将来構想の整備について国の動きを待っているのでは実現性が低い。負担すべきところは地域で負担し、地域に役立つ施設に生まれ変わらせるべき」と、地元主導型の推進体制を提唱した。
 また、一般参加者の発言の中で、過去に感じたハンセン病に対する恐怖心はぬぐい切れないとして「すべての在園者亡き後は、施設そのものを廃絶する方向で検討してはどうか。その方が精神的にもさっぱりする」との意見があった。これに対し宮里会長は「入所者がゼロになった後のことは今は考えていない。その時が来ればその時の人々が考えてくれて良いと思う。一般社会と同様に開けた環境をつくることが将来構想の基本的考え」と答えた。意見に対しては会場から反発の声も上がったが「長年の間に植え付けられてきた感情を完全にぬぐうのは難しいこと。それだけに、ハンセン病に対するイメージがまっさらな若い人たちは正しく理解し、エイズなど他の問題も含めて社会全体の偏見をなくすようにしてほしい」という発言もあった。
 意見交換会、質疑応答では、それぞれの立場から活発な意見が相次ぎ、社会全体における真の共生には、精神的な問題も含めて多くの課題が残されていることが改めて浮き彫りになった。

 写真説明・ハンセン病問題の課題や南静園将来構想について話し合った意見交換会=28日、南静園公会堂
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かいさばきも力強く/荷川取漁港でハーリー
航海安全と豊漁祈願

 海の恵みに感謝し、海神に航海安全と豊漁を願う漁民の伝統行事、ハーリー(海神祭り)が二十八日、平良にある荷川取漁港で行われた。朝からあいにくの雨となったが、海を滑るように走るスピードや力強さで繰り広げられる爬龍(はりゅう)舟競漕(きょうそう)に会場は熱気に包まれた。
 ハーリーには、船主組合やマリンレジャー関係、各事業所など十三チームが参加。ハーリーがねが鳴り響く中、それぞれ掛け声を合わせて力強いかいさばきを見せると、詰め掛けた観客から大きな声援が沸き上がっていた。
 ハーリー本番の「ユッカヌヒ」(旧暦五月四日)に当たる三十日は▽真謝▽久松▽パイナガマ▽前浜▽池間▽島尻▽高野▽佐良浜─などの各漁港やビーチで開催。夏の風物詩の一つであるハーリーが、宮古をさらに盛り上げていく。

 写真説明・力強いかいさばきで水しぶきを上げる爬龍舟競漕=28日、荷川取漁港
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島の新鮮食材提供/池間島漁民センター
レストラン「なかじゃ」オープン

地域活性化、高齢者の生きがいに

 池間島で取れた新鮮な魚や野菜を使った料理を提供するレストラン、「海のかあちゃん市なかじゃ」(野原悦子代表)が二十八日、改修された池間島漁民研修センター一階にオープンした。同センターを所有する宮古島市、オープンを支援したNPO法人いけま福祉支援センター、地元住民らが出席し、開店を祝った。野原代表は「なかじゃは台所という意味の方言。池間島の台所という思いを込めて名付けた。人のぬくもりを感じられる場所にしたい」と意気込んだ。メンバーの平均年齢は七十五歳。地域活性化とお年寄りの生きがいづくりの両面で、池間島の大きな拠点となりそうだ。

 事業は「健康と癒しのエコツーリズム・海上の道づくり」をテーマに、〇四年十二月、旧平良市が指定した「地域再生計画」の一環。漁民センターを活用した「海の駅」が、計画に盛り込まれたことが契機となった。同事業で同市は漁民センターを改修。一階には「なかじゃ」が入り、二階は八重干瀬(やびじ)のパネル写真などの展示施設となっている。伊志嶺亮市長は「池間の発展を願いながら、オープンを祝いたい」と喜んだ。
 昨年五月から毎週日曜日に朝市を行い、好評を博してきた「なかじゃ」。いけま福祉支援センターの前泊博美さんとデイサービス利用者、野原代表らが話し合いを重ね、池間島の産品を使って料理を提供するレストランとすることを目標に準備を進めた。オープンを支援した前泊さんは「六十五歳以上の人口が五三%と、『超高齢社会』になっている池間島では、お年寄りの皆さんが生きがいを持って働くことこそが地域活性化になる」と意義を強調した。
 オープニングセレモニーでは、野原代表と伊志嶺市長、池間自治会の玉寄憲作会長、池間老人クラブの糸満武会長、いけま福祉支援センターが提供するデイサービスの利用者代表の浜川トミさんの五人がテープカット。テープには特産のカツオがモチーフとして飾られ、池間島らしいスタートとなった。住民らによる余興も次々と披露され、オープンに花を添えた。
 焼き魚や刺し身、煮物など盛りだくさんの定食が五百円と、ボリューム満点の料理に訪れた多くの人たちが舌鼓を打った。川田正明さん(32)=平良=は「安い上に、いろいろな種類の料理があって、とてもおいしい」と顔をほころばせた。また、てんぷらや焼き魚などの総菜が一パック百円で販売されると、途切れることなく列ができ、商品が飛ぶように売れていた。
 「なかじゃ」は火曜日―日曜日の午前十一時―午後二時に営業。毎週月曜日は定休日。

 写真説明 上・テープカットする(左から)玉寄自治会長、野原代表、伊志嶺市長、老人クラブの糸満会長、デイサービス利用者代表の浜川さん=28日、池間島漁民センター
 写真説明 下・池間島の食材を味わう人たちでごった返した「なかじゃ」=28日、池間島漁民センター
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ふれまち・おはなしフェスティバル/紙芝居や人形劇にくぎ付け
会場に子供たちの笑顔と歓声

 今月の児童福祉月間にちなみ、子供たちに物語の楽しさを知ってもらおうと「ふれまち・おはなしフェスティバル」(主催・同フェスティバル実行委員会、宮古島市社会福祉協議会平良支所)が二十八日、平良老人福祉センターで開催された。紙芝居や人形劇などを楽しみに来た親子連れ約三百人が来場し、満員のホールの中は子供たちの笑顔と歓声にあふれていた。
 童謡に乗せた人形劇で会場を沸かせ、フェスティバルがスタート。工夫を凝らした紙芝居やスクリーンを利用した読み聞かせに子供たちは見入り、音楽に合わせて歌を歌ったり手拍子をしていた。
 出演したほとんどの団体は北小、南小、久松小などの各小学校の学区内で結成されたサークル。同フェスティバル以外でも各小学校で読み聞かせなどを行っているという。
 来場した徳嶺あかりさん(南小四年)は「妹とお母さんと毎年楽しみにして来ている。カタツムリの人形劇が楽しかった」と大喜びで話し、母親の正美さんは「このような場はとても大切。家で読み聞かせをするときは子供の目線で興味を持つような読み方に心掛けたい」と話した。
 出演者の一人は「家庭でも子供に本をたくさん読んであげてほしい。親子のコミュニケーションにもなり、感性も豊かになる」と呼び掛けた。
 同フェスティバルは読み聞かせボランティアや親子間の交流を図り、地域福祉活動事業に生かしていくことが目的。

 写真説明 上・工夫が凝らされた紙芝居などが披露された=28日、平良老人福祉センター大ホール
 写真説明 下・多くの子供たちが読み聞かせに耳を傾けた=28日、平良老人福祉センター大ホール
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若さの秘訣「常に前向き」/山本寛斎さんがトークショー
マティダ市民劇場

 au沖縄セルラープレゼンツ・山本寛斎プロデュース「アボルタージュ行くぞ!」上映・トークライブショーが二十八日午後、マティダ市民劇場で開かれた。世界的なデザイナーの山本さんは黒のシャツに黄緑色のネクタイ、白っぽいジャケットを着こなし、問い掛けるような口調や、突然大きな声を張り上げるなど詰め掛けた観客を引きつけながら、これまで歩んできた道について話した。山本さんは「一生懸命生きることの大事さ」を説き、モスクワ赤の広場で開いたショーについて、「赤の広場を外国人が借り切ったのは私が初めて」と振り返り、若さの秘訣(ひけつ)を問われると、「常に前向きに全力で進んでいると若々しく見えるのではないか」と話した。
 トークショーの後は、山本さんが初めてプロデュースした「アボルダージュ行くぞ!」が上映された。

 写真説明・一生懸命生きることの大事さを説く山本寛斎さん=28日、マティダ市民劇場
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