200平成18  130 月曜日

緩効性肥料/農家9割「使ったことない」

環境を考える市民委アンケート調査

 サトウキビ栽培で現在主流で、地下水の硝酸性窒素濃度の上昇要因とされる「速効性肥料」に比べ、地下水保全に効果があるとされる「緩効性肥料」について、九割の農家は使ったことがなく、六割は知らないという実情が、宮古島市「環境を考える市民委員会」(委員長・中西康博東京農業大学助教授)がこのほど行ったアンケート調査で分かった。一方、約半数は緩効性肥料を「使ってみたい」と考え、「地下水保全のためなら使いたい」という声が寄せられた。中西委員長は「緩効性肥料は効き目が長続きするので収量は上がる。施肥回数も一回に減らせるので農家負担は減る」と述べ、地下水保全に効果的な緩効性肥料の普及に理解を求めた。

 同調査によると、現在九三%のサトウキビ農家が使う速効性肥料は、施肥後すぐに効果が表れるものの、その多くはサトウキビに吸収されずに地下水に浸透。家畜ふん尿、生活排水と並び、地下水の硝酸性窒素濃度上昇の要因となっている。
 一方、まだ二%の農家しか使っていない緩効性肥料は、肥料成分が徐々に溶け出すように作られている。このため長期間にわたり肥料効果が続き、サトウキビのように栽培期間の長い作物は特に肥料成分が効率よく吸収され、地下水への窒素分の流出も少なくなる。
 同委員会では、緩効性肥料をPRするチラシ配布と併せてアンケート調査を実施した。アンケートの配布総数は全農家の十分の一に当たる五百六十枚で、回答総数は二百十八枚。回答率は三九%。
 それによると、緩効性肥料を「知らなかった」は六四%。「よく知っている」「ある程度知っている」を合わせた三三%の約二倍に上った。「使ったことがない」は八七%で、周知されていない現状が浮き彫りとなった。
 しかし緩効性肥料を使ってみたいかの問いには、四八%が「使ってみたい」と回答。その理由として、六三%は「地下水を保全したい」と考えており、「効果が長持ちし、サトウキビがよく育ち、地下水汚染が少なくなるならぜひ使用したい」「地下水は宮古島の命、みんなで守らなければならない」などの意見が多くあった。
 「もっと詳しく知りたい」「使ってみたいが具体的に分からない」「試験データが少ない」といった、緩効性肥料の説明を求める声も。「農家に理解を求め、農家が自発的に使用するよう進めるべき」「農薬への助成金を緩効性肥料に振ることを希望する」など、行政への要望もあった。
 中西委員長は「緩効性肥料普及に向けた説明会を頻繁に行うことが重要。また、モデルほ場があれば、農家がより認識しやすい」と述べ、行政や農業関係者の今後の取り組みを期待した。
 緩効性肥料に関する問い合わせは宮古島市環境保全課(電話77・8059)、農政課(電話76・6840)まで。


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航海安全・豊漁祈る 旧正月・伊良部佐良浜 

 旧暦一月一日に当たる「旧正月」の二十九日、慣習や伝統を守り続ける漁村の宮古島市佐良浜や池間島、西原、久松などでは、旧年中、無事過ごせたことに感謝するとともに、この一年の航海安全、大漁、無病息災などを祈願し、新年を盛大に祝った。
 漁村のうち、佐良浜地区の漁港には、早朝から漁師らが係留中の漁船に乗り込んだ。船首や船尾に色鮮やかな大漁旗を次々と掲げると、鮮やかな船団に包まれた。大漁旗がはためく下、船主らは神酒、海の幸や豚肉などのごちそうを供え、豊漁と安全操業を祈願した。
 佐良浜集落内は終日、旧正月ムードで一色。小雨が降る中、分家の関係者らは海の幸のごちそうなどを持参し、本家を訪問。先祖にごちそうを供え、子孫繁栄、無病息災を祈った。本家や船頭宅などは祝宴でにぎわった。
 神女役のツカサンマ(司母)らは、各司母宅を回り、歌・踊りで旧正月を盛り上げた。このうち、字池間添の司母の中で最高地位にある名城正子さん宅では、息の合った歌と華やかな舞に、四つ竹を鳴らす音が響いていた。
 名城さんらは「伊良部島がさらに発展・繁栄するように祈った」と笑顔で話した。
 マグロやカツオなどを操業する浜川敬二さん(63)は「去年は台風の影響で水揚げ高は落ち込んだ」と話し「今年は大漁したい」と新年に希望を託した。浜川さんは、黄金丸(七・三d)の経営者で船長。今年で漁師歴二十五年。



写真説明(上)・はためく大漁旗の下、漁師らは航海安全・大漁を祈った=29日、伊良部の佐良浜地区

写真説明(下)・ツカサンマ(司母)らは歌・踊りで盛大に祝った=29日、伊良部の佐良浜地区



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助役問題、与党内で不協和音 「そうぞう」も絡み調整難航

 不在が続く宮古島市(伊志嶺亮市長)の助役問題で、伊志嶺市長の与党内調整がなかなか進まず、さらに会派「そうぞう」との調整も難航するなど、宮古島市初代助役の誕生にはまだまだ時間を要しそうな展開となっている。また、難航する調整作業の中で、与党内の不協和音も生まれつつあり、伊志嶺市長がこの難局をどのように打開するか注目となっている。
 昨年の市議会十二月定例会で、伊志嶺市長が提案し、与党の反対もあり否決された「助役二人制」については、現在も与党内調整ができていない。
 こうした状況から今月に入り、与党議員会の仲間明典会長が「とりあえず現状のまま助役一人を提案する」との方針を伊志嶺市長に伝え、市長もその方針で作業を進める意思を示していた。
 しかし、現状のまま一人を提案するとしても、「誰が提案されるか」が焦点となり、人選案については水面下で激しい動きもあることから、その調整も難しい状況となっている。
 「そうぞう」の豊見山恵栄会長は、以前にも「助役二人制は市長が提案し、我々も賛同した。方針が簡単に変わることは問題。『そうぞう』と与党との話し合いを持ちたいと思っても、与党内に拒否する議員もいるようで、話が進まない」との現状を説明している。
 初代助役が誕生するまでには、まだまだ多くの解決すべき課題が横たわっており、伊志嶺市長がこの難しい状況の中で、どのような判断を下すか注目となっている。
 

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下里君(上野中3年)ら3人が優秀賞

ドイツ年記念スピーチコンテスト

 「日本におけるドイツ年記念スピーチコンテスト」(主催・沖縄日独協会、博愛国際交流センター)が二十九日、うえのドイツ文化村博愛記念館で開催された。中学、高校、一般の部に計十一人が出場し、「ドイツ」をテーマに宮古とのかかわりや日ごろの考え、思いなどをまとめて熱弁を振るった。下里真之君(上野中三年)、下地恵美さん(宮古高校一年)、嘉手苅淳子さん(48)=下地字上地=の三人がそれぞれ優秀賞を受賞した。三人は、大阪神戸ドイツ連邦共和国総領事館に招待される。
 このスピーチコンテストは、ドイツとかかわりが深い宮古島において、ドイツについての理解と知識を深め、グローバルな人材の育成につなげようと開催。一般公募の出場者らが、ドイツと日本の特徴の違いや、ドイツ文化から学ぶべき点などに着目し、それぞれの考えを堂々と披露した。
 中学の部で優秀賞を受賞した下里君は「ドイツから心のかがり火を」の演題で発表。ドイツ統一に際して「悲しい壁を乗り越えたドイツは偉大な国だと思う」と感想を語り「今こそドイツが、平和な世界に戻す先導者になってほしい」と主張した。「受賞できてうれしい。今後、宮古とドイツのかかわりが増えることを願っている」と受賞感想を語った。
 高校の部で受賞した下地さんは、兄のドイツ留学で自身の胸に沸き上がった焦りや劣等感を感じつつも、ALTとの出会いなどを通して「自分なりの努力で夢を探していく」と、さわやかな結論にたどり着いた心情を告白。受賞後、「日ごろの思いを素直に語った。将来はぜひドイツに行ってみたい」と笑顔で話した。
 一般の部で受賞した嘉手苅さんは、トライアスロン大会のボランティア活動で出会ったドイツの友人との個人的交流を紹介。発表後、「受賞は百パーセントびっくり。外の世界に目を向け、幅を広げたいと常々思っている。未来ある子供たちにも外国の異文化に関心を持ってほしい」と述べた。
 開会に先立ち山内啓邦沖縄日独協会長は主催者を代表し「このコンテストが宮古島とドイツとの友好の絆をさらに発展させ、末永い交流の記念となることを願う」とあいさつを述べた。
 宮古島では、一八七三年、ドイツの商船「ロベルトソン号」が旧上野村宮国沖合に座礁し、住民が乗組員八人を救助したとされる歴史的美談があり、このエピソードを基に「うえのドイツ文化村」が建設されるなど、ドイツとのかかわりは深い。
 「日本におけるドイツ年」は、二〇〇五、〇六年の二年間で、古き良きドイツのイメージアップ、現代のドイツ像を伝えることなどを目的に、全国各地で三百件以上の催しが開催されている。
 出場者は次の通り。(敬称略)
 【中学の部】▽優秀賞=下里真之(上野中三年)「ドイツから心のかがり火を」▽福島新(伊良部中三年)「ドイツの歴史と現代」
 【高校生の部】▽優秀賞=下地恵美(宮古高校一年)「あこがれの国へ」▽鹿川舞(宮古農林高校二年)「私が知っているドイツという国」▽伊良皆優子(宮古高校三年)「見る庭とする庭」
 【一般の部】▽優秀賞=嘉手苅淳子「夢、そしてドイツの風」▽本田光「ドイツビールに学ぶ島づくり」▽宮國善好「ドイツ、日本、博愛の里」▽長山サツキ「宮古島のドイツ文化村」▽三村道夫「ドイツといえば」▽大嶺弘明「ドイツがもたらしたもの」


写真説明(上)・11人の出場者がドイツをテーマに日ごろ感じていることなどを発表した=29日、うえのドイツ文化村博愛記念館

写真説明(下)・優秀賞を受賞した(左から)下里君、下地さん、嘉手苅さん。右は山内沖縄日独協会長=29日、うえのドイツ文化村博愛記念館

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熊澤南水さん、下地恵美子さんが朗読

沖縄可否の会 朗読夢舞台

 本を持たず舞台上で暗記した物語を語る「朗読夢舞台」(主催・沖縄可否の会宮古島公演実行委員会)が二十八日夜、下地地区高千穂のT&K Houseで行われた。国際芸術文化賞受賞者の熊澤南水(なんすい)さんが山本周五郎作「二粒の飴」を、下地恵美子さんが津村節子作「麦藁帽子」を披露。静かに語りながら登場人物すべてを演じ、言葉とわずかな身ぶりで観衆を物語りの世界へと引き込んだ。
 熊澤さんが語った「二粒の飴」は、武家の妻として誇り高く生きた女性の生き様を描いた作品。熊澤さんは言葉一つ一つをかみしめながら主人公の女性を演じ、子を思う母の気持ちや娘へ贈る母としての人生訓を物語りを通して伝えた。「麦藁帽子」は息子の突然の死を乗り越えた老夫婦の家族への愛を描いた作品。下地さんは各場面に合わせて表情豊かに語り、息子や孫への深い愛情を巧みに表現した。観客は言葉が持つ魅力と表現力で物語の世界に引き込まれ、時折涙をぬぐう姿も見られた。
 朗読を始めて二十五年という熊澤さんは「朗読の魅力は言葉の美しさにある。美しい日本語を伝えたい」、下地さんは「本を深く読むことができる。これからも『この一言が言いたい』という気持ちを朗読で伝えていきたい」と話した。
 可否の会とは、主婦を中心に東京で朗読教室を開講している三上左京さん主宰の会で、全国各地で舞台朗読公演を行っている。宮古島公演を主催した実行委員長で宮古養護学校長の玉元江美子さんは、宮古での可否の会立ち上げへ向け多くの参加を呼び掛けている。



写真説明(上)・「麦藁帽子」を語った下地恵美子さん=28日、下地地区高千穂のT&K House

写真説明(下)・武家の妻の生き様を描いた「二粒の飴」を語る熊澤南水さん



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   新理事長に砂川拓也さん本年度の事業計画など承認

    宮古青年会議所総会

 宮古青年会議所(宮古JC)の第四十五回通常総会が二十九日、宮古島市内のホテルで開かれ、今月一日付で就任した砂川拓也理事長に宮里敏彦直前理事長から理事長バッジが伝達され、新執行部がスタートした。総会では、二〇〇五年度事業報告と収支決算、〇六年度基本方針・事業計画と収支予算など八議案を審議し、原案通りで承認した。砂川理事長は「宮古島の未来を真剣に思う気持ちを強く持ち、気負わず、自身を持ち謙虚かつ大胆に行動する」と決意を述べた。
 〇六年度のスローガンは「知恵・信頼・仁愛・勇気・厳格・明朗」。主な事業計画は▽美ぎ島オトーリ2006の実施▽宮古島の環境と水問題を見直す事業▽ひとづくり講演会の実施▽JC杯少年野球大会の実施▽宮古島東西大綱引きの実施―など。
 総会に来賓として招かれた宮古島市の伊志嶺亮市長は「変化する経済情勢に即応して、持てる力をフルに発揮し、新時代のリーダーとしてますます活躍することを期待する」と激励した。県宮古支庁の兼城克夫支庁長、宮古島商工会議所の中尾英筰会頭も祝辞を述べた。


写真説明・ 06年度基本方針・事業計画など8議案を審議し承認した=29日、市内のホテル共和



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