200平成17  1028曜日

宮古病院脳外科医/以然、確保のめど立たず

 県立宮古病院(恩河尚清院長)脳神経外科の医師が十月一日に不在となってから一カ月が経過しようとしているが依然、医師確保のめどは立たない状態が続いている。今月二十五日には、小池百合子内閣府沖縄担当大臣が、宮古病院の脳神経外科医を含めた医師急募を呼び掛けているが、県福祉保健部県立病院管理課にはまだ、医師からの問い合わせはない。恩河院長は「患者には沖縄本島の病院に行ってもらわなければならず、その負担は非常に大きい。一日も早い医師確保が必要だ」と訴えている。
 医師確保がままならない状況に「少なくとも今年度いっぱい(来年三月まで)は医師不在の状況だろう」と、危機感を示した。その上で、「治療が必要な患者がいる場合、必要な処置を施し、患者は沖縄本島まで行かなければならない状況。物理的にも経済的にも精神的にも、患者の負担は非常に大きい。また、ケアする家族など周囲の人たちにも負担がかかる」と、続く住民の負担を強く懸念し、小池大臣の呼び掛けに期待を寄せた。
 県立病院管理課では、本土の大学病院などとの交渉を続けているが、脳外科の医師不足を理由に、確保は極めて難しい状況にある。小池大臣の呼び掛けに関して、「国の政策として取り組むべき」など、一般からの意見はあったものの、医師からの問い合わせはない。
 同課の砂川亨副参事は「どこの大学病院に当たっても、脳外科医が足りない状況。医療過誤訴訟が増加する社会情勢などもあり、一人ですべての患者に対応し責任を負うため脳外科医は、精神的にも非常にきつく、それを敬遠するのが現実」と指摘。「県立宮古病院、八重山病院を複数の医師が担当するのが一番望ましいが、非常に難しい」と話した。
 同病院の脳神経外科は一九九三年に開設された。当初は琉大の医局から医師が派遣されていたが、九九年からは同大教授のつながりで福岡大学からの医師派遣を受けていた。しかし福岡大も今年三月までで派遣を中止。四月以降は地元の医師が同科を担当していたが任期は七月までで、八、九の両月は県立病院から臨時の医師が派遣されている状態だったが、この措置も九月いっぱいで終了した。
 旧宮古市町村会では今年六月に医師確保を県と琉球大学に要請。県は八、九の両月の県立病院からの医師派遣の措置を取ったが、琉大は医師不足を理由に、派遣に難色を示した。九月の要請でも、県から状況が進展しないことが報告された。
top.gif (811 バイト)

はしか・風疹、早めの予防接種を/年齢により無料が有料へ

 予防接種法の改正に伴い来年四月一日からはしかと風疹(三日はしか)の予防接種制度が変わる。これまでは一歳から就学前までに、はしかと風疹のワクチンを別々に接種していたのが、法改正により混合ワクチンを第一期(一歳)と第二期(五―七歳)の二回接種することとなった。第一・二期以外での接種は自己負担となる。宮古福祉保健所と宮古島市福祉保健部では、はしかと風疹両方のワクチンをまだ接種していない未接種者は、助成が受けられる来年三月三十一日までに接種するよう呼び掛けている。問い合わせは宮古島市(電話77・7595)、宮古福祉保健所(72・2420)まで。
 これまでは一歳から就学前の七・五歳までに、はしかと風疹の予防接種を無料で受けることができていたが、法改正により来年四月一日以降からは、感染しやすい一歳(第一期)と、抗体が弱まる五―七歳(第二期)の二回混合ワクチンを受けることとなり、それ以外での接種は定期接種対象外で自己負担となる。自己負担となった場合、はしか、風疹とも約五千円かかる。
 宮古福祉保健所によると二〇〇四年度末現在のはしかの未接種者は百二十九人、風疹の未接種者は七百七十人。対象者の約八割がはしか予防接種を受けているのに対し、風疹は約五割ほどしか受けておらず、両方を接種している対象者は少ないという。
 はしか、風疹ともに特効薬はなく、予防接種のみが唯一の対策となっている。
 同所の高江洲均所長は「予防接種は来年四月一日からは有料になる。無料で受けられる期間に、早めにはしかと風疹の両方のワクチンを受けてほしい」と話し、保護者の理解と周知を求めた。
 宮古島市福祉保健部健康増進課では来年三月にかけて各地区で定期的に予防接種を行っており、期間中の接種を呼び掛けている。同課の奥平一秀課長は「通知があった場合はその日程に従って予防接種を受けてほしい。感染してからでは遅い。お母さんたちの理解をお願いしたい」と話した。

 はしか(麻疹) 感染力が強く、高熱や発疹の症状が出る。重症化した場合は、脳炎などの後遺症や死亡するケースもある。
 風疹(三日はしか) はしかに比べ感染力は弱いが、脳炎など重症化することもあり、妊婦が感染すると先天性風疹障害児が生まれる。


top.gif (811 バイト) 

「ヨーンティル」響く/伊良部・伝統祭祀「ユークイ」

 伝統の祭祀「ユークイ(富みをこう)」が二十七日、宮古島市伊良部で執り行われた。旧年中の豊作・大漁などに感謝し、向こう一年間の五穀豊穣を祈願した。各聖地では、全員が歓喜に満ちたクイチャー舞いを奉納。全地域で神歌の「ヨーンティル(富みが満ちてください)」を唱和する声が響き、祈りと喜び一色に包まれていた。
 「ユークイ」は、北区(前里添、池間添)と南区(伊良部、仲地、国仲、長浜、佐和田)で行われた。
 北区では、二つの集落の女性たちが一緒に参加。仲間ニーと呼ばれる聖地では、神女役のツカサンマ(司母)を中心に力強いクイチャーを奉納した。
 今回でユークインマを「インギョウ(卒業)」する数え五十七歳の女性たちが参加。体いっぱいの表現でクイチャーを踊って満喫した。
 那覇市から里帰りして参加した伊佐順子さんは「インギョウすることになった。感動で胸がいっぱいです」と感無量の表情で話した。
 一方、南区では、各集落がそれぞれの御嶽でユークイを執り行った。
 このうち、仲地集落の住民らは「ネバル」と呼ばれる御嶽でクイチャーを奉納。女性たちは着物のすそを持ち上げながら「ユーンティル」を何度も歌った。女性たちは、プレゼントされたタオルを肩に掛けて舞った。
 北海道から初めての「ユークイ・ツアー」客八人が参加し、大勢の住民らを喜ばさせた。
 
 

女性たちはプレゼントされたタオルを肩に掛けて踊った=27日、伊良部の南区


楽しそうにクイチャー奉納した女性たち=27日、伊良部の北区


top.gif (811 バイト)

生の絵画じっくり観賞/福嶺中で「出前美術館」

 子供たちに絵画に親しんでもらおうと、二〇〇七年九月に那覇市に開館する県立現代美術館(仮称)の教育普及プレイベント「出前美術館」(主催・県教育庁)が二十七日、宮古島市立福嶺中学校(仲宗根恵司校長)で行われ、同美術館に収蔵予定の四作品を授業形式でじっくりと鑑賞した。生徒らは普段なかなか見ることのできない生の絵に見入り、思い思いに感想や印象を話し合った。県教育庁によると、離島での出前美術館は今回が初めて。
 出前美術館は〇七年秋に那覇新都心に開館予定の県立現代美術館(仮称)に収蔵される美術品を各学校の美術授業に貸し出し、鑑賞指導の教材とするもの。今回の展示は、安次嶺金正氏の「祭り」、大嶺政寛氏の「糸満」、名渡山愛順氏の「白地紅型を着る」、安谷屋正義氏の「望郷」の四作品で、いずれも県出身画家の代表作。
 このうち、米軍基地を描いた抽象画「望郷」については、「戦争が終わった焼け跡みたい」「立っているのは軍人さんか」「絶望を表すために白い色を使ったのか」といった感想や意見が出された。
 生徒らの話の後に説明に立った前田比呂也さんは「琉大付属中で同じ絵を見せたときは、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した直後で、基地のそばに暮らしている生徒も多いから、基地を思い浮かべる人が多かった。大事なのは『私』が絵を見ているということ。自分がこの絵を見て感じることが大事」と、人それぞれの見方があることを説明した。
 授業を担当した狩俣亜子教諭は「作品を描く場合に一人ひとり違う作品ができるのは当然だから、作品を見る場合に違う感じ方をするのも当たり前。自分の見方で感じてほしい」と話した。
 仲宗根校長は「本物の絵や音楽に触れる機会は少ないので大変ありがたい」と、その意義を強調した。出前美術館はきょう二十八日、下地中学校でも行われる。

 写真説明・興味深そうに作品を鑑賞する生徒ら=27日、福嶺中学校

top.gif (811 バイト)

黄色が鮮やか/リュウキュウトロロアオイ

 リュウキュウトロロアオイが鮮やかな黄色の花を咲かせ、秋の濃緑の自然に彩りを添えている。
 低地などに生えるアオイ科の一年生草本。鹿児島県のトカラ列島以南に分布する在来種。茎の高さは一bほどに成長する。花は直径約十a。花の内部の基部付近は紫色を帯びている。 
 宮古での戦中・戦後では、リュウキュウトロロアオイとアオガンピ(ジンチョウゲ科)は和紙の原料として使われていた。現在、宮古の自然でリュウキュウトロロアオイを見つけるのは難しい。
 この植物の花は、オオハマボウ(方言名ユーナ)とオクラの花にそっくり。リュウキュウトロロアオイの葉っぱが三―五つに裂片しているので区別できる。

 写真説明・黄色い花を咲かせるリュウキュウトロロアオイ=27日、宮古島市平良(撮影・伊良波彌記者)

top.gif (811 バイト)

   下地千都勢さん(北中1年)緑化ポスターで最優秀賞

/地球規模で訴え

 二〇〇五年度県国土緑化運動・育樹運動ポスター原画コンクールで、市立北中学校一年の下地千都勢さんが最優秀賞に輝いた。下地さんは大木が地球を覆う様子をダイナミックに表現し、絵で地球規模の緑化運動を訴えた。二十七日午後、県宮古支庁で兼城克夫支庁長が表彰状を伝達し「自然に対し高い思想を持っている。これからも緑化運動に協力してほしい」と下地さんの受賞をたたえた。
 このコンクールは県土緑化運動の一環で実施しており、植樹および森林や樹木の保護、保育の助長並びに一般県民の緑化思想の高揚を図ることが狙い。今回のコンクールには県内の小、中、高校の二十一校から計百二十三点の応募があり、このうち八点が最優秀賞に選ばれた。
 下地さんの作品は独創性にあふれ、環境に関する問題を地球規模で考えなければならないことを訴えている。絵の中の地球には「三つの芽」があり、その芽は下地さんが普段身の周りで見える自然を描いた。虹色は大勢の人が緑化に協力している様子を表現。緑化運動の地球規模的な広がりを希望している。
 表彰伝達式で下地さんは「こんな大きな賞をもらうことができて本当にうれしい。緑化はみんなの力で、運動が地球規模に広がってほしい」などと喜びを話した。
 兼城支庁長は「下地さんの作品講評はこれ以上ない評価。大変素晴らしい作品だと思う。これからも絵を通して環境問題を勉強してほしい」と呼び掛けていた。
 県内で最優秀賞に選ばれた作品八点は今年中に全国の中央審査会に応募される。この審査会で最優秀賞に選ばれれば国土緑化運動のポスターとして採用される。

 写真説明(上)・緑化に関するポスターコンクールで最優秀賞に輝いた下地さん(右)。左は表彰状を伝達した兼城支庁長=27日、県宮古支庁

 写真説明(下)・最優秀賞に輝いた下地さんの作品


top.gif (811 バイト)