200平成1  31曜日

新市への補助金 不透明に/06年度予算編成に影響も

 多良間村を除く宮古五市町村合併による「宮古島市」誕生を十月一日に控える中、その二〇〇六年度予算に国の財政優遇措置として交付されるはずの「合併補助金」の先行きが、総務省と財務省の見解の食い違いによって、不透明な状況になっている。宮古五市町村合併協議会(会長・伊志嶺亮平良市長)では新市建設計画の財政シミュレーションの中で同補助金を見込んでいるが、交付されなければ〇六年度事業内容の見直しなど予算編成に影響を及ぼしかねず、関係者は「今さら出ないと言われても困る」と戸惑いを隠せない。
 合併特例法が〇四年五月に改正されたが、〇五年四月以降に合併する自治体にも補助金を交付する意向の総務省に対し、財務省は〇五年三月末までに合併した自治体に限るとの見解を示し、双方が食い違いを見せているため。
 合併協事務局は「市町村には総務省から、『補助金は出るもの』との説明があったのではないか」と説明した。
 合併協の中で財政シミュレーション作成にかかわった平良市の狩俣照雄土地等対策局長(前財政課長)は「市町村は合併に向け補助金を見込んでいるのに、今さら出ないとなると、詐欺にあったようなもの」と語気を強めた。同市の石原智男財政課長も「なぜこのようなことになっているのか」と当惑し、「補助金がないということになると、一般財源で工面しなければならないという苦しい状況になる」と懸念を示した。
 このような状況の中、県市町村課は「合併自治体に補助金は必要。知事が八月に上京するので、その際に国に同補助金の交付を要望することを検討している」と話した。
 同補助金は、合併に伴う電算システム変更、防災無線の統一など、地域の一体性強化が必要な事業について、人口に応じて配分されるもの。宮古島市には三年間で四億五千万円が交付される予定となっている。宮古島市の合併にかかる電算システムの統合費用は十億円に上り、今後の成り行きによっては、財源確保で厳しい状況に追い込まれる可能性もある。
 同補助金や合併特例債などの財政優遇措置は、改正前の合併特例法では〇五年三月末までに合併する自治体に対し、国からの合併補助金が交付されるという規定だった。その後、合併を推進するため同法が〇四年五月に改正され、〇五年四月から〇六年三月末までに合併する市町村を経過措置団体とすることで、優遇措置が延長されていた。
 これにより総務省は、経過措置団体に対しても合併補助金の交付を見込んでいたが、財務省は〇五年度以降に合併する市町村へは配分を認めない方針を示し、同補助金は宙に浮いた格好だ。
 県内では、具志川市など四市町が合併して今年四月一日に発足した「うるま市」で、合併後初めてとなる六月定例議会での予算審議中に、合併補助金の交付が確定していない状況が判明。同市への交付の有無で、宮古島市の今後についても想定できるだけに、同市の動向が注目される。
 

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散策しながら俳句詠む/80人の子供たちが吟行

 夏休み子ども吟行会(主催・宮古毎日新聞社、宮古島ジュニア俳句育成会)が三十日、平良市のカママ嶺公園で開かれた。幼稚園児から高校生までの約八十人が参加。公園内を散策しながらそれぞれテーマを探し、俳句の奥深さや楽しさを学んだ。約二百点の俳句の中から上間星良さん(城辺小五年)の「カマキリが 草木に化けて 動いてる」など特選六点、入選十四点が選ばれた。「円虹」主宰でホトトギス同人の山田弘子さんが子供たちを指導した。
 出発前に山田さんは「歩きながら、いろいろなものを見つけてください。暑く感じたら、暑い気持ちをそのまま表現して」とアドバイス。子供たちは照りつける太陽や、ほおをなでる心地よい風を感じながら、カママ嶺公園から同市中央公民館まで吟行した。子供たちは見つけた花のにおいをかいだり、鳴き声を響かせるセミを探したりと、短冊を片手におのおののテーマを探していた。
 子供たちが詠んだ俳句は山田さんによって選考され、表彰式で発表された。作品が発表されると大きな拍手と喜びの声が上がっていた。
 この会は、子供たちが吟行を通して俳句づくりを楽しみ、感性を磨くことが目的。同育成会の結成後初の活動。
 表彰式で、宮古毎日新聞社の松原清吉編集局顧問は「俳句育成会が結成されうれしく思う。社を挙げて活動をサポートしたい。九月から本紙の文化のページで全国から公募した俳句を掲載するので、たくさん応募してください」と呼び掛けた。
 宮古島ジュニア子ども俳句育成会の伊志嶺亮会長(平良市長)は「身の回りを見つめて、たくさん俳句を作りましょう。みなさんの作品で充実した文化のページにしましょう」と語った。
 佐次田陽光君(福嶺小四年)は「パイナガマの海やハイビスカスがきれいだった。気持ちを短い言葉で表現することが難しかったけど楽しかった」と笑顔で話した。
 表彰式後には、俳句教室も開かれた。▽自分の言葉で表現すること▽自然を詠むこと▽季節の言葉を入れること―などが指導された。

夏休み子ども吟行会入選者
 【特選】▽垣花斉志(城辺小五年)「やきゅうじょう せみがおうえん しているよ」▽上間星良(同)「カマキリが 草木に化けて 動いてる」▽善平絵美(南小六年)「低飛行 トンボのむれの 大行進」▽大山智子(狩俣中一年)「夏の風 私の体を とおってく」▽砂川友里(同三年)「トンボたち 風に流され どこ行くの」▽洲鎌成子(宮高一年)「雲影に 追いこされ行く 夏の旅」
 【入選】▽与座なるみ(東小三年)「じょろうぐも えさを食べて ふとってる」▽砂川まりあ(久松小三年)「じょろうぐも いっぱいえさを 食べている」▽川満未来(東小三年)「赤トンボ たいふうしらせに やってきた」▽新崎元紀(城辺小三年)「カマキリは 足がはやくて とれないよ」▽与那覇千穂(狩俣小四年)「空の下 みんなのあせが 光ってる」▽泉舞依(福嶺小四年)「カママミネ みどりがいっぱい きもちいな」▽伊志嶺斗夢(同)「さとうきび かぜにふかれて おどりだす」▽新崎昇太朗(城辺小五年)「くさむらに かまきりがいた にげてたよ」▽亀浜美香(東小六年)「せみの声 みんないっしょに 大合唱」▽辻晴花(神戸市渦ケ森小六年)「夏の朝 元気になくよ セミの声」▽善平美紀(平良中一年)「ゆうゆうと むれで飛んでる トンボたち」▽久貝大樹(狩俣中二年)「ガジュマルの 木の影蝉が ひと休み」▽与儀ひなみ(平良中三年)「バッタとぶ 青空の下 生き生きと」▽田名愛美(翔南高三年)「木漏れ日が 波うちゆれる 夏景色」

 山田 弘子(やまだ・ひろこ) 俳人。1934(昭和9)年8月24日生まれ。兵庫県出身。武庫川女子短大英文科卒。「円虹」主宰者でNHK教育テレビ「俳壇」の選者。80年、ホトトギス同人。90年、第2回日本伝統俳句協会賞。95年、俳句月刊誌「円虹」創刊・主宰。

 写真説明(上)・俳句のテーマを探し散策する参加者ら=30日、平良市のカママ嶺公園

 写真説明(下)・入選作品が発表されると大きな拍手が起こっていた=30日、平良市中央公民館


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まるでリボン/ウスバキトンボ、集団で休息

 夏に大群で大移動するウスバキトンボ(トンボ科)が今月中旬から、宮古諸島に飛来し、青空をバックに乱舞している。地上の小枝に並んで休む姿は、まるで「リボン」の芸術作品のようだ。
 ウスバキトンボの体色は、雌が淡いオレンジ色、雄は成熟すると赤色に変わる。体長約四六_。
 南風が安定する夏場、東南アジアなどから風に乗って飛来。宮古の各地で群舞し、大移動の季節を告げる。
 ウスバキトンボの大群は、これから北上を続ける。沖縄本島、九州、東北へ北進し、最終目的地の北海道を目指す。北海道へ渡る謎はまだ解明されていない。

 写真説明・仲良く休むウスバキトンボ=30日、伊良部町(撮影・伊良波彌記者撮影)

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宮古地区自己破産 過去5年間で188人

「サラ金被害をなくす会」まとめ

 沖縄クレジット・サラ金被害をなくす会は三十日、県内の多重債務による自己破産や特定調停の申立件数をまとめた。宮古地区では過去五年間で百八十八人が自己破産を申し立て、特定調停の申立件数も千三百二十件に上っている。同会は「宮古地区は法的処理した多重債務者が少ない」などと指摘しながら今回の数字が氷山の一角であることを示唆、宮古地区における多重債務問題の深刻化を懸念した。県全体では〇四年、二千三十三人が自己破産、特定調停の申立件数は一万七百八件あった。
 同会は裁判所の資料を基に自己破産、特定調停申立件数をまとめた。それによると那覇地方裁判所平良支部に申し立てられた自己破産は二〇〇〇年が十一件、〇一年が十九件、〇二年が三十件、〇三年が六十五件、〇四年は六三件と年を追うごとに増加している。貸金業者を裁判所に呼び、返済方法などについて話し合う特定調停の申し立て件数も二〇〇〇年の二十五件から増え続け、〇二年には四百七十九件の申し立てがあった。
 過去五年間の申立件数千三百二十件のうち一人当たり四・五社から借り入れているとした場合、合わせて二百九十三人が特定調停を申し立てていることになる。
 これらの結果から、宮古地区では過去五年間に約四百八十人が借金問題で裁判所を利用。宮古地区の全人口から割り出すと、百十五人に一人が多重債務で苦しんできたということが分かった。
 同会は宮古地区の多重債務者について、法的処理をした多重債務者が少ないことや、法的処理を敬遠する傾向があることを指摘。また、電話相談が少なくないことなどを挙げ、法的な解決にたどりつけない多重債務者が多いことを懸念し、宮古地区における相談体制の充実、相談機関と専門家のネットワーク構築の必要性を訴えている。

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「生き物は環境が大事」/「湧水に暮らすエビ・カニ類」講演会

 宮古の「湧水に暮らすエビ・カニ類」と題した講演会が三十日午後、平良市総合博物館で開かれた。講師に招かれた琉球大学非常勤講師の藤田喜久さん(32)は、現在調査・研究しているミヤコサワガニやテナガエビ類などの生活史を説明した上で「これらの生き物は、環境が悪化すると絶滅につながる」と警鐘を鳴らし「地域主導型で環境保全に力を入れてほしい」と呼び掛けた。会場には市民多数が出席し、真剣に聞き入っていた。
 この講演会は、同博物館主催の特別企画展「宮古の湧水に暮らす甲殻類」の一環で開かれたもの。
 藤田さんは「宮古ではこれまで四十六カ所の湧水を調査。宮古島水道誌(一九六七年)には百三十以上の洞井や井戸が示されていることから、私が調査した場所はまだ少ない」と説明。これまでの調査結果で、七科十二属二十二種のエビ・カニ類の生息を確認した。宮古島は小さい島だが、洞窟地下水域にすむエビ類が特に多い。最近は水生生物に詳しい学者らから注目を浴びつつある」と語った。
 一部の洞窟のウリガー(降り井)の環境について、藤田さんは「タバコの吸い殻や紙くず、空き瓶などが捨てられ水質環境が心配。淡水水域と海を行き来する『通し回遊性生物』のテナガエビなどの流下・遡上に障害となる恐れるがある」と指摘した。
 また藤田さんは、宮古から発見されたテナガエビの仲間の新種「マクロブラキウム・ミヤコエンス」などについて触れ、「日本にはエビマニアがおり、エビを売買の目的で採取する。新種のエビの採取が懸念される」と語り、地域ぐるみの乱獲防止対策を促した。

 写真説明(上)・参加者らから積極的な意見・質問があった講演会=30日、平良市総合博物館

 写真説明(下)・藤田喜久さん


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