200平成16  1113曜日

政府、軍事利用可能/下地島空港で見解

照屋氏「屋良覚書反古」と反発

 【那覇支局】政府は12日の閣議で、下地島空港の民間航空以外の使用を認めないとする「屋良覚書」に関し、「公共の用に供する飛行場として適切に使用する必要があり、民間航空以外の利用が当然に許されないということではない」との答弁書を決定し、同空港の軍事利用は可能だとの見解を初めて示した。照屋寛徳衆院議員(社民)の質問主意書に答えた。これを受けて同日午後、県庁で記者会見した照屋氏は「下地島空港の軍事利用にお墨付きを与えるものであり、『同書』を反古(ほご)にするもの」と指摘。同空港について「『同書』を厳守し、軍事利用すべきでない」と強く訴えた。

 照屋氏は質問で、下地島空港使用問題に関し、▽本土復帰前の1971年に当時の琉球政府と日本政府が交わした「同書」が現在でも効力を有するか▽「同書」の2項目は、政府が沖縄県(旧琉球政府)に対し誠実に履行すべきものとの見解に変更はないか―と明確な答弁を求めた。
 これに対し、政府答弁は「同書」を取り交わした事実を認めた上で、「下地島空港の利用についての調整権限は、管理者の沖縄県が有している。ただし、同空港は、公共の用に供する飛行場として適切に使用する必要があり、パイロット訓練および民間航空以外の利用が当然に許されないということではない」との考えを示した。
 照屋氏は「『同書』についての政府の考えに驚いた。これは明確に同空港の軍事利用に道を開くもので、軍事利用にお墨付きを与えるもの。『同書』の2項目も反古にしてしまうもの」と指摘し、「週明けに国会に戻ったら、政府にこの答弁書をただしたい」と強い態度を示した。
 質問主意書で照屋氏はまた、▽米国政府が在日米軍再編に絡み、下地島空港を「協力的安全拠点」と位置づけ、米軍と自衛隊の補助的機能として活用する具体案を日本政府に提示した▽同空港は米軍普天間飛行場の代替施設完成までの暫定移転先として米側が提案した、との報道に関し、その事実の有無や暫定的使用の可能性についてもただした。
 これについて政府答弁は「(米軍再編の協議で)下地島を含め提案のやりとりはなく、個別の施設・区域についていかなる決定も行われていない」、「(代替施設完成までの暫定使用について)政府として可能性を検討したり、米国側から打診を受けた事実はない」としている。普天間飛行場移設問題は「(辺野古移設を決めた)沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)最終報告などに従い、今後も移設・返還に全力で取り組む」との考えを重ねて示した。

 【 屋良覚書 】 1971年8月に当時の琉球政府の屋良朝苗主席から丹羽喬四郎運輸大臣に出された下地島パイロット訓練飛行場に関する照会文書と、山中貞則総理府総務長官と丹羽運輸大臣連名の回答書の 2通の文書を指す。1項で、同飛行場は琉球政府(復帰後は沖縄県)が所有・管理し、使用方法は琉球政府が決定すること、2項で、運輸省は同空港を民間航空訓練および民間航空以外の目的に使用させることを琉球政府に命令する法令上の根拠を有しないこと、を合意している。

 写真説明・政府答弁に下地島空港の軍事利用を懸念し、記者会見する照屋氏=12日、県庁記者クラブ

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全宮古書道展が開幕/児童、生徒、一般の計1012点展示

 第23回全宮古書道展(主催・書心会、宮古毎日新聞社)が12日から3日間の日程で開幕した。会場の平良市中央公民館大ホールには児童生徒および一般の力作合わせて1012点が展示されている。来場者は各部門の「書」をゆっくりと鑑賞し「文化の秋」をそれぞれに満喫していた。書道展開催の時間は午前10時から午後6時(14日は午後5時)まで。23日にはホテルアトールエメラルド宮古島で表彰式が行われる。
 開幕セレモニーで書心会の天久宏会長は「今年の応募作品は昨年より118点増えており、レベルも向上している。書道展の期間中は書の面白さ、楽しさを鑑賞できると思う」と述べ、多くの来場に期待した。
 宮古市町村教育長会の久貝勝盛会長(平良市教育長)は「この書道展は回を重ねるごとに、その内容、質ともに向上しており、多くの方に感動と勇気を与えている」などと話し、書道展開幕を喜んだ。
 宮古市町村会の伊志嶺亮会長(平良市長)や書心会の天久会長、宮古毎日新聞社編集局の松原清吉顧問らがテープカットで開幕を告げると同展の関係者や一般の鑑賞者が次々と会場入りし、力作の数々に見入っていた。
 今回の書道展には初めて養護学校の生徒が応募したほか、特別企画展と銘打って平良市名誉市民の故山中貞則氏愛用の筆硯も展示。さらに書心会と交流がある韓国の釜山醉墨会会員の作品や石垣市書友会の作品も展示されている。
 応募作品中、児童・生徒の部は北中3年の平良静香さん、高校・一般の部は下里真智子さんが大賞に輝いている。

 写真説明・1012点を展示した全宮古書道展が開幕し初日から多くの鑑賞者が力作の数々に見入っていた=12日、平良市中央公民館

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合併「要請あれば検討」下地町議会行革特別委

 下地町議会の行財政改革に関する調査特別委員会(池間健榮委員長)の第5回会合が12日、同町役場で行われ、前日に行われた学識経験者など町民の代表らで組織する下地町行政改革推進委員会(与那覇真委員長)で、合併再考を求める方策を検討していることが報告された。これに対し合併反対議員の一部からは「要請があれば検討する必要はある」などとして、合併再考を視野に入れていく考えが示された。10日に下地町役場職員労働組合が要請した合併再考の取り扱いについては、今後検討していくこととなった。

 本来、同推進委員会は単独自治体での自立へ向けた行政改革について協議していく目的で設置されたが、現状は合併再考を求める意向を示している。同推進委員会の意向としては、町内の各団体が町議会へ合併再考を要請する動きを展開することで、議員の合併再考につながることを期待している。
 その方法としてまずは川満省三町長から町内の各団体に対し議会へ要請するよう働き掛けをし、その中で理解を示した団体が議会へ要請すれば合併再考につながると見込んでいる。この件については、来週開かれる定例課長会議の中で川満町長に報告される予定。
 合併に反対した池間健榮氏は「住民から要請があれば検討する必要はある」、仲里誠高氏は「要請があれば臨機応変に考える」などとコメントし、合併再考も視野に入れる考えを示した。
 この日開かれた同特別調査委員会では、総務課が示した財政シミュレーションに対し、議員から上がった質問に上地廣敏総務課長が説明を行った。
 村吉順栄氏は「歳出抑制だけで歳入確保の計画が見えない。5年先、10年先を見据えた場合、基金が底を突いてしまうことになる。観光収入も下地町としての一自治体ではさほど影響がない」など強い懸念を示した。上地総務課長は「今の段階で考えられる歳入確保のめどは全く立たない」として、財政運営が厳しい状態であることを強調した。

 写真説明・財政シミュレーションなどについて説明された行財政調査特別委員会=12日、下地町役場

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クイチャーで練り歩く/西原地区で「ミャークヅツ」

 伝統行事「ミャークヅツ(宮古節)」2日目(ナカビ)の12日、平良市池間島と同市西原、伊良部町佐良浜の三地区ではクライマックスを迎えた。このうち、西原地区では、クイチャー踊りが本格化。大勢の男女の踊り手らが息の合った力強いクイチャーを舞い、五穀豊穣(ほうじょう)や豊漁などを願った。
 この日の午後3時ごろ、西原地区では集落内をクイチャーで踊るパレードがスタート。頭にタオルを巻いた大勢の男性らが三味線演奏に合わせて、豪快なクイチャーを披露。「ヒヤサッサ」の掛け声が集落いっぱいに響いた。
 パレードの前にはツカサンマ(司母)と呼ばれる神女役の女性などが集まり、パレードに向かって富を招く踊りを繰り広げた。 
 次いで奉納相撲が展開され、土俵周辺の観客らを楽しませた。
 クイチャー奉納では、全員が踊りを披露し、西原地区のさらなる発展と子孫繁栄などを祈った。

 写真説明・息の合った力強いクイチャーを舞った参加者ら=12日、平良市西原

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奨学金貸付制度凍結へ/財政非常克服市民委で報告

 平良市教育委員会(久貝勝盛教育長)は11日までに、2005年度の奨学金貸付制度を凍結する方針を固めた。凍結は「財政が好転するまで」としている。担当課長が同日、財政非常事態克服実践本部市民委員会で報告した。委員らはおおむね了承し「合併後の新市に向けて対応を取る」ことで意見を集約した。同市の奨学金貸付制度の滞納総額は約600万円(10月現在)。
 11日の市民委員会では同制度の凍結について質疑が集中。中には「制度そのものに問題があるのではないか。誰にでも貸すような制度ではなく本当にお金に困っている市民、学業に優れた生徒もいるはず。そういう人たちを支援するためにも凍結はどうかと思う」とする委員もいた。別の委員は「『財政が好転するまで』凍結というが、その目安があいまい。凍結ではなく貸し付ける場合の基準をしっかりと決めればいい」などとする声もあった。ただ、財政非常事態を克服するためには同制度の凍結は「やむなし」と判断し、各委員の意見を付して本部会議に提言することで取りまとめた。
 同市の財政非常事態を克服するため同教委は同制度で発生した滞納額の徴収計画を策定。基本的対応として島内者へは九月に電話や個別訪問を行った。10月には奨学貸付金還付誓約書を提出させ、今月は保証人からの催告を促している。さらに来月は保証人への督促を行う方針だ。島外在住者に対しても同様の対応を取り還付を促す。
 このほか同委員会ではむらづくり課より、土地改良事業受益者負担金についての説明があり「経済的な理由が主で537人の農家が滞納しており、生活状態により分割払いに応じているケースが多い」との現状が報告された。

 写真説明・奨学金貸付制度などについて意見交換した市民委員会=11日、平良市役所

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棒踊りで勇ましく/来間島で「ヤーマスプナカ」

 下地町来間島で子孫繁栄と五穀豊穣(ほうじょう)を願う伝統行事「ヤーマスプナカ」は最終日の12日、「スムリャー」「ウプヤー」「ヤーマスヤー」の各ヤームトゥ(本家)ごとに踊りを披露しながら、集落内を練り歩いた。パレードの後は「雨乞い座」と呼ばれる広場に集まって舞い、向こう1年の豊作を祈願した。
 パレードは午後2時ごろにスタート。男性たちは各ヤームトゥごとに、着物やはっぴ姿に分かれ大きな掛け声で棒を打ち合いながら、勇ましく踊った。元気いっぱいの男たちも混じり、沿道に集まった住民には笑顔と歓声が広がった。女性たちもこの日に向けて練習した踊りで、パレードを盛り上げた。
 パレードに引き続き、住民らは「雨乞い座」という広場に集合。再び各ヤームトゥごとに舞った。島には住民だけでなく、平良市内や沖縄本島、八重山からも郷友が里帰りし、ふるさとの行事を満喫した。
 ヤームトゥを代表してスムリャーの長間盛史さんは「大先輩たちから引き継がれてきた行事であり、協力していただいた皆さんには大変感謝している」と話していた。
 【ヤーマスプナカ】、子孫繁栄と五穀豊穣など島の発展を願う行事で、「ヤー」は家、「マス」は増す、「プナカ」は各本家を意味する。その昔、来間島を救い、島を繁栄させた三兄弟の家がスムリャー(長男)、ウプヤー(二男)、ヤーマスヤー(三男)で、祭祀は先祖代々引き継がれてきた。

 写真説明・力強い棒踊りを見せるスムリャーの男性たち=12日、下地町来間島の「雨乞い座」

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