200平成16  11曜日

ブロードバンドサービス可能へ/海底光ケーブル敷設着工

 【那覇支局】NTT西日本(森下俊三社長)は5日午後、沖縄本島から宮古、八重山への海底光ファイバーケーブル(総延長約460キロメートル)の敷設工事着工式を那覇港ふ頭で行い、工事の安全と先島の振興を期待した。同ケーブルは、地元や県の要望を受けて同社が自費で総工費約21億円をかけて敷設する。工期は2005年3月までで、同4月から供用を開始する予定。光ケーブル敷設により宮古、八重山でのブロードバンドサービスが可能となる。

 式典は国や県、市町村関係者を100人以上招待して行われた。主催者あいさつで、森下社長は「宮古、八重山の地域振興で、光ファイバーの要望があり、県は国の支援を得て海底光ケーブル敷設促進に関する海上環境調査、IT需要・基礎調査を決定した。これを受けて、当社も積極的に取り組み今回の工事着工にこぎつけた。当社は単に通信を担当しているだけでなく、光ファイバーによって先島の今後の発展に協力していきたい」とし、地元の支援を求めた。
 来賓代表であいさつした稲嶺恵一知事は「宮古、八重山地区への光ケーブル敷設については地元の強い要望を受け、国、県、地元市町村、通信事業者で構成する研究会を設け、さまざまな角度から実現に向けて検討を進めてきた。その一環で県では昨年両地区のインターネット需要状況と光ケーブル敷設に係る海洋環境調査を実施した結果、海洋環境に配慮した最適な海洋敷設ルートを設定できた。この調査を踏まえ敷設するNTTに敬意を表する。支援してきた内閣府、総務省、総合通信事務所に感謝する」と述べ、光ケーブルによる先島振興への寄与を期待した。
 敷設船「すばる」の是枝幸一船長に花束が贈呈された後、森下社長、稲嶺知事、渡辺信一・総務省沖縄総合通信事務所長、和田智明・内閣府大臣官房審議官沖縄政策担当、日隈康行・NTT西日本沖縄支店長の5人でテープカットし、着工を飾った。
 現在、沖縄本島―宮古島間は旧方式の海底光ケーブルを使用し、また宮古―石垣島間は無線方式のため、ブロードバンド需要に対応できない状況。県は国の支援を得て、昨年12月補正で約3億2000万円の予算を計上、光ケーブル敷設のための基礎調査を実施。
 敷設する光海底ケーブルは沖縄本島―宮古島間が延長約340キロメートルで、新海底光方式(FSR=電力の供給を必要とする中継器を設置せずに約350キロメートルまで電送が可能な方式)を適用。また宮古島―石垣島間は延長約120キロメートルで、ADMリングシステム(電気信号の多重・分離機能を有し、約120キロメートルまで伝送可能な方式)を採用する。
 【ブロードバンド】 広帯域・高速通信の普及で実現できる次世代コンピューターネットワーク。

 写真説明(上)・着工を記念してテープカットする森下社長(左から2人目)、稲嶺知事(中央)ら=5日、那覇港ふ頭
 写真説明(下)・海底光ケーブル敷設着工式に国、県、市町村の関係者大勢が参列した=5日、那覇港ふ頭

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県、漁業補償4000万円提示/伊良部架橋交渉委員会

 来年度着工予定の伊良部架橋整備事業で漁業権の一部が抹消されることを受け、「第 2回伊良部架橋漁業補償交渉委員会」(主催・県宮古支庁)が5日午後、平良港ターミナルで開かれた。県が初めて漁業補償総額4020万円を提示した。この総額には、同架橋工事中に発生が想定される五百~以内の汚濁汚染による影響補償も含まれている。委員の中からは「補償総額が少ないので納得できない。算定書を提示してほしい」「汚濁影響の範囲が 「500メートルでは狭い」などの意見が相次いだ。委員らが補償総額などに不満の姿勢を見せていることから、県と同委員会が合意に至るまでには紆余曲折が予想される。
 開会式で、安和朝忠県宮古支庁長は「伊良部架橋は、いよいよ来年度からの着工で動き出した。今は漁業補償が優先すべき課題。一日も早く夢の大橋の実現に向けご協力をお願いしたい」と協力を求めた。浜川健伊良部町長は「漁業補償については、お互いが納得して合意するように」、下地学平良市助役は「漁民への漁業補償は大事なこと。真摯(しんし)に話し合って解決してほしい」とそれぞれ期待を寄せた。
 県は、漁業補償総額について「国が過去に閣議決定した『公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱』と『沖縄県の公共事業の施行に伴う損失補償基準』に基づいて算定した」と説明し理解を求めた。
 これに対し委員の1人は「伊良部架橋付け根部分と海中道路などを含めた漁業権の一部抹消面積は3万9000平方メートル。1平方メートルあたりの算定額を提示したほしい」と質問。県は「算定書は公表できない」と答えた。
 また県は「補償総額とは別個に久松地区の養殖モズクについては補償する」と述べた。これに対し、別の委員は「汚濁汚染は大浦湾内まで予想される。大浦湾内の養殖モズクは補償できないものか」と意見を述べた。
 県は「今のところ汚濁の影響補償は久松地区の養殖モズクしか考えていない」と話した。
 委員の1人で奥原隆治伊良部町漁業協同組合長は「県は、架橋が架かる海域から誰それがいくらの水揚げをしたかという実績を示すべき。伊良部漁協は実績を示した上で、県と直接交渉したい」と述べた。

 写真説明・委員の中からは漁業補償総額が少ないとの意見が相次いだ=5日、平良港ターミナル2階研修室

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お話大会など多彩に/伊良部町教育文化祭が開幕

 2004年度伊良部町教育文化祭(主催・同祭実行委員会)が5日、3日間の日程で開幕した。この日は児童・生徒らによるお話・意見発表大会が同町中央公民館で実施され、20人が熱弁を振るった。審査の結果、小学校低学年の部では謝花綾伽さん(伊良部小 3年)が最優秀賞に輝いた。きょう6日には生涯学習フェスティバルが同公民館で開催される。
 開会式で宮国弘一実行委員長は「教育は私たちの人生に広がりと生きがいを与える。今後の教育文化の発展を願う」とあいさつした。
 また、浜川健町長(代読・川満一助役)は祝辞で「これからも郷土文化の継承、芸術文化の発展に努力し、人々が温かい心の触れ合いを通して豊かな人間性を持てるよう文化意識を高めたい」と述べた
 お話・意見発表大会では、児童らがやや緊張した表情を見せながらも、堂々と発表。身ぶり手ぶりを加えて、ダイナミックに表現した。発表が終わると、会場に駆け付けた父母らからは温かい拍手が送られた。
 会場には絵画、書道、工作、盆栽などの優秀作品がずらりと並び、来場者らが足を止めてじっくりと見入っていた。
 きょう同公民館で開催される生涯学習フェスティバルでは、午前10時から町子ども会のバザー、特産品即売会、黒糖・豆腐作り体験などが実施される。午後1時からは舞台発表も行われ、新風太鼓、空手演舞などのほか、午後2時からは落語家のおきらく亭はち好さんの独演会が開かれる。関係者は多くの来場を呼び掛けている。

 写真説明・児童らは身ぶり手ぶりを交え熱弁を振るった=5日、伊良部町中央公民館

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環境未来税 」を提案/環境と雇用を考える会

 市町村合併後の宮古の地域振興のあり方について調査、検討を行う私的ワーキンググループ「環境と雇用を考える会」(座長・下地敏彦城辺町助役)はこのほど、法定外目的税の創設を求める報告書を宮古地区自治研究会に提出した。税の名称は「環境未来税」。課税対象は水道使用者と定め、年間30万人を超える観光客をはじめ宮古島に生活している住民も対象となる。徴収は水道料金に課税するシステムを提案し、徴収して生まれた財源は新たに設立する特別目的会社が保全、収益、集客の各事業で活用する。 4日午後に会見した同会の下地座長は「自治研の意見として市町村会などに提案してほしい」などと述べ、合併後の新市における条例化に期待した。

 環境と雇用を考える会は今年6月に発足。各市町村の係長級の職員や民間会社代表、コンサルタントの職員で構成し、同会は過去12回の会合で法定外目的税について調査、検討してきた。同税導入の目的には宮古島の自然環境の保全と観光振興、さらには特別会社設立による雇用の創出を据えている。
 4日会見した同会の下地座長は「国の三位一体改革が進む中、今の財源でこれまで通りの事業を継続していくことは不可能」と指摘。「そんな中、新たな財源を確保これまでの事業を継続しながら行政にはできない『すき間の事業』を展開することができる」と話した。
 税の徴収は負担者の理解が得られやすく、かつ集金システムが確立されているという理由から水道料金に付加する方式を提案している。課税は住民だけでなく水道の使用者すべてが対象となるため、これには各事業所・営業所や観光客も含まれている。一般住民や事業所などは水道料金に付加して納税するが、観光客はホテル宿泊料などと合わせて支払うため、ホテル側が納税を代行する。この場合、ホテル側に徴収分の一部が納税代行分として落ちる仕組みだ。レストランなど営業所もホテルなどと同様の徴収方法を取る。
 あらゆる方面から徴収した目的税は宮古島の水道を管理する宮古島上水道企業団が一括して納付するという仕組みだ。
 これらの方法で収められた目的税は特別目的会社による各事業で活用される。海浜や海岸を清掃する専門の団体を設立することや、各海岸に環境保全監視員(ビーチレンジャー)を配置することなどを提案。そのために必要な原資はすべて目的税で対応する。ほかにも観光振興策として現在地、目的地の方角を容易にするための観光サイン整備など観光客に対するサービスの充実を図り、圏域全体の活性化につなげる。各事業における財源の使途は情報サイトを活用して完全に公開し、納税者に「目的税がどこで、どのように使われているのか」を明確にして理解を求める方針。
 【法定外目的税】 地方自治体が地方税法に定められていない税目を条例で定めて設ける税。2000年4月施行の地方分権一括法による地方税法改正で創設され、特定の使用目的や事業の経費とするために各地方自治体独自で設けることができる。現在、全国で15の自治体が導入しているが、沖縄県内では導入されていない。全国の例として東京都が実施している1泊1万円以上の宿泊料に課税する宿泊税や山梨県河口湖町が釣り客から徴収する遊魚税などがある。

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ツマサンマ2人でユークイ/池間島、後継者なく

 伝統祭祀(さいし)「ユークイ(富をこう)」 が5日、平良市池間島で行われた。ユークインマ(母)と呼ばれるなり手が一人もいないことから、神女役を務めるツカサンマ(司母)2人が、旧年中の豊漁と豊作に感謝し、向こう1年間の大漁や五穀豊穣(ほうじょう)を祈った。
 ツカサンマは、60代の仲間サヨ子さんと嵩原シズさんの2人。2人とも昨年10月で4年間の任期を満了した。しかしツカサンマの後継者がいないことから、引き続き大役を担った。
 この日の午前、2人は、ナナムイと呼ばれる聖地から草冠をかぶって現れた。島内の各地の聖地を巡り、大漁などを招く儀式を執り行った。
 2人の後ろからは、2人の体調を気遣う住民らが数台の車に乗って続く。
2人は島の中央にある井戸の前で祈りを捧げた後、昼食を取った。昼食後、寄り集まった女性数人が2人と一緒に踊って盛り上げた。女性らは2人の伝統継承に激励の言葉と大きな拍手を送りたたえた。
 【ユークイ】 富貴、豊漁、豊作を招き寄せる神事・儀式。ユークイの始まり年代は不明。今年、池間島の分村である伊良部町佐良浜地区と平良市西原地区でのユークイは既に終了。同島のユークイは担い手がいないことから、以前と比べて衰退化している。

 写真説明・ユークインマのなり手がいないため、2人だけで聖地を巡って祈った=5日、平良市池間島

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