行雲流水

 イラク戦争が始まって四年が経過した。その間、度重なる爆撃でイラクの国土は破壊され、庶民の生命は脅かされ、憎しみあいは増幅されて事実上内戦状態にあると言われる。民間人の死者は数万人とも十万人を超えるともいわれている。死傷者や住む家を失った人々の悲惨さを思うと胸が痛む▼この戦争は、もともと侵略に対して国土を防衛するという性質のものではなかったし、当然国連の了解も得られなかった。テロに対する先制攻撃論による開戦であった。しかし、イラクがテロと関係のないことはいち早く分かったし、大量破壊兵器のないことも明らかになった。次に「大義」とされた「民主化」も、内戦的混乱をもたらしているのが現実である▼何故、米国はこのような不条理な戦争に手を染めるのだろうか。NHKはイラク開戦から四年に当たり、世界のドキュメンタリー番組から関係数本を放映した。その中に、「我々はなぜ闘うのか」というアメリカで制作され、サンダンス映画祭で最優秀賞を受賞した作品がある▼前編のサブタイトルは「巨大化する軍産複合体」である。一九六一年、アイゼンハワー大統領は離任演説で、拡大する「軍産複合体」に警告を発した。しかし、軍産複合は進み、その暴走は歯止めのきかない構造的なものになっていることが明らかにされる▼後編のサブタイトルは「超大国への警告」である。軍産複合に加えて保守的なシンクタンクの主導でイラク政策が決められ、真実を知らされない国民を戦争に向かわせている実態が告発される▼私たちが強いられる苦悩と無関係なことではあるまい。

(2007/03/28掲載)

<<<行雲流水ページにもどる