行雲流水

 今日、三月二十一日は春分の日である。この日、地球上何処でも太陽は真東から出て、真西に沈み、昼の長さと夜の長さがほぼ同じになる。暦法のうえでは立春から立夏の前日までが春になるが、気象学上では、三月、四月、五月を春季と定めている。春の語源は万物が発生する「発(は)る」、「張(は)る」で、草木が芽吹き、膨らむ様子を表している▼沖縄では二月下旬の「雨水」のころから、四月中旬ごろまでを「うりずん」という美しい言葉で呼ぶ。「うりずん」は潤うの意の「うり」と、浸みとおる意の「ずん」とが複合して出来た季語である。いずれにしても、こちらはすでに「うりずん」で、新緑のまぶしい季節を迎えており、白や黄色、ピンクの花々が咲き乱れている。鶯は地鳴きの時季をすぎて、美しい声で囀っている▼ところで、鶯の雛を親鳥から引き離して育てると、地鳴きはできても、翌年の春、成鳥になって異性を呼んだり、縄張りを宣言するホーホケキョと囀ることが出来なくなるという▼また、染色家の話では、草木のみどりは、抽出、染料として取り出すことは出来ないという。結局、みどりは、他の色の混合によって生体内で多様に、生み出されている▼種の保存のためにも、親の養育は不可欠である。それにしても、自然は鶯にあんなきれいな囀りをさせる。また、「みどり」のように自然は生物の多様性を広げる▼地球は温かい大気に包まれていて生物の生存に適している。また、地球の自転軸が公転面と垂直でなく、傾いているため、四季がめぐる。「春分の日」、あらためて、自然をたたえ、生物をいつくしみたい。

(2007/03/21掲載)

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