行雲流水

 春、三月である。一日には県立高等学校の卒業式が挙行され、卒業生たちは多感な高校時代を過ごした学び舎を後に、新しい世界への旅を始めた。彼らは、身につけてきた意思や体力、知性や感性にさらに磨きをかけて、自己を発見、他者を発見して連帯、将来社会のよき構成員となる。近未来を担う彼らに対する社会の期待は大きい。「旅立ちの朝」に祝意を込めて、はなむけとしたい▼「旅立ちの朝」。春の光に萌え出る若葉/さえずる小鳥/東の空高くたなびく紫の綾雲/旅立ちの朝は/若い生命の栄光のしるしに満ちている▼そよ風に揺れる黒髪/泥まみれの額に光る汗/響きあう鼓動/美しきもの/高きものへの憧れがあり/友との語らいの喜びがあった。悲哀や葛藤/渦巻く濁流さえもすでに/泉より湧き出るせせらぎに似て/清冽だ▼今、澄んだ瞳に映るのはみどりの地球/樹々はしなやかに枝を広げて/大空に高く高く伸びていく/すべての花がそれぞれに満開する/白雲が流れ/鳥は旅を続ける/そして/君こそは地球の果実▼いつか、親しかった友の顔を思い浮かべるとき/仲間と手をとり合って平和の歌をうたうとき/どこかの街や村で一隅を照らすとき/選択し決断し、生きるとき/孤独に涙するときにも/君は人間の尊厳を生きる▼いざ/今は旅立ちのとき/静かな微笑に秘められた不屈の決意/いざなう未来/この胸の高鳴りは豊穣の予感/大地を踏んで拓く行く手には/陽光がさんさんと降りそそぐのだ。旅立ちの朝は/若い生命の栄光の啓示に満ちて/輝く。

(2007/03/07掲載)

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