行雲流水

 月刊誌「すばる」は特集として、―復帰三十五年オキナワの「心熱」―を掲載している。しんねつ「心熱」とは、情熱、または、体内の熱。ときに「焦燥感」にも姿を変える。「復帰」三十五年となる二〇〇七年の年頭、特集で沖縄の心熱を探る、というものである▼対談や多くの論考は、沖縄県民の多くが抱く「焦燥感」の因ってくるところを深く掘り下げている。また、そのなかでの「沖縄文学」の可能性を追求している▼現在、座間味島・渡嘉敷島での「集団自決」は、日本軍の隊長命令によるもの―この指摘を虚偽として当時の戦隊長らが『沖縄ノート』の著者・大江健三郎氏と発行者である岩波書店を訴えている。時代を感じさせるできごとである。集団自決という極限の悲惨な事実を「誰が命令したか」ということで矮小化してはなるまい▼「オバア」コールの後ろ側と題して山城紀子氏は次のように論ずる。「オバア」というのが近年の沖縄のお年寄り像である。明るく、たくましく、おおらかな高齢者のイメージである。また、誰もが心優しく、高齢者を大切にし、隣近所や地域の人たちに慕われて幸せな日々を送っているかのようである▼しかし、沖縄のお年寄りを取り巻く状況は厳しい。実態と異なるイメージや押し付けの「豊かさ」に落し込められることなく、沖縄の「老い」を取り巻く深刻な実態に向き合うことの重要性を氏は指摘する▼生活環境や共同体の破壊、文化の商品化、グローバリゼーションにのみ込まれる都市空間などの問題に対しても同じで、現実を直視することが強く求められる。

(2007/01/31掲載)

<<<行雲流水ページにもどる