行雲流水

 近年、正月のお節料理も手作りではなく、スーパーでオーダーしたものが多く、どの家庭でも均一化していてその家庭の特色があまり感じられない。オードブルは見栄えはいいのだが、加齢が進むとカロリーが気になり気軽には手が出せない▼それよりも脇役として妻の手による昆布と大根と人参、そしてコンニャクの煮物はシンプルであっさりして逸品だ。特に昆布は味がしっかり染み込んでいて旨い。なにより健康によい▼沖縄では海藻類の消費は全国平均より約二倍近くも多い。豚肉、昆布、コンニャクなどの炒め、煮る料理など、昆布料理は実に豊富だ。これほど需要の高い昆布は沖縄にいつ頃、どのように関わりを持つようになったのだろうか▼その昔、北海道から沖縄を結ぶ「昆布ロード」があって、三百年前から沖縄では昆布を食べていた。江戸時代、昆布は貴重な交易品で、北前船により北海道から海路・日本海を南下し大阪に運ばれ、さらに南下、薩摩藩によって琉球王国(沖縄)を中継地点として、清(中国)に売られていた。中国では昆布は薬として珍重されていた。薩摩藩は昆布を中国に輸出するかわりに、ジャコウなどの漢方薬を輸入▼当時、日本から中国への輸出量全体の八割までを昆布が占めていた。そのお陰で藩の財政は潤い、その資金力を背景にして倒幕・明治維新へとつながった。つまり、近代日本への道は昆布が切り開いた。…(『ヘルストリビューン』平成十六年三月号)というものだ▼なんとも雄大なロマン溢れる歴史のエピソードではないか。

(2007/01/19掲載)

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