行雲流水

 本島旧石川市に住む友から届いた年賀状の現住所は「うるま市石川」だった。二市二町が合併して「うるま市」となったが住民は古来慣れ親しんできた市町名は捨てがたかったようで新市になっても旧市町名はそのまま残された▼平成の大合併と称された市町村合併によって沖縄県内では十七の市町村が消滅。市部では石川市・具志川市が消え「うるま市」が生まれた。平良市は「宮古島市」に。町村部では七町七村が消滅し新たに「南城市」「久米町」「八重瀬町」が誕生した▼友が住むうるま市と同様に合併「宮古島市」でも旧市町村の地名は生かされた。地名の成り立ちは地形や自然現象や記念すべき出来事さらにはゆかりの人名・産物などその地固有の事象によるものが多いと言う▼地名が言語学上「固有名詞」として扱われているのはそれゆえである。名は体を表しているのである。宮古島市にあっても旧五市町村の住民は目前の住み慣れた地の固有名称や事象の下で意識の共有化をはかり結束を深めてきたはず▼先日メディアが報じた新成人の何名かは質素でもいい成人式は生まれ育った町村で顔見知りの地域住民が見守る中行ってほしかったと寂しがっていた。この心情、行政の諸氏は軽々に受けとめてはならないと実感した▼これら心情の増幅は旧町村住民が合併当初から言わず語らず最も懸念していた地域疲弊にもろに直結しうる要因をはらんでいるからである。市の財政健全化は火急の要件であるが人心の後退を防ぐ知恵の捻出も緊急事である。

(2007/01/12掲載)

<<<行雲流水ページにもどる