行雲流水

 未来、夢、希望、息吹、鼓動、飛翔、目標、挑戦、展望、抱負、躍進、期待、活力―などの言葉が舞っていた。とにもかくにも「新年はおめでたい」▼一方で「神よ、これが天罰か」―言葉が通じない。心も伝わらない。思いはどこにも届かない。かつて、神が怒りに触れ、言語を分かたれた人間たち。我々バベルの末裔は、永遠に分かり合うことは出来ないのか。映画「バベル」の広告文の中の言葉である。怒りに触れたのは「放漫さ」であり、バベルはヘブライ語で「混乱」を意味する。映画の中の世界だけではあるまい▼人は天国と地獄の間にぶら下がり揺られていて、ブランコの居心地を何よりも大事なことに思う。青い空には白い雲が浮かび、地上では花々が咲き乱れる。子どもたちが駆けている▼「冷蔵庫とびらを開けて引き返し」と詠まれる姿の高齢者たちの風景も微笑ましい。「新年に、誓いを破って悔いぬことを誓う。よってくだんのごとし」と、うそぶく詩人もいる。現実の社会生活で煩悩から自由になることは困難なことではあるが、除夜の鐘を聴いて、一時清浄な気持ちにもなる▼何よりも地球に水があって、温かい大気に包まれていることが有難い。その大気が音を伝える。音源の振動は周囲に伝わるが、振動を受けた各点が新たな波源となってさらに周囲に伝わる。その繰り返しの結果音波は同心円状に広がっていく(ホイヘンスの原理)▼きれいな歌声を伝える音波のように、良きこと、より美しいことが広がって欲しい。

(2007/01/10掲載)

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